朝5:00
いつも通りアラームが鳴る寸前で目が覚める。
本当は7時起床なのだが日課のジョギングがしたかったので1人この時間に起きたのだ。
昨日の別れ際、テンポイントさんに聞いてみると二つ返事で了承をもらい、ついでに学園の地図で細かくコースを指示までしてくれた。
朝早い学生もいるから不審者と間違われない様に、
生徒会支給の腕章だけは付けて走ってくれとも言われたのでそれを左腕に留め俺は建物を出た。
やはり何人か学園のウマ娘がいたので軽く挨拶をして後ろからすれ違った。
2回目のすれ違い様、皆驚いた声をあげるから若干楽しくなってしまい、
3回目すれ違う頃には俺に気づいた途端思い切り走り始めるのでこちらも負けじと真横をぶち抜いてあげた。
そんな事をしていると腕時計のアラームが鳴り始めそのまま自室へ着替えに向かう事にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「受験者の皆様おはようございます。 我が学園自慢の食堂は満足していただけましたか?」
スタッフに案内され俺たち受験者一同は学園の食堂で朝食を食べに行った。
食券式で皆メニューの豊富さに感激したがそれも束の間、
大半の者はすぐに後悔をした。
それは食事の量。
元々ウマ娘専用の食堂な事もあり通常メニューの量が常人の特盛レベルで出て来るらしい。
2回目の受験者などはその反省を踏まえ、
教職員やトレーナー用のメニューを選択するが、
それを知らない新規の人達は当然普通のメニューのボタンを押してしまう。
料理人の人達も仕事もあるが2000人近いウマやヒトの事を細かく考えている余裕もないのが重なり盛りに盛られた量のご飯が提供される。
お残しは厳禁。
従って皆意地でも詰め込むしかなくそれ故にたづなさんと合流する頃には8割が朝からグロッキー状態で迎える事になった。
「皆様、これから昨日立ち寄った練習用コースのエリアに向かいます。 早速そちらに向かいましょう。」
歩き始めると俺を含めた何ともない組はたづなさんについて来れていたが、
後続の大多数が落伍してしまいスタッフに別の場所へ運ばれる人すらいた。
そうこうしていると昨日の練習用コースがあるエリアに到着。
改めてたづなさんから今日の試験の内容を説明された。
試験内容は、
現在練習をしている中等部1年生の練習風景を見て、
どの子でも良いので選んだその子が満足するアドバイスをする。
或いはその子宛に改善点などをレポートを後日見てもらい評価を受ける。
1人でも良の判子を貰えれば試験合格。
聞いた感じで言えば別に簡単そうなものだった。
しかし俺以外のここに残った受験者達は皆険しい顔を浮かべていた。
不思議に思ったので昨日会話をした年長の人に聞いてみると、
話はどうやらそう単純なものでは無いらしく。
ここにいるのはたづなさんが言った通り中等部1年生。
つまりデビューは愚か担当すらついていない、
そして極め付けはそもそも身体が出来上がっていない。
まだ本格化の兆候すらない彼女達は自分がどう走れば良いのかなど分からない。
それが既に分かっているのは昨日出会った一部のウマ娘のみらしく、
それ以外の彼女達が納得する答えなど知識がある、その程度の我々では導き出すのは至難、とのこと。
その人は別れ際、
誰でも良いから1人だけをよく観察して癖を探す事から始めた方が良いよとアドバイスを言い残し遠くの方へ歩いて行った。
先輩からありがたいアドバイスも貰え気合を入れていた矢先、
たづなさんに声を掛けられた。
なんでも俺はこことは違う場所で1人試験をするらしく場所を移動するとのこと。
俺は特に深く考えることもなく、たづなさんの後をついて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おはよっ、また会ったね。」
最悪だ。
「よろしく頼むぜ!トレーナー!」
最悪過ぎる。
「オッハー♪」
「よろしく」
「遥さん、あなたにはここにいる6人全員を見て貰います。 通常なら1人ですが今回は特例なので、3人からの判子を貰う事が合格条件です。因みに判子は今日中の夕方5時までに。」
詰んだぁぁぁぁあああ。
シービーを除いて他2人からも判子を貰わなければならない。
「あっ、アタシ判子ないから。」
いやお前何しに来たんだよ向こう行けよぉぉぉお。
てことは残り5人から3つも判子を貰わなきゃいけないの俺?
「何やってんだ。こっちはあまり暇じゃないんだがなぁ?」
軽く絶望していると不機嫌そうなシリウスが詰め寄って来た。
「お前に見てもらわなくても私達は学園のトレーナー達に頼めば良いだけの話なんだ。 わざわざ時間作ってこうして集まってんだから足以外で有能な所を少しは見せてみろ。」
あからさまな挑発、
だけども今の心境だとありがたい。
良い起爆剤になった。
「分かった見てやるよ。 取り敢えず皆んな、5ハロンを順番に2回走ってくれ。その後考える。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁぁぁぁあああ!!」
「シリウスそのまま!」
シリウスが2回目の5ハロンダッシュを終えた。
タイムは・・・まずまずと言ったところか。
教科書や参考書でよく見る、本格化前の平均タイムと比べると少し遅い。
しかしそれは他の5人も同じだった。
本格化が始まってすらないのなら当然な事なので仕方がないが、皆に対して他の部分で気になるものを感じていた。
「これで全員、2回分走り終えたな。」
シリウスの前に走ったルドルフが休憩を終え戻って来た。
「進捗はどうだ?」
「各自1点は見つけたけど試してみないと分からないね。 あくまで俺がパッと見て何となく気になった部分ってだけだからあまり強めには言えないけど。」
「それでも十分だろう。 私の知るトレーナー達も大抵が似た様なものだ。寧ろ、2回見ただけでそれぞれの何かを見つけられる事の方が素晴らしいと思うよ。」
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ。まあ正確には3回だけどね。」
実際に、少し気持ちが軽くなった。
何せ皆んな走り方がお上手なもんでこれと言って直すところが無いのだ。
やっても良いなら、
現状維持して本格化を待つまで筋トレよろしくで終わらせらたいが、流石にそれは通用しないだろうと思い1人1つ最低でも見つけ出した。
「早速1番初めに見たシービーからやろうか。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それでどう? 何か気になる所はあった?」
「スタート」
「いや!」
「走りは良いよ!強いて言うならもっと自分に合った靴を履けってぐらいだ。でもあのスタートは許せない! 俺の合図でさえ目に見えて遅れてたしもうそこしか見えなくなったよ!」
「スタート嫌いだもん!」
「もんやない‼︎」
スタート練習しないと二度と一緒に走らないと釘を刺すと、
珍しく血の気の引いた顔をしながら返事をもらったのであいつはもう良いだろう。
次はエース。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「気になる所は何でも言ってくれ!」
「うん、エースのは今見つけた事じゃ無いんだけど、レース中に気合いが入りすぎて掛かり気味になってそうだからそこかな。 正確なラップを刻むのまだ難しいから今はレース中に周りを見る訓練をすれば良いと思うよ。」
俺がそう指摘すると、エースは頭を抱えて気まずそうにした。
「この前のレースだろ? あの状況でよく見てたな。」
「見てないとどこに行くか分からない知り合いがいるんでね。お陰で視野が広くなったけど。」
「羨ましいよ、あたしもそうしようかな。」
「頼むよ。俺の代わりにCBを頼んだ。」
次はマルゼン。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ハァイ、早速お姉さんの気になる所。 教えて欲しいわ♪」
「おっおう。 マルゼンは走りも綺麗だしその辺りは問題ないかな。強いて言うなら、エースと似た様な感じになるけど、向正面の直線に入った時ちょっと無理して速度を上げすぎな気がした。 あんな小回りのコーナーは速度が出しづらいからあそこで離そうと思うのは分かるけど、今はペース配分を重点的に考えて正確なスタミナ管理と、逃げて終盤で差す走りを意識したら良いと思うよ。」
「あら・・・そんなにあたしの事見てくれてたなんて。姉さん嬉しいわ♪」
「そりゃあんなロケットスタートを間近で見たら目が離せないよ。」
「ふふ♪ 上手い事言っちゃって、また次もお願いね。」
「はははっ、出来る限り頑張るよ。」
口調のインパクトが強すぎて押されそうになったから初動で畳みかけたがそれでも押され気味で終わってしまった。
正直な感想を伝えたので気に入ってもらえると良いな。
次はラモーヌ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・・・・・・」
「・・・・・・あの」
「・・・・・なに?」
「多分だけどさっきの走り、流してたよね。」
「・・・それが?」
「いやっ、前の時はすごい気迫だったからその違いに驚いちゃってさ。」
「私が求めるのはここには無いわ。だからそうしただけよ。」
「・・・なるほど。」
無理だこの人の考えは読めない。
唯我独尊ってこう言う事を言うのだろうか。
仕方ないので謝るだけ謝って次のルドルフへ向かおう。
・・・いやでも何もしないのは申し訳ないから。
「最後に皆んなで模擬レースをやろうと思うけど参加する?」
「・・・・・そう」
あの尻尾の跳ね具合、どっちだ!?
次は昼食の後にルドルフ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ルドルフは・・・硬いね。」
「硬い?」
「この前のレースの時後ろから見てて思ったんだ。 そして今回も。 コーナーも直線の走りも綺麗なんだけど何かフォームがカクカクしてると言うか何と言うか。」
「ふむ。」
「ごめんね上手く言い表せなくて。」
「いや良いんだ。気にすることはない。」
「あえて言うならもっと自由に、かな」
「・・・自由か。」
上手く言えない。
なんて言えば良かったのだろうか。
さっきの走りを見たときも思ったが、
まるで教科書を見ている様な感じがしたんだよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「待たせやがって。 やっと私の番か。」
「ごめんね。 なるべく早く回る予定だったんだけど。」
「別に良い。 言ってみただけだ気にすんな。」
あれ、
意外と素直と言うかなんと言うか。
予想だともっと噛みつかれると思ったが案外サクサク進みそう。
「シリウスって。 誰かに走り方教わった?」
「あ?」
「独自性?野生的?取り敢えず見てて思ったのはそんな感じ。 それから昔のシービー見てるみたいだった。」
「あんな自由人と一緒にするとは良い度胸だな。」
「それがあいつの良い所だよ。」
「誰にも囚われない走りは長所だと思う。 でも確かに、自由とがむしゃらは違うと俺は思うな。」
「・・・なるほどねぇ。」
一瞬噴火しそうになっていたが何故か大人しくなり軽く礼だけ言って何処かへ行ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これで5人+aのアドバイスの時間が終わった。
終わってみればもう16時を過ぎており残り時間はあまり無かった。
「皆んな今日は1日付き合ってくれてありがとう! 皆んながレースで活躍できるよう陰ながら応援するよ。」
もうやる事も特に無いし皆んなの時間をとるわけにもいかないので、早めに切り上げようと良い感じに終わりの挨拶をしたら。
「やらないの?」
「・・・ん?」
「あなたの熱はその程度なのね・・・」
・・・この人もしかして。
「・・・最後に皆んなで走るか。」
それを言うと、全員が今日1の盛り上がりを見せた。
その後ちゃっかり戻って来たシリウスも含めた7人で前回と同じコースを走ることになった。
結果
1マルゼン
2エース クビ
3ラモーヌ ハナ
4ルドルフ クビ
5シリウス 1バ身
6シービー クビ
7俺 クビ
気のせいか皆んな若干早くなったような?
いやいやあれだけのアドバイスだけでそんな上手く行くわけないよね。
レースの後、
エース、マルゼン、シリウスから判子を貰い俺は2日目の試験をギリギリ合格した。
ラモーヌは分からないが、ルドルフからは少し考えさせて欲しいと言われ、結果時間がなく終わってしまい彼女からの答えを聞きそびれてしまった。