TSしたけど声だけは良かったからV始めたけど駄目だったから同人声優でなんとか命を繋ごうと思う 作:粗だらけ
「とは言ったけれど。さてさて、どうしようか?」
やりたいとは思ったけれど、何をやるかまでは決まっていない。ただやりたいな〜ってだけでここまで来てるのが私と言う人間である。ある意味凄いと思う。もう少し考えて動いた方が生きやすいんだろうけどね。そしたらこうならなかっただろうし。
うーん、たまには考えてみるか。脳みそのトレーニングだ。今の私に出来る事はなんだ?声は良い。だけど、そんなのは普通の人達の中ではって言うだけ。言わばアマチュア、地区予選突破レベルだ。冷静に考えれば、私ぐらいの声の人間はゴロゴロいる。なら、どうするか?決まってる。私にしかない強みを見つける。要は個性だ。
「……私にしかない物。TSしたって言う実績ぐらいか」
パッと出たのがそれだった。取り敢えず今はそれを材料に何か考えてみよう。TSか。
なんか出てきたな。うーんベタだけど、やっぱり王道かな最初は。料理だってそうだもんね。初心者が下手にアレンジして大失敗するのが一番ありがちだし。ここは、王道で様子を見てみよう。駄目だったらやり方変えれば良いし。
と言う事で、王道のTS幼馴染との日常ASMR(健全)を作る事にした。台本考えたり、パッケージのイラストお願いしたり忙しいな。でも悪くはない。祭りの前の準備期間って感じがして好きだ。
「さぁ、頑張りますか!」
★★★★★★★★★
「よっ、久しぶり」
「……」
「おーい。聞こえてる?」
「え?あ、え?」
聞き覚えの無い声に無視をしていると、弄っていた携帯の画面を塞がれた。思わず顔を上げるが、やはり知らない人だった。
「あの、何処かでお会いしましたっけ?」
そう尋ねると、なぜか不思議そうな顔をしている。そんな顔をされても困る。本当に何処かで会ったのか?そんな様子のこちらを見て相手がニヤリと笑った。その顔が一瞬、アイツと重なった。
好きなのは、しょーもないイタズラと俺の困った顔って宣言してたやべー奴で、子供の頃は酷い目にあったもんだ。離れられてラッキーとは思ったのは最初だけで。いなきゃいないで落ち着かない様な、まるで中毒性のある毒みたいだ。
「えぇ、会いましたよ」
「あ、本当ですか?それは申し訳ないです。すっかり忘れてしまってて。良ければ詳しく教えて頂けませんか?」
どうやら本当に会っていた様だ。これは本格的に困った。いくら顔を見たってその顔にピンと来ない。それどころか見れば見るほど。悪いウイルスに侵されたのかさっきからアイツの顔がサブリミナルで出てくる始末だ。頼むから悪い夢ならさっさと醒めてくれ。
「良いですよ。お会いしたのは、だいぶ昔……貴方がこの世に生まれてくる前。そうですね、俗に言う前世と言ったところでしょうか」
「は?ぜ、前世!?」
思わず大きな声が漏れる。
何かやばい人に捕まってしまった様だ。このまま話していたら、壺かアクセサリーか兎に角何かを買わされそうだ。適当に会話を打ち切ってしまおう。
「あ、あのちょっと急用がありまして……」
出来るだけ申し訳なさそうな顔を作り、その場から逃げ出そうとすると笑いが聞こえた。
「フフッ」
「え?」
「駄目だ。あっはははははは!全然気付かないじゃん。俺だよ俺、歩実だよ」
「はぁ!?」
この馬鹿みたいに笑っている奴が、アイツ?いや、確かに笑ってる姿は変わらないけど。……なんか昔と違くないか?主にその、性別が。
「なんか変わったな」
さりげなくそう言葉に出すと、またしても奴はニヤリと笑った。これは地雷を踏んだかもしれない。
「可愛くなっただろ?」
「……一般的に言えばそうなんじゃないか?」
「ちぇー、つまんねえの。もっとドギマギしろよ〜童貞なんだからさ」
馬鹿みたいな事を言うなと思いながら、一緒に歩く。
「一年前にさ、突然こんな風になってさ」
「おう」
「色々大変でさぁ。周りの目は何て言うか、キワモノ見る様な目と面倒臭い感じとなんかとにかく混ざった様な感じでさ。学校もあんまり通えてなくて、正直連絡してから今日来る時も緊張してたんだけど」
「……おう」
「お前は変わってなくて良かったよ」
いつもの人を馬鹿にした様なニヤケヅラでは無く、心の底から笑った顔だった。だから、俺もそれに応える事にした。
「俺もお前に会えて良かったよ」
「本当、からかいがある馬鹿なところは変わってなくて良かったわー。さっきの顔なんて写真撮ったけば良かったわ。本当」
「うるせーな。仕方ねえだろ!久々過ぎてお前だって分からなかったんだから」
「分かる筈ですよ?顔は変わってない筈ですから」
「メイクしてるから分からなかったんだよ!」
「おっ、メイクしてるの気づいたんだ。良く分かったじゃん!」
大変だったんだぞ〜と俺の肩をバンバン叩く。いや、じゃあやるなよ。
「大変なら、何でわざわざメイクしたんだ?」
素直に疑問に思ったので聞いて見ると、デカいため息を返された。
「そりゃあ、お前と会うからだよ」
「え?」
いや、んな訳が無い。とは脳で否定しつつも、見た目は良いんだよなぁと反対側の脳が言っている。もしかして。
「完璧に女になりすませば、お前がどんだけ面白い反応をしてくれるか楽しみだったからな!」
「そうだよな!!お前はそう言う奴だよ!チクショウッ」
「本当、お前と一緒にいると楽しいな。好きだよ」
人生は色々あるもんだなぁと思いながら、俺はその日楽しい一日を過ごした。