クルタ族転生   作:ryyonn

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鈴取り演習、解放される緋の眼

 

 

翌朝。

 

木ノ葉隠れの里、第七演習場。

 

集合時間の少し前に到着した心は、草地に立ちながら周囲を見渡していた。

 

木々に囲まれた広い演習場。少し離れた場所には、試験に使われる丸太が二本並んでいる。

 

そして、心の腰には忍具袋があった。

 

(さて……いよいよカカシとの実戦か)

 

昨日、カカシから告げられた試験内容は、まだ明かされていない。

 

だが、心には予想がついていた。

 

鈴取り演習。

 

担当上忍から鈴を奪う。それが、原作で第七班に課された試験だった。

 

もちろん、今回は四人班だ。内容が多少変わる可能性はある。

 

それでも、カカシがただ実力を測るだけの試験をするとは思えなかった。

 

(問題は、あいつらが協力できるかどうかだな)

 

心は小さく息を吐いた。

 

やがて、ナルト、サスケ、サクラが姿を現した。

 

「おはよう、心!」

 

ナルトが元気よく手を振る。

 

「おはよう」

 

「おはよう、心くん!」

 

サクラも笑顔で挨拶した。

 

一方、サスケは短くうなずくだけだった。

 

四人がそろったところで、心は早速切り出した。

 

「カカシ先生が来る前に、一つ提案がある」

 

「提案?」

 

ナルトが首を傾げる。

 

「ああ。今日の試験、たぶん先生は本気で俺たちを相手にする。だから、最初から四人で協力する方法を考えておきたい」

 

心は三人を見回した。

 

「俺たちは同じ班だ。個人の実力を見せることも大切だけど、連携を確認しておくのも悪くないと思う」

 

「……俺は必要ない」

 

最初に口を開いたのはサスケだった。

 

「相手が上忍だろうと、俺一人で十分だ」

 

「サスケくん……!」

 

サクラは、待ってましたと言わんばかりにサスケを見つめた。

 

「そうよね! サスケくんなら大丈夫だもの!」

 

(まあ、そう言うと思ったよ……)

 

心は内心でため息をついた。

 

サスケは強い。アカデミーでも優秀な成績を収めていたし、体術や手裏剣術の腕も高い。

 

しかし、相手は上忍だ。

 

しかも、ただの上忍ではない。

 

はたけカカシ。

 

原作の知識を抜きにしても、簡単に勝てる相手ではなかった。

 

「ナルトはどう思う?」

 

心は、最後に残った友人へ視線を向けた。

 

ナルトは腕を組み、少しだけ考え込んでいた。

 

「俺は……」

 

いつもなら即答するところだが、今回は違った。

 

「俺も、まずは一人でどこまでできるか試してみたいんだってばよ」

 

「ナルト……」

 

「心と一緒に修行してきたし、前より強くなったのは分かってる。でも、上忍の先生相手に、今の俺がどこまで通用するのか知りたいんだ」

 

ナルトは少し言いにくそうに続けた。

 

「だから、最初くらいは自分の力で挑戦してみたい」

 

心はナルトの顔を見つめた。

 

その言葉には、単なる意地だけではないものがあった。

 

ナルトは自分の成長を確かめたいのだ。

 

これまで努力してきた成果が、どこまで通用するのか。

 

それを自分自身で知りたいのだろう。

 

「……分かった」

 

心はうなずいた。

 

「なら、最初はそれぞれで挑戦しよう。ただし、無理だと思ったらすぐに切り替えること。いいな?」

 

「分かったってばよ!」

 

ナルトが元気よく答えた。

 

「ふん」

 

サスケはそっぽを向く。

 

サクラもサスケに同調するようにうなずいた。

 

心は三人を見ながら、心の中で深いため息をついた。

 

(まあ、一度痛い目を見ないと分からないか)

 

この三人は、それぞれに自信がある。

 

ナルトは成長を確かめたい。

 

サスケは自分の力に自信を持ち、他人に頼ることを好まない。

 

サクラはサスケを信頼しているが、まだ実戦経験が十分とはいえない。

 

今ここでいくら説明しても、素直には受け入れないだろう。

 

(カカシに一度やられたあとで、もう一度提案すればいい)

 

そう考えた心自身にも、別の思いがあった。

 

(……俺も、どこまで通用するのか試してみたいしな)

 

心は拳を握った。

 

これまで積み重ねてきた修行。

 

身体能力を高め、チャクラ操作を磨き、体術を鍛え続けてきた日々。

 

そして、緋の眼。

 

今まで、心は一族の力を必要以上に人前で見せないようにしてきた。

 

だが、これからは忍として任務に出るのだ。

 

いつまでも隠し続けることはできない。

 

(下忍になった今なら、解禁してもいい頃合いだろう)

 

 

 

もっとも、緋の眼を見せたからといって、誰にでもすべての力を明かすつもりはない。

 

それでも、カカシなら大丈夫だろう。

 

原作の知識が正しければ、彼は力を持つ者を頭ごなしに否定するような忍ではない。

 

むしろ、心の力を見たうえで、必要な助言をくれるかもしれない。

 

(それに……)

 

心は忍具袋に触れた。

 

先日の禁術の巻物に記されていた、水遁の術。

 

心はあの夜、巻物を読んだだけでは終わらなかった。

 

帰宅後、何度もチャクラの流れを検証し、実際に水流を発生させては調整した。

 

そして、昨日のうちに術の構造を理解し、完全に習得していた。

 

水遁・渦流弾。

 

水流を分岐させ、回転を加え、複数の軌道から敵を追い込む応用性の高い術だ。

 

まだ威力や操作範囲をさらに伸ばせる余地はあるが、術そのものを使ううえでの問題は、すでになくなっていた。

 

(これも実戦で試してみたいな)

 

そう考えていたときだった。

 

「待たせたね」

 

気の抜けた声が、演習場に響いた。

 

四人が振り返る。

 

そこには、片手を上げながら歩いてくるカカシの姿があった。

 

「おはようございます!」

 

サクラが元気よく挨拶する。

 

「遅いってばよ! 先生、何時だと思ってんだ!」

 

ナルトがさっそく文句を言った。

 

「いやあ、今日はちょっと道で迷っちゃってね」

 

「またそれかよ!」

 

心は思わず苦笑した。

 

(本当に変わらないな、この人……)

 

カカシは四人の前で立ち止まると、腰のポーチから二つの鈴を取り出した。

 

チリン、と涼しげな音が鳴る。

 

「今日の試験は、これを使う」

 

「鈴……?」

 

サクラが首を傾げた。

 

「そう。俺からこの鈴を奪ってもらう」

 

カカシは鈴を指先で揺らした。

 

「制限時間は昼まで。鈴は二つしかないから、最低でも二人は失格になる」

 

「ええっ!?」

 

サクラが驚く。

 

「ちょっと待ってください! 私たち、四人いるんですよ!?」

 

「そうだね」

 

カカシはあっさりとうなずいた。

 

「だから、誰かは失格になる」

 

「そ、そんな……!」

 

サクラが顔を青くする。

 

ナルトは鈴を見つめ、サスケは鋭い目でカカシを観察していた。

 

心は予想通りの展開に、静かに息を吐いた。

 

(やっぱり鈴取りか。しかも四人で鈴二つ……)

 

カカシは続けた。

 

「もちろん、俺は君たちを簡単に合格させるつもりはない。忍具は自由に使っていい。ただし、命を粗末にするような真似はしないこと」

 

「分かったってばよ!」

 

ナルトが拳を握る。

 

「よし! 絶対に鈴を奪ってやる!」

 

「ふん。二つしかないなら、俺が一つ奪えばいい」

 

サスケはそう言って、カカシを見据えた。

 

サクラも、サスケの姿を見て気合を入れる。

 

「私だって頑張るわ!」

 

心は三人の様子を見ながら、もう一度だけ考えた。

 

(……さて。どこまで本気を出すか)

 

カカシは四人を見渡した。

 

「それじゃあ、始めようか」

 

その瞬間、空気が変わった。

 

さっきまで気の抜けた雰囲気だった男の気配が、静かに研ぎ澄まされていく。

 

心はすぐに理解した。

 

(これが上忍か……)

 

実力差を、肌で感じる。

 

カカシは何も構えていないように見える。

 

それなのに、どこから攻めても簡単には通らないという感覚があった。

 

「制限時間は昼まで。鈴を取れなかった者は失格。……それじゃあ、始め!」

 

カカシの声が響いた。

 

四人は一斉に動いた。

 

6.上忍の壁

 

最初に動いたのはナルトだった。

 

「うおおおおっ! いくってばよ!」

 

真正面からカカシへ突っ込む。

 

「ナルト、正面から行くな!」

 

心が声を上げたが、ナルトは止まらなかった。

 

拳を振り抜く。

 

しかし、カカシは軽く身を傾けただけで回避した。

 

「おっと」

 

「まだまだ!」

 

ナルトは続けざまに蹴りを放つ。

 

それも、カカシは紙一重でかわした。

 

「動きは悪くないけど、攻撃が単調だね」

 

「うるせえってばよ!」

 

ナルトは勢いを増した。

 

だが、カカシはその拳を片手で受け止めると、ナルトの身体をくるりと回し、地面へ転がした。

 

「うわっ!」

 

ナルトが草地を転がる。

 

「ナルト!」

 

サクラが声を上げた。

 

ナルトはすぐに起き上がった。

 

「くっそー! まだまだ!」

 

今度は印を結ぶ。

 

「多重影分身の術!」

 

ボンッ!

 

白煙が広がり、複数のナルトが現れた。

 

「これならどうだってばよ!」

 

影分身たちが、四方からカカシに襲いかかる。

 

しかし、カカシは慌てなかった。

 

最初の一人をかわし、次の一人の腕をつかんで別の分身へぶつける。

 

さらに、後方から迫った分身を蹴り飛ばし、残った分身たちの間を抜けた。

 

あっという間に、影分身が煙となって消えていく。

 

「なっ……!」

 

最後に残ったナルトも、カカシの足払いを受けて転倒した。

 

「はい、そこまで」

 

カカシはナルトの額を指先で軽く弾いた。

 

「勢いはいいけど、相手をよく見ないとね」

 

「くそぉ……!」

 

ナルトは悔しそうに歯を食いしばった。

 

その隙に、サスケが動いた。

 

手裏剣を二枚、角度を変えて投げる。

 

カカシは身体をひねり、一枚目をかわした。

 

二枚目が、その動きを追うように迫る。

 

(うまい……!)

 

心は思わず感心した。

 

サスケの手裏剣術は正確だった。

 

ただ狙った場所へ投げるのではなく、相手の回避先まで計算している。

 

しかし、カカシはさらに一枚の手裏剣を投げ、空中で軌道を変えるように二枚目を弾いた。

 

金属音が響く。

 

その間にサスケは接近していた。

 

拳を放つ。

 

カカシは腕で受け止めた。

 

サスケは間髪入れず、足元を狙う。

 

カカシが跳び上がった瞬間、サスケは手を伸ばし、鈴へ触れようとした。

 

だが――。

 

「惜しいね」

 

カカシは空中で身体をひねり、サスケの手を避けた。

 

着地と同時に、サスケの背後へ回る。

 

「なっ……!」

 

サスケが振り返るより早く、カカシの指先が額当てに触れた。

 

「戦いの中では、相手の位置を見失わないこと」

 

次の瞬間、サスケは地面へ押さえつけられていた。

 

「ぐっ……!」

 

カカシはすぐに手を離した。

 

「悪くない。でも、まだ甘い」

 

サスケは悔しげに立ち上がった。

 

「……くそ」

 

続いて、サクラが動こうとした。

 

しかし、目の前でサスケがあっさり倒されたのを見て、身体がこわばってしまう。

 

(サスケくんでも……!)

 

カカシの視線が、サクラへ向いた。

 

「どうしたの? 来ないのかな?」

 

「そ、それは……!」

 

サクラは一歩下がった。

 

結局、彼女は攻め込むことができなかった。

 

カカシは小さく息を吐いた。

 

「なるほどね。君は、まだ戦う覚悟が足りないみたいだ」

 

サクラは唇をかんだ。

 

「……っ」

 

心は、その姿を見ていた。

 

(これで、三人とも現実を知ったはずだ)

 

ナルトは実力差を思い知らされた。

 

サスケは自分の技術が通用しない相手がいると理解した。

 

サクラは、忍として戦うことの厳しさを目の当たりにした。

 

もちろん、それで三人がすぐに考えを改めるとは限らない。

 

だが、今なら話を聞いてくれる可能性はある。

 

心は三人に声をかけた。

 

「ナルト、サスケ。少し話がある」

 

「何だよ……」

 

ナルトは悔しそうに顔を上げた。

 

サスケも、険しい表情で心を見る。

 

「さっき言っただろ。四人で協力しようって」

 

心はカカシを警戒しながら、声を抑えて続けた。

 

「一人ずつじゃ、先生には勝てない。少なくとも今の俺たちではな。だけど、四人で連携すれば、鈴を取れる可能性は上がる」

 

「……」

 

「ナルトとサスケは、サクラを説得してくれ。俺はその間、先生の相手をする」

 

「心、お前……一人でカカシ先生と戦うつもりか?」

 

ナルトが目を見開く。

 

「時間を稼ぐだけだ。無理に倒そうとは思ってない」

 

心は穏やかに答えた。

 

「それに、俺も試したいことがある」

 

サスケはしばらく心を見つめた。

 

やがて、小さく舌打ちする。

 

「……分かった。だが、俺はお前に頼ったわけじゃない」

 

「それでいいよ」

 

心は笑った。

 

「目的は同じだ。鈴を取る。それだけで十分だろ」

 

ナルトも、力強くうなずいた。

 

「よし! 俺、サクラちゃんを説得してくるってばよ!」

 

「……頼むぞ」

 

心は二人を送り出すと、ゆっくりカカシへ向き直った。

 

カカシは、興味深そうにこちらを見ていた。

 

「ようやく班らしくなってきたね」

 

「そうですね。もっとも、まだ説得できるか分かりませんけど」

 

「じゃあ、君が時間を稼ぐわけだ」

 

カカシは鈴を揺らした。

 

「一人で、俺を相手に?」

 

「ええ」

 

心は眼を閉じてーー

 

「少しだけ、本気を出させてもらいます」

 

カカシの目が細くなった。

 

「……ほう」

 

ゆっくりと開かれた青い瞳が、色を変えていく。

 

鮮烈な緋色。

 

血のように赤く、それでいて宝石のように澄んだ瞳が、朝の光を受けて輝いた。

 

カカシの表情から、気の抜けた雰囲気が消えた。

 

(これが……枢流陀一族の緋色の瞳)

 

噂では聞いていた。

 

だが、実際に見るのは初めてだった。

 

心の周囲の空気が変わる。

 

チャクラの流れが研ぎ澄まされ、姿勢がわずかに低くなる。

 

ただ目の色が変わっただけではない。

 

身体能力そのものが、一段階引き上げられたかのようだった。

 

「なるほどね……」

 

カカシは、静かに構えを取った。

 

「これは、少し気を引き締めたほうがよさそうだ」

 

心は地面を蹴った。

 

次の瞬間、その姿がカカシの視界から消える。

 

いや、正確には消えたのではない。

 

常人では追いきれない速度で、間合いを詰めたのだ。

 

「っ!」

 

カカシが腕を上げる。

 

心の拳が、そこへ叩き込まれた。

 

衝撃が走る。

 

カカシの足が、草地を滑った。

 

「……!」

 

カカシは後方へ跳び、距離を取った。

 

心は追撃せず、静かに立っている。

 

「今の速度……」

 

カカシは心を見つめた。

 

アカデミーを卒業したばかりの下忍が出せる動きではない。

 

少なくとも、通常の下忍の枠には収まらない。

 

心は拳を握り直した。

 

「まだ、これからですよ」

 

その声とともに、彼の周囲の空気が再び張り詰める。

 

緋の眼が、カカシを捉えていた。

 

――ここからが、本当の勝負だった。

 

 

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