◇カカシ視点――死の森へ◇
死の森へと続く道を、はたけカカシは駆けていた。
先ほどの報告を受けてから、胸の奥に嫌な予感が居座り続けている。
暗部から届いた追加報告は、予想以上に深刻なものだった。
発見された遺体は、草隠れの忍者三人。
そして――三人とも、顔の皮を剥がされていた。
顔面はのっぺらぼうのようになっており、身元の確認さえ困難な状態だったという。
さらに、死亡推定時刻は第二試験の開始よりもかなり前。
(……やっぱり、ただの受験者同士の争いじゃない)
カカシは速度を上げた。
草隠れの忍者が三人、顔の皮を剥がされた状態で殺されている。
そのうえ、死亡したのは試験開始前だ。
つまり、試験が始まるよりも前から、何者かが草隠れの忍者に成り代わっている可能性がある。
しかも、受験者に紛れ込んでいるのなら、試験会場の内部に侵入していることになる。
(下忍になりすまして、試験を受けている奴がいる……)
その考えに至ったとき、カカシの脳裏に一人の男の姿が浮かんだ。
蛇のような男。
そして、心が語ったという夢。
カカシはまだ、その話を完全には信じていない。だが、これまでの状況を考えれば、無視できるものでもなかった。
カカシは死の森の入口に近づくと、待機していた暗部と合流した。
「試験官のアンコからも報告がありました」
暗部が告げる。
「試験開始時、彼女は問題の草隠れの忍者三人を目撃していたそうです」
「……間違いないのか?」
「はい。アンコ自身が確認しています」
カカシは眉を寄せた。
アンコが見た三人は、確かに試験開始時には生きているように見えた。
だが、遺体の死亡推定時刻はそれより前。
顔の皮を剥がされた遺体が、別人の姿をしていたというのなら――。
(変化の術だけじゃない。顔そのものを利用して、本人になりすましているのか?)
考えられる術はいくつかある。
しかし、今は推測を重ねている場合ではなかった。
「アンコには引き続き試験を進行させてもらう。ただし、不審な受験者を見つけたら、無理に一人で対処しないよう伝えてくれ」
「了解しました」
「それから、死の森の中にいる受験者たちの位置を可能な限り把握してくれ。特に、俺の担当班だ」
カカシの声に、わずかな焦りが混じる。
第七班。
ナルト、サスケ、サクラ、そして心。
四人とも、決して弱くはない。
だが、相手が本当にあの男なら、話は別だった。
実力差だけの問題ではない。
相手は経験も知識も、そして残酷さも、子供たちとは比較にならない。
(頼むから、まだ接触していないでくれよ……)
カカシはさらに速度を上げた。
自分が到着するまで、どうか四人が無事でいてくれるように。
今はただ、それだけを願っていた。