クルタ族転生   作:ryyonn

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氷の千本、緋の眼と写輪眼

 

 

1.写輪眼のカカシ対桃地再不斬

 

濃い霧に包まれた森の中。

 

カカシと再不斬の戦いは、再び激しさを増していた。

 

「どうした、カカシ! 前回のような余裕はないようだな!」

 

再不斬が巨大な断刀・首斬り包丁を振り下ろす。

 

カカシは身をひねってかわし、すかさずクナイで反撃した。

 

金属音が響く。

 

再不斬は攻撃を受け流すと、カカシから距離を取った。

 

「相変わらず厄介な眼だ。写輪眼さえなければ、とうに仕留めているものを」

 

「それはどうも。褒め言葉として受け取っておくよ」

 

カカシは軽口を叩きながらも、再不斬から目を離さなかった。

 

前回の戦いで、再不斬の戦闘能力は十分に理解している。霧隠れの暗殺術、優れた体術、そして水遁。

 

どれも油断できない。

 

再不斬もまた、前回のように写輪眼の能力を見誤るつもりはなかった。

 

「ならば、今度はこれでどうだ!」

 

再不斬が印を結ぶ。

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

地面を覆う水が盛り上がり、巨大な水龍となってカカシへ襲いかかった。

 

「土遁・土流壁!」

 

カカシは土の壁を出現させ、水龍の突進を受け止める。

 

轟音とともに水飛沫が舞った。

 

だが、その水飛沫の向こうから、再不斬が首斬り包丁を振りかざして迫る。

 

カカシは写輪眼で動きを見切り、ぎりぎりで刃をかわした。

 

「ちっ……!」

 

再不斬が舌打ちする。

 

以前よりカカシの消耗が少ないことにも気づいていた。

 

それでも、写輪眼はカカシ自身のチャクラを消耗させる。長引けば再不斬にも勝機はある。

 

二人は互いの隙を探りながら、森の中を縦横無尽に駆けた。

 

一方、その戦いを少し離れた場所から見ていた少年がいた。

 

白い仮面をつけた少年――ハクである。

 

彼の視線は、カカシではなく、サスケと心に向けられていた。

 

「……あの二人も、前回より成長しているようですね」

 

ハクは小さくつぶやいた。

 

そして、音もなく木の枝から飛び降りる。

 

サスケが、その気配を察知した。

 

「来るぞ!」

 

次の瞬間、鋭い千本が飛来した。

 

サスケは身をひねってかわし、クナイを構える。

 

心もまた、緋の眼で千本の軌道を見切り、タズナたちの前に立った。

 

「サクラ、タズナさんを頼む!」

 

「分かったわ!」

 

心が視線を戻すと、サスケはすでにハクの前へと踏み出していた。

 

「おい、心。こいつは俺にやらせろ」

 

サスケの声には、強い闘志がこもっていた。

 

「前回は再不斬に何もできなかった。今度は違う。俺の力で、こいつを倒す」

 

心はサスケの横顔を見た。

 

その目には、うちは一族の誇りと、強くなりたいという執念が宿っている。

 

ここでサスケの前に立てば、彼の成長の機会を奪うことになるかもしれない。

 

しかし、相手はただの下忍ではない。

 

ハクは再不斬の相棒であり、並の忍では太刀打ちできない実力を持つ。

 

「分かった。ただし、無茶はしないこと。俺は後ろから援護する」

 

「余計なお世話だ」

 

「そう言うと思ったよ」

 

心は苦笑し、サスケの少し後方へ移動した。

 

ただし、意識の一部はハクに向けたままだ。

 

サスケが危険に陥れば、すぐに介入する。

 

そして、サクラとタズナを守ることも忘れない。

 

敵はハク一人とは限らない。再不斬がカカシを振り切れば、こちらへ攻撃を仕掛けてくる可能性もある。

 

心は周囲の気配を探りながら、緋の眼で戦況を見つめた。

 

2.氷の使い手、ハク

 

「君が僕の相手をするんですね」

 

ハクは穏やかな声でサスケに話しかけた。

 

仮面の奥から覗く目には、敵意がほとんど感じられない。

 

それがかえって、サスケの警戒心を強めた。

 

「名前は?」

 

「……ハクです」

 

「そうか。俺はうちはサスケだ」

 

サスケはクナイを構えた。

 

「お前がどれほどの実力か、確かめさせてもらう」

 

「分かりました」

 

ハクは静かに答えた。

 

次の瞬間、サスケが動いた。

 

地面を蹴り、一直線に間合いを詰める。

 

クナイがハクの肩を狙う。

 

だが、ハクはわずかに身体を傾け、攻撃をかわした。

 

サスケはすぐさま二撃目を放つ。

 

ハクは後退しながら、袖の中から千本を取り出した。

 

「速い……!」

 

サスケは飛来する千本をクナイで弾き、体勢を立て直す。

 

ハクは追撃せず、一定の距離を保った。

 

その動きは洗練されていた。

 

無駄な動作がなく、相手の攻撃を必要最小限の動きでかわしている。

 

心は戦いを観察しながら、ハクの実力を改めて認識していた。

 

――やはり強い。しかも、相手を殺すことだけが目的ではない。

 

千本の狙いは急所を外している。サスケの動きを試しているようにも見えた。

 

だが、だからといって安心はできない。

 

サスケは攻撃を続けた。

 

体術の連撃。

 

クナイによる牽制。

 

そして、訓練で磨いた足運び。

 

以前のサスケとは違い、攻撃を外した後もすぐに体勢を立て直し、次の手を考えている。

 

心との修行が、確実に実を結んでいた。

 

しかし、ハクもまた一枚上手だった。

 

「すごいですね。まだ子供なのに、よく鍛えられています」

 

「黙れ!」

 

サスケが蹴りを放つ。

 

ハクは腕で受け流し、距離を取った。

 

その瞬間、心はハクの指先に目を留めた。

 

千本を握る指の動き。

 

印を結ぶための、ほんのわずかな予備動作。

 

「サスケ、気をつけろ! 何か仕掛けてくる!」

 

心の警告とほぼ同時に、ハクが印を結んだ。

 

「氷遁……」

 

周囲の空気が、急激に冷たくなった。

 

サスケの目が見開かれる。

 

ハクの周囲に、鏡のような氷が次々と出現した。

 

一枚、二枚、三枚。

 

それらはサスケを取り囲むように配置され、光を反射して輝いている。

 

「魔鏡氷晶!」

 

氷の鏡が、サスケを包囲した。

 

サスケはすぐに後退しようとしたが、鏡の配置によって逃げ道を塞がれている。

 

そして、氷の鏡の一枚にハクの姿が映った。

 

次の瞬間。

 

鋭い千本が、鏡の中から飛び出した。

 

「くっ!」

 

サスケは腕を引いてかわす。

 

だが、千本は止まらない。

 

別の鏡から、さらに別の角度から、次々と飛来してくる。

 

サスケはクナイで防ぎ、身体をひねり、必死に攻撃を避けた。

 

「何だ、こいつの速さは……!」

 

鏡の中を移動するハクの姿は、目で追うことさえ難しい。

 

心は即座に状況を分析した。

 

――氷の鏡を経由して高速移動しているのか。それに、千本による連続攻撃。

 

正面から突破するのは簡単ではない。

 

心が援護に入ろうとした、その時だった。

 

「来るな、心!」

 

サスケの声が響く。

 

「これは俺の戦いだ!」

 

心は一瞬だけ動きを止めた。

 

サスケは必死に千本をかわしながら、それでも前を向いている。

 

「……分かった。だが、死なせるつもりはない」

 

心はそう告げ、サスケの周囲を警戒しながら、介入できる距離を保った。

 

サクラとタズナからも目を離さない。

 

この戦いでサスケが何を得るのか。

 

そして、どこまでハクの力に対応できるのか。

 

心は緋の眼を細め、戦況を見守った。

 

3.眠りから覚めたナルト

 

その頃、タズナの家では――。

 

「……ん?」

 

ナルトが、ようやく目を覚ました。

 

窓から差し込む光を見て、ぼんやりとした頭をかく。

 

「……あれ? もう朝か?」

 

身体を起こした瞬間、昨日の修行の記憶がよみがえった。

 

水面歩行を何度も繰り返し、影分身まで使って練習した。

 

最後には疲れ切って、そのまま眠り込んでしまったのだ。

 

「って、やべえ!」

 

ナルトは跳ね起きた。

 

「みんなは!? 再不斬はどうなったんだってばよ!」

 

慌てて身支度を整え、部屋を飛び出す。

 

階段を駆け下りたところで、家の中が妙に静かなことに気づいた。

 

「……誰もいねえ?」

 

嫌な予感が胸をよぎった。

 

カカシも、サスケも、サクラも、心もいない。

 

ナルトは唇を噛んだ。

 

「くそっ! オレだけ寝坊かよ!」

 

急いで忍具を身につけ、外へ飛び出す。

 

仲間たちが戦っているかもしれない。

 

そう思うと、じっとしていられなかった。

 

ところが、家の前を駆け抜けようとした時だった。

 

「うわっ!」

 

ナルトの前に、男たちが立ちはだかった。

 

ガトーの手下たちだ。

 

彼らは家の近くにいたツナミとイナリを捕らえ、脅していた。

 

「おとなしくしろ。余計なことをすれば、どうなるか分かっているな?」

 

男の一人がツナミを乱暴に引き寄せる。

 

イナリは震えながら、母親を見上げていた。

 

「お母さん……!」

 

ツナミは息子をかばうように抱き寄せた。

 

「やめて! この子には手を出さないで!」

 

「だったら、タズナの居場所を教えろ」

 

男は冷たく言い放った。

 

「橋を造ろうとしているあの老人を、今度こそ始末してやる」

 

その時。

 

「おい!」

 

鋭い声が響いた。

 

男たちが振り向く。

 

そこに立っていたのは、ナルトだった。

 

「何やってんだ、お前ら!」

 

男の一人が鼻で笑う。

 

「何だ、ガキか。ちょうどいい。お前も一緒に始末してやる」

 

ナルトは拳を握った。

 

「お前ら……!」

 

だが、男たちは忍ではないにしても、人数が多い。

 

ナルトは一人で、しかも寝起きの状態だった。

 

それでも、目の前で母親と子供が脅されているのを見て、逃げるという選択肢はなかった。

 

「お母さんとイナリを放せ!」

 

「生意気なガキめ!」

 

男がナルトに殴りかかる。

 

ナルトは身をひねってかわし、相手の腹に拳を叩き込んだ。

 

「ぐっ!」

 

男がよろめく。

 

ナルトはその隙にツナミとイナリの前へ飛び込んだ。

 

「二人とも、下がってろ!」

 

「ナルト君……!」

 

ツナミが驚きの声を上げる。

 

イナリは目を見開いた。

 

昨日、自分はナルトを馬鹿にした。

 

英雄などいないと叫び、彼を叩いた。

 

それなのに、ナルトは今、自分たちを助けようとしている。

 

「クソガキが!」

 

別の男がナルトに向かって襲いかかった。

 

ナルトはかわそうとしたが、寝不足と疲労が身体に残っている。動きがいつもより鈍い。

 

肩を殴られ、地面に転がった。

 

「ナルト君!」

 

ツナミが叫ぶ。

 

男はナルトを見下ろして笑った。

 

「威勢だけはいいな。だが、ガキが大人に逆らうとどうなるか、教えてやる!」

 

ナルトは歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がった。

 

「……うるせえ」

 

頬に土がつき、身体は痛む。

 

それでも、ナルトは二人の前から退かなかった。

 

「オレは……オレは、逃げねえ!」

 

男たちが再び襲いかかる。

 

ナルトは拳を振るい、足を使い、必死に抵抗した。

 

数では圧倒的に不利だった。

 

それでも、彼は一歩も引かなかった。

 

昨日、イナリが言った言葉が頭をよぎる。

 

――英雄なんていない。

 

――強い奴に逆らえば、死ぬだけだ。

 

ナルトは目の前の男を睨みつけた。

 

「そんなの……オレが決めることだ!」

 

彼は男の腕をくぐり抜け、体当たりを仕掛けた。

 

男が体勢を崩す。

 

その隙にナルトはツナミとイナリを逃がそうとした。

 

「今だ! 逃げろ!」

 

だが、男の一人がイナリの腕をつかんだ。

 

「逃がすか!」

 

「やめろ!」

 

ナルトはすぐさま飛び込み、男にしがみついた。

 

「この野郎、離せ!」

 

男がナルトを振り払う。

 

ナルトは地面に転がったが、すぐに立ち上がった。

 

その姿を見つめながら、イナリは震えていた。

 

どうしてだ。

 

どうして、この少年は逃げないのだ。

 

自分は昨日、ナルトにひどいことを言った。

 

それなのに、ナルトは何もなかったかのように、自分たちを守ろうとしている。

 

「……なんで」

 

イナリの唇が震えた。

 

「なんで、そこまで……」

 

ナルトは振り返り、歯を見せて笑った。

 

「決まってんだろ!」

 

そして、拳を握りしめる。

 

「仲間だからだ!」

 

イナリは息を呑んだ。

 

その言葉が、胸の奥に深く突き刺さった。

 

かつてカイザが自分を守ってくれた時の記憶が、脳裏によみがえる。

 

誰かを守るために立ち上がる人間がいる。

 

自分が信じられなくなっただけで、すべてが嘘だったわけではない。

 

ナルトは、まだ立っていた。

 

傷ついても、倒されても、何度でも立ち上がろうとしていた。

 

――英雄なんていない。

 

昨日、自分はそう言った。

 

けれど、目の前の少年は。

 

その言葉を、身をもって否定しているように見えた。

 

ナルトが再び男たちへ向かっていく。

 

イナリは、ぎゅっと拳を握りしめた。

 

「……ナルト」

 

その声は、まだ小さかった。

 

だが、昨日までの絶望だけに染まった声とは、少し違っていた。

 

そして、ナルトとガトーの手下たちの戦いは、まだ終わっていなかった。

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