1.サスケのもとへ
「みんなーっ! どこだってばよー!」
森の中に、ナルトの声が響き渡った。
ナルトは木々の間を駆け抜け、戦闘の音が聞こえる方向へ急いでいた。
「くそっ! オレが寝坊してる間に、みんなが戦ってるなんて!」
昨日の修行で疲れ切り、眠り込んでしまったことを後悔する。
そして、前方に氷の鏡が見えた。
その中で戦っているサスケの姿を見つけ、ナルトは勢いよく駆け出した。
「サスケ! 今助けるってばよ!」
「待って、ナルト!」
心の声に、ナルトは足を止めた。
「何で止めるんだよ、心! サスケが危ねーだろ!」
「分かってる。でも、何も考えずに突っ込んだら、お前までやられる」
心は氷の鏡を指さした。
「よく見て。サスケの動きが変わっただろう?」
ナルトは目を凝らす。
氷の鏡の中で、サスケが飛来する千本を次々とかわしていた。
「本当だ……。さっきまでと全然違うってばよ」
「写輪眼を開眼したんだ。まだ一つ巴だけど、相手の動きを捉えられるようになっている」
「写輪眼……?」
ナルトは首をかしげたが、すぐに表情を引き締めた。
「それで、オレはどうすればいいんだ?」
「サスケは内側から攻める。お前は外側から攻撃して、ハクの意識を分散させるんだ」
「内側と外側?」
「そう。サスケが鏡の中でハクの動きを捉え、お前が外から攻める。ハクは両方を警戒しなきゃならなくなる」
心はナルトをまっすぐ見た。
「ただし、無理に鏡の中へ入ろうとするな。お前は外から攻撃して、ハクの動きを制限するんだ」
「分かったってばよ!」
ナルトは拳を握りしめた。
「サスケを助けて、二人であいつをやっつけてやる!」
「よし。行こう」
心が頷くと、ナルトは氷の鏡へ向かって駆け出した。
心はその背中を見送り、周囲への警戒を続ける。
――二人の連携がうまくいけば、ハクにも隙が生まれるはずだ。
だが、相手は再不斬が信頼を寄せる忍だ。最後まで油断はできない。
2.氷の鏡の内と外
「サスケーッ! オレも来たぞ!」
ナルトが氷の鏡の外から叫んだ。
「うるさい! 集中できないだろ!」
サスケが怒鳴り返す。
「何だとーっ! せっかく助けに来たのによ!」
「誰が助けを頼んだ!」
「二人とも、口喧嘩は後にして!」
心の声が飛ぶ。
「「分かってる!」」
二人の声が重なった。
その瞬間、ハクが鏡の中から千本を放つ。
サスケは写輪眼で軌道を見極め、身をひねってかわした。
同時に、ナルトが氷の鏡の外側から手裏剣を投げる。
ハクは鏡から鏡へ移動してかわしたが、その一瞬、サスケが距離を詰めた。
「そこだ!」
サスケの蹴りが、ハクの移動先を狙う。
ハクは腕で受け流したものの、体勢がわずかに崩れた。
「今だってばよ!」
ナルトが印を結ぶ。
「影分身の術!」
煙とともに、複数のナルトが現れた。
分身たちは氷の鏡の外側へ散らばり、異なる方向から攻撃を仕掛ける。
ハクは鏡の中を高速で移動し、それらをかわしていく。
しかし、サスケだけに集中することはできなくなっていた。
内側ではサスケが攻め、外側ではナルトの分身が攻める。
ハクは両方を警戒しなければならない。
「なるほど……二人で僕の動きを制限するつもりですか」
ハクが静かにつぶやいた。
「そうだってばよ!」
ナルトが叫ぶ。
「サスケ一人に好き勝手させるわけにはいかねーからな!」
「お前が勝手に張り合ってるだけだろ!」
サスケが言い返す。
それでも、二人の攻撃は止まらない。
心は少し離れた位置から、二人の動きを見守っていた。
――いい連携だ。
ナルトが攻撃を仕掛け、ハクの注意を引く。その隙をサスケが突く。
まだ完成された連携とは言えないが、二人は互いの動きを理解し始めていた。
もっとも、ハクも黙ってやられる相手ではない。
氷の鏡の中で、ハクの動きが変わった。
攻撃の間隔が短くなり、千本が複雑な角度から飛来する。
「サスケ、気をつけろ! 相手の攻撃が変わった!」
「分かってる!」
サスケは写輪眼でハクの動きを追い続けた。
決着は、まだ先だった。
3.カカシ対再不斬
一方、濃い霧に包まれた森の中では、カカシと再不斬の戦いが続いていた。
首斬り包丁が唸りを上げ、カカシへ振り下ろされる。
カカシは身をひねってかわし、木の幹へ着地した。
「どうした、カカシ! さっきから逃げてばかりじゃねえか!」
再不斬が嘲笑する。
カカシは額当てをずらし、写輪眼を露わにした。
「……まったく。相変わらず、せっかちな人だね」
いつもの気の抜けた声だったが、その目は再不斬の動きを鋭く捉えている。
「ふざけるな! 次は逃がさん!」
再不斬が地面を蹴った。
首斬り包丁が横薙ぎに振るわれる。
カカシは身を低くしてかわし、クナイで反撃した。
金属音が響き、二人は再び距離を取る。
「写輪眼さえなければ、貴様などとっくに仕留めている!」
再不斬が吐き捨てた。
「そうかな?」
カカシは肩をすくめる。
「前にも言ったと思うけど、相手の能力をよく知ることは、忍にとって大切なことだよ」
「何が言いたい!」
「君の戦い方は、もう分かっているってことさ」
再不斬の表情が険しくなった。
「……ほざけ!」
再不斬が印を結ぶ。
「水遁・水龍弾の術!」
水が盛り上がり、巨大な龍となってカカシへ襲いかかった。
カカシもすぐに印を結ぶ。
「水遁・水龍弾の術!」
二体の水龍が激突した。
轟音とともに水飛沫が舞い、周囲の木々を濡らす。
再不斬は水飛沫に紛れ、首斬り包丁を構えて突進した。
「終わりだ、カカシ!」
だが、カカシは再不斬の動きを見切っていた。
刃をぎりぎりでかわし、再不斬の懐へ潜り込む。
「なっ……!」
カカシの拳が再不斬の腹部へ叩き込まれた。
再不斬が後退する。
「ぐっ……!」
カカシは追撃の構えを取りながら、静かに言った。
「君の攻撃は強力だ。でも、力任せに振り回せばいいってもんじゃない」
「小賢しい……!」
再不斬は腹部を押さえ、忌々しげに睨みつけた。
「まだ終わってねえぞ!」
「もちろん。僕も、まだ終わらせるつもりはないよ」
カカシは写輪眼を細めた。
「君には、聞きたいこともあるからね」
再不斬の目が鋭くなる。
「……何だと?」
「前回、君を連れ去った仮面の忍。あいつは何者だ?」
再不斬の表情が、一瞬だけ変わった。
だが、すぐに獰猛な笑みに戻る。
「知りたければ、俺を倒してみろ!」
「やれやれ。そう来ると思ったよ」
カカシは小さく息をついた。
そして、再び構えを取る。
4.霧隠れの暗殺術
再不斬が印を結んだ。
「水遁・霧隠れの術!」
霧が一段と濃くなる。
木々の輪郭がぼやけ、視界が急速に狭まった。
カカシは周囲を警戒し、写輪眼で再不斬の気配を探る。
「……また霧隠れか」
再不斬の声が、霧の中から響いた。
「どうした、カカシ! 写輪眼があれば、俺の位置が分かるんじゃなかったのか?」
カカシは答えない。
再不斬の狙いは分かっている。
霧で視界を奪い、気配を消して接近する。そして、相手が気づく前に首を刎ねる。
霧隠れの暗殺術。
再不斬が最も得意とする戦法だ。
「お前の教え子たちは、別の場所で戦っているようだな」
再不斬の声が響く。
「お前が俺に気を取られている間に、あのガキどもがどうなるか、楽しみだな」
カカシの表情が引き締まった。
「……余計な心配は無用だよ」
「強がりか?」
「いや」
カカシは静かに答えた。
「君の相手は僕だ。よそ見をしている暇があるのかい?」
再不斬の気配が消えた。
次の瞬間、背後から殺気が迫る。
カカシは振り返りざまにクナイを構えた。
金属音が霧の中に響く。
再不斬の首斬り包丁と、カカシのクナイが激突していた。
「捕まえたぞ!」
再不斬が力を込める。
カカシは押し返されながらも、相手の腕の動きを見極めた。
そして、わずかに身体をずらし、再不斬の力を横へ流す。
「何っ!?」
カカシは再不斬の懐へ潜り込んだ。
肘が胸部へ叩き込まれ、再不斬が後退する。
カカシは追撃のために踏み込んだ。
戦いの流れは、少しずつカカシへ傾き始めていた。
しかし、再不斬もまた、霧隠れの鬼人と呼ばれた男だ。
この程度で倒れる相手ではない。
「……やるじゃねえか、カカシ」
再不斬は口元を歪めた。
「だが、俺を倒したつもりになるのは、まだ早いぜ」
カカシは写輪眼を細めた。
「それは、こっちの台詞だよ」
二人の殺気が、再び激しくぶつかり合う。
5.決着へ
氷の鏡の中では、サスケが写輪眼を使い、ハクの動きを追い続けていた。
ナルトは外側から影分身を操り、ハクの逃げ道を塞いでいる。
二人の連携によって、ハクは少しずつ追い詰められていた。
それでも、ハクの動きは衰えない。
「……すごいですね」
ハクが静かにつぶやいた。
「二人とも、ここまで戦えるなんて」
「へへっ! オレたちはまだまだこんなもんじゃねーぞ!」
ナルトが笑う。
「調子に乗るな、ナルト!」
サスケが言い返した。
心は二人を見守りながら、いつでも援護できるよう身構えていた。
ハクは再び鏡の中を移動する。
千本が飛ぶ。
サスケはかわし、ナルトの分身が外から攻撃を仕掛ける。
その一瞬、ハクの動きがわずかに乱れた。
サスケの写輪眼が、その隙を捉える。
「そこだ!」
サスケが踏み込んだ。
心も、いつでも動けるように重心を落とす。
――あと少し。
しかし、心は分かっていた。
この戦いは、単に相手を倒せば終わるわけではない。
再不斬とハク。
二人の間には、単なる主従関係を超えた何かがある。
そして、カカシと再不斬の戦いも、決着へと近づいている。
霧の中で、二人の忍が最後の攻防を繰り広げていた。
「これで終わりだ、再不斬!」
カカシの声が響く。
「来やがれ、カカシ!」
再不斬が吠えた。
森の中に、再び激しい衝撃音が響き渡る。
二つの戦場で、決着の時が迫っていた。