中学へ上がり、シービーとの約束の為に俺はトレーナー試験合格へ向けて勉強に励んだ。
実はトレーナー試験を受ける条件はそこまで厳しくなく、なんだったら小学生すら受験が出来てしまう。
理由は、稀にメジロ家や有名な家系から出現する天才児達のための制度のゆるさらしい。
しかし内容は難関。
父さん曰く勿論レースに必要な知識やそれらに必要な豊富な技能は当然必要なのだが、IQがどうとかそう言う話ではないらしく。
ウマ娘がレース場を移動したり日々の練習に同行出来るだけの体力面(担当ウマ娘の無茶振りやわがままを耐えられるだけの気力や体の頑強差等)、やウマ娘の気分などのコンディション維持の理解度(年頃の女の子の気持ちを汲んであげられるか)など主に見ているらしい。
裏話を聞くと求められる優先順位は、
1体力や気力
2ウマ娘への理解度
3練習に必要な知識や応用力
4レース関係の必要知識
この様な感じらしい。
ウマ娘と比べると、ヒトミミは生まれつき体が弱く状態なのでちょっとした事で怪我をしてしまう。
それにトレーナーになるならばら相手はウマ娘の中でも選りすぐりのアスリート。
当然基礎的なパワーも一般と比べると比較にならず笑い事では済まされない大惨事に繋がる可能性もある。
それらに耐えられるだけの素質があるかを前提として篩に掛けるそうだ。
なので1と2については両親とシービーからのお墨付きを受けているので問題ない俺はただひたすら3と4の知識面を重点的に教わった。
中学の同級生や先生から励ましの声を日々もらい受験勉強に励む日々。
たまに家に来る従姉妹の姉妹に、
「貴様は何も分かっておらん。」
「前よりも良くなったと思いますよ。」
とお叱りと励ましに挟まれたエールを貰いながらも努力を続けた。
試験日前日、
なんと学校のほぼ全員が俺のことを見送ってくれた。
そもそもトレーナー試験を受けられる条件はともかく、受けられるかどうかの書類選考を通ったこと自体が凄いらしいのでここまで大々的に盛り上がっているのだ。
仲の良い奴等からは困った時はこれを使えと、各面に数字の書いた鉛筆を貰ったり、某ノートの漫画に出てくる中にメモ帳を仕込める時計なども貰ったりした。
当然それらは持っていって使えるはずもなく家に置いておくのだがそれでも心の支えになる。
家に帰える頃、
シービーからメッセージが届いていた。
「試験、ファイ」
二言だけしか無かったがあいつらしい。
少し緊張していたがお陰で心が軽くなった気がした。
そして当日、
現地に到着した俺は両親と従姉妹に見送られ
この学園の門とは俺の中学校の話ではない。
なんと、トレセン学園の方の門だった。
1週間程前、試験会場を予定していた施設が台風の影響で少し損傷したらしく、急遽トレセン学園の敷地を借りて試験をする事になったそうだ。
試験は学園の敷地に泊まりながら行われその内容は、
1日目と2日目に筆記試験から始まり面接、実際に学園に通うウマ娘の練習風景や模擬レースを見ながら自分ならどうアドバイスをするかなどのレポートを書き提出する。
3〜4日目辺りから様子が変わって、トレセン学園が保有する無人島に向かいそこでサポートを受けながらウマ娘と似た様なトレーニングをする。
以上4日間を持ってトレーナー試験らしい。
学園に入り集合場所に受験者がそれぞれ集まっていると1人の女性が現れた。
「皆さん初めまして。私は今日から4日間、皆さんの試験を案内させていただきます、たづなと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
たづなさんは俺たちに深々と頭を下げ、流れる様な段取りで試験を行う建物へ案内を始めた。
トレセン学園の敷地は広大で、会場は学園の案内を含めて40分程歩かなければ行けないらしく、他の受験者達はこの地点から篩に掛け始めているのでは?と小声で疑い始めていた。
そんな中俺はトレーニング施設や練習用コースなど始めて見る学園のすべての施設に目を輝かせていた。
「おーーーい‼︎」
案内されているうちに、背後の彼方から声が聞こえたので振り返ると。
数ヶ月ぶりに会う親友が何人かのウマ娘を連れて遠くからこちらに走って来ていたのだ。
「久しぶりだね遥。変わらず元気そうじゃん。」
「シービーこそ久しぶり。そっちも相変わらず自由にやってるみたいだな。」
俺がそう言ったのも無理はない。
なぜなら今は時間的に授業中なはずだからだ。
すると受験生をかき分けこちらに近づいていたたづなさんが声をかけて来た。
「シービーさん。それにエースさんにルドルフさんまで。今は授業の時間の筈では?」
それにシービーが何か言おうとした途端、1人の少女が割り込んで話し始めた。
「申し訳ありませんたづなさん。 ですが先生は勿論、理事長からの許可も得ています。 我々はこの少年に用があって来ました。」
「そうだ!シービーに見せてもらったあのレース痺れたぜ! 練習コースの許可も貰ったしさ、あたし等と1回走らねえか?」
突然の勝負のお誘い。
流石の俺もどうしていいか分からずたづなさんに助けを求めたがあちらも同じく少し頭を抱えて困っていた。
他の年長の受験生に聞くと、なんでもトレセン学園において理事長は絶対的な権力を持っているそうで彼女が、許可‼︎と言ったらなんでもOKらしく経営の方を少し心配してしまった。
「大丈夫よたづなさん。 それに練習用コースの使用風景を見て貰うのにも丁度いいんじゃない?」
シービー達に遅れてもう2人のウマ娘もやって来てしまった。
「私達はウマ娘。 一度走りたいと思ってしまえば、この気持ちは誰にも止められない。 それはたづなさんは勿論受験者の皆さんだってお分かりでしょう?」
「マルゼンさんにラモーヌさんまで。 ・・・分かりました。 皆さん、これから練習用コースに参りますので付いて来てください。」
たづなさんはため息を吐きながら俺たちをその練習用コースへと案内してくれた。
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「やっと遥と走れる。今日は本当に良い日だな。」
「いつもどこか元気なかったもんな。」
「確かに、こんなに調子の良いシービーは初めて見たよ。そしてそんなシービーと走れるのも我々は初めてだ。」
コースに到着すると早速彼女達はウォーミングアップを始め出した。
どうやら本気で走るつもりらしい。
それらを見た他の受験者達は興奮気味で今か今かとレースの開始をゴール前の柵で待機している。
「たづなさん。俺の荷物をお願い出来ませんか? 売られた以上この勝負全力でやります。」
「分かりました。 実は私もシービーさんと遥さんのあの勝負の映像を見てからずっと気になっていました。 この様な形で実現してしまったのは正直不服ではありますが。」
同情しますたづなさん。
俺もシービーに度々困らされていたのでその気持ち凄く分かります。
ここって中高一貫校でしょ?
今からそんなだと短くても6年持ちませんよ?
たづなさんとの話と自分自身のウォーミングアップも終わり俺はスタートラインに向かった。
すると受験生の集団からふと声が聞こえた。
「ヒトミミとウマ娘が競い合っても勝負にならないのに本気なのか?」と
今俺も同じ気持ちだよなんなら誰が言ったか分からないけど君と握手したいぐらいに共感してます。
結局あの時も俺はシービー勝てなかった。
そしてここはトレセン学園。
全国から選りすぐりの競争者が集まる場所。
ここにいる、ルドルフ、エース、マルゼン、ラモーヌ。
この4人はシービーと一緒に期待の新星としてニュースや新聞の記事に大々的に報道されていたウマ娘達だ。
そんな彼女達にただの一般中学生が混ざって勝負になるとでも?
冗談よしてくださいよ。
まあ全力で走るつもりではあるんだけどね。
「遥君、君はいつもどのポジションで走っているんだい?」
「ぽじしょん?」
急にルドルフさんに声をかけられ答えが上手くまとまらなかった。
ポジションと言うと脚質に応じたレース中の位置取りの事だろう。
俺は少し考えてから答えようとすると、
「遥は私と同じ追込で後方だよ。」
シービーに先に答えられてしまった。
この後面接があるのにちょっと不安になるからやめてねキミ。
「ふふ、分かった。念の為安全を考慮して今回は先に我々の作戦を伝えておくよ。マルゼンとエースは逃げ、私は先行、ラモーヌは先行と差しの間ぐらいだ。シービーに関しては・・・言う必要はない様だね。」
そだね。
こいつ自分で言ったし。
唯一俺の安全を考えてくれているルドルフさんが眩しく見える。
生徒会とか似合いそうだ。
そして今回のスタートはたづなさんが取ってくれることになり。
「皆さん用意は良いですか?私が手を叩いたらスタートです。」
6人がスタートラインに揃った。
内容は芝1800m右回り
距離は4人の得意距離と俺が走れる限界ギリギリをそれぞれ加味した上での設定。
内枠から
ラモーヌ
ルドルフ
シービー
マルゼン
エース
俺
4人はじゃんけんで順番を決め、俺はスタートに巻き込まれないよう少々不利ではあるが外枠になった。
そもそも勝負になるはずもないので不利も何もないが。
「遥さんよ。」
構えをとろうとした矢先、隣のエースさんが声をかけて来た。
「お前さん、映像で見たより背高えな。」
「そりゃ中学生だし成長期だよ。」
確かに中学入りした後、現在に至るまでの3ヶ月。
俺の身長は約10cm伸びておりもう少しで悲願の170に到達する。
幼少期に鍛えすぎると身長が伸びないと聞いた事があったので心配したが、そんな事は梅雨知らずの勢いで急に伸び先月は膝が痛くてかなりまいった。
「位置について。」
俺は心を切り替えて。
「よーい。」
意識を集中し。
パンッ
全力で大地を蹴り出した。
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若本 遥
主人公の少年。 幼稚園の頃から走る事が趣味。ウマ娘世界の約1000万人に1人の確率で確認されているとても稀な体質の持ち主。 尻尾或いはウマ耳だけがある女性やそれ等がないウマ娘、通常より力の強い男性などいくつか確認されているが、遥はその中でも珍しく身体能力がウマ娘と同等。
趣味と相まって毎日走り続けていた。
ミスターシービー
隣に住んでた未来の三冠バ。遥の両親とシービーの両親は昔ライバルだったらしく今でも交流が深い。幼稚園の頃から走る事が趣味。実はその頃から遥とは面識があった筈だが2人とも走ることに夢中で覚えていない。当然2人が揃えば走る事しかしないので流石に危機感を持ったお互いの両親が別々の小学校へ入学させることを決めその後現在に至る。