教室の前に立った二人に、クラス中の視線が集まった。
片方は、木ノ葉の里ではすっかり有名になっている少年――うずまきナルト。
そしてもう片方は、見慣れない金髪の少年だった。
整った顔立ちに、透き通るような青い瞳。長いまつ毛と、どこか繊細な印象を与える顔立ちは、同年代の少年とは思えないほど美しい。
心は、教室を見渡した。
その瞬間だった。
「……え?」
女子の一人が、小さく声を漏らした。
「な、なに、あの子……」
「すっごくかっこよくない?」
「髪、金色なんだ……。目も綺麗……」
小さな囁きが、教室のあちこちから聞こえてくる。
心は気づいていた。
自分の顔が、前世で知っていたクラピカと瓜二つであることに。
顔立ちだけではない。髪の色も、目の色も、全体的な雰囲気も、鏡を見るたびに驚くほど似ている。
違うのは、ここが『HUNTER×HUNTER』の世界ではなく、『NARUTO』の世界だということくらいだ。
そして、どうやらこの顔立ちは、同年代の女子たちにとって相当に魅力的らしい。
「えっと……今日からこのクラスで勉強することになった、枢流陀心です。よろしくお願いします」
心は落ち着いた声で挨拶した。
すると、女子たちの反応が一段と大きくなった。
「く、枢流陀くん……!」
「声までかっこいい……」
「ちょっと、静かにしなさいよ!」
誰かが慌てて注意する。
しかし、注意した女子自身も、心から目を離せていなかった。
その様子を見ていたナルトは、隣で首を傾げた。
「なあ、心。なんか、みんなお前のことばっか見てねえか?」
「気のせいじゃないか?」
「いや、絶対そうだってばよ! オレが入って来た時、みんな変な顔してたのに!」
「……それは、まあ」
心は少しだけ言葉に詰まった。
ナルトの言いたいことは分かる。
彼が教室に入ったとき、クラスメイトたちの反応は決して歓迎一色ではなかった。九尾に関する事情を知らない子供たちであっても、大人たちの態度や噂から、ナルトに対して距離を置いている者はいる。
心もまた、枢流陀一族の生き残りという立場だ。
この先、同じような目で見られることもあるだろう。
だが、少なくとも今この瞬間、女子たちの関心は別のところに向いていた。
「じゃあ、次。うずまきナルトくん」
「おう!」
ナルトは勢いよく前に出た。
「オレはうずまきナルト! 将来は火影になって、里の全員に認めさせてやるんだってばよ! よろしくな!」
元気いっぱいの自己紹介。
しかし、返事はまばらだった。
「火影って……」
「また言ってる」
そんな囁きが聞こえる。
ナルトの笑顔が、一瞬だけ曇った。
心はそれを見逃さなかった。
「ナルトの言うとおりだよ」
心が口を開く。
「俺も、強い忍者になりたいと思っている。だから、ここで学べることを全部学ぶつもりだ。みんな、よろしく」
そう言って、心はナルトの隣に戻った。
ナルトは一瞬ぽかんとしたあと、すぐに笑顔を取り戻す。
「へへっ。そうだよな!」
教師は二人の様子を見て、小さく頷いた。
「よし、二人とも席につけ。席は……空いているところを使ってくれ」
心とナルトは教室を見回した。
そのとき、心の目に一人の少年が映った。
黒髪に黒い瞳。整った顔立ちで、周囲から少し距離を置くように座っている少年。
うちはサスケ。
原作で知っている、うちは一族の生き残りだ。
そして、女子たちの視線を一身に集めている人物でもあった。
「サスケくん、今日もかっこいい……」
「やっぱりサスケくんが一番よね!」
そんな声が聞こえる。
なるほど。
心は内心で納得した。
確かにサスケは整った顔立ちをしている。クールな雰囲気も相まって、女子人気が高いのはよく分かる。
だが――。
「……あの子、誰?」
心の方を見つめながら、女子たちがひそひそと話している。
「サスケくんと同じくらいかっこよくない?」
「えーっ、私は枢流陀くんの方が好きかも……」
「ちょっと! サスケくんが一番に決まってるでしょ!」
「でも、枢流陀くんもすごく素敵じゃない!」
早くも意見が割れていた。
心は、できることなら目立たずに過ごしたかった。
しかし、こればかりは自分でどうにかできる問題ではない。
顔は生まれつきなのだから。
「心、こっち空いてるってばよ!」
ナルトが手を振っている。
心は彼の隣の席に腰を下ろした。
「ありがとう」
「へへっ! これから一緒に勉強できるな!」
「ああ。よろしく頼む」
そのやり取りを、少し離れた席から見つめる少女がいた。
長い金髪を高い位置で結んだ、明るい雰囲気の少女。
山中いのである。
彼女は、つい先ほどまで教室の中にいる黒髪の少年――サスケを見つめていた。
サスケは格好いい。
それは、いのにとって疑いようのない事実だった。
ところが。
心が自己紹介をした瞬間、いのの中で何かが弾けた。
(な、なに……あの子……!)
青い瞳。
柔らかな金髪。
すっと通った鼻筋に、整った顔立ち。
それでいて、サスケのような近寄りがたい冷たさはない。落ち着いた物腰の中に、優しさが感じられる。
(か、かっこいい……!)
いのは思わず胸元を押さえた。
(ちょっと待って! 私、サスケくんが好きだったんじゃ……!)
もちろん、サスケへの憧れが消えたわけではない。
しかし、目の前に現れた新しい存在が、いのの心を強烈に揺さぶっていた。
しかも、心はナルトを見下すことなく、自然に彼の隣に座っている。
その姿が、いのには妙に印象的だった。
(優しい……。顔がいいだけじゃなくて、性格までよさそう……!)
「いの、どうしたの? 顔が赤いわよ」
隣にいた春野サクラが、不思議そうに尋ねた。
「な、なんでもないわよ!」
「ふーん?」
サクラは心を見て、それからサスケへ視線を戻した。
今のところ、彼女の関心は相変わらずサスケに向いている。
だが、いのの心には、すでに新しい嵐が吹き始めていた。
――枢流陀心。
彼はまだ知らない。
自分が、この教室の女子人気を二分する存在になろうとしていることを。
◇初めての授業◇
自己紹介が終わると、教師は黒板に今日の授業内容を書き始めた。
「今日は忍者学校で学ぶことについて説明する。その後、基礎的な体術とチャクラの扱いを確認するぞ」
体術。
チャクラ。
その言葉を聞いた瞬間、心の意識が切り替わった。
(ようやく、本格的に学べる)
これまでは独学が中心だった。
体力づくりや走り込みはできても、正しい体術の型や実戦で使える動きには限界がある。チャクラについても、シカマルから基本を教わったものの、体系的な知識はまだ不足していた。
忍術に至っては、まともに使えるものがない。
焦るつもりはない。
だが、学べる環境が整った以上、全力で吸収するつもりだった。
「まずはチャクラについてだ。忍術を使うには、体内の身体エネルギーと精神エネルギーを練り合わせ、チャクラを生み出す必要がある」
教師の説明を、心は一言も聞き漏らさないように集中して聞いた。
すでにシカマルから聞いていた内容もある。
しかし、独学で理解したつもりになっていることと、正確な知識として身につけることは違う。
心は説明を聞きながら、自分の中にあるチャクラの感覚と照らし合わせていった。
「それでは、実際にチャクラを練る練習をしてみよう」
周囲の子供たちが目を閉じる。
心も静かに目を閉じた。
身体の内側に意識を向ける。
身体エネルギー。
精神エネルギー。
それぞれを意識し、混ぜ合わせる。
(……これか)
以前よりも、はっきりと感覚がつかめる。
まだ不安定ではあるが、チャクラを練ること自体はできていた。
「おっ、できたってばよ!」
隣からナルトの声が聞こえた。
「……ナルト、声が大きい」
「えっ? あっ、わりぃ!」
教師に睨まれ、ナルトは慌てて口を閉じた。
心は思わず笑みを浮かべる。
ナルトは不器用だ。
集中力も、今の段階では決して高いとは言えない。
それでも、できたことを素直に喜べるところは彼の長所だと思った。
ただし――。
「うずまき、チャクラを練ることと、安定して扱えることは別だ。次は落ち着いてやりなさい」
「はーい……」
ナルトは肩を落とした。
心も、教師の言葉を胸に刻む。
チャクラを練れるだけでは足りない。
必要な量を、必要な場所へ、必要なだけ流す。
その精度を高めなければ、実戦では役に立たない。
授業が進み、今度は簡単な体術の確認が始まった。
基本の構え。
踏み込み。
拳の出し方。
受け身。
心は教師の動きをじっと観察した。
そして、実際に身体を動かす。
最初の動きはぎこちなかった。
前世の知識があるからといって、この世界の身体が勝手に動いてくれるわけではない。知識と技術は別物だ。
しかし、一度教わった動きを、二度目には修正できた。
三度目には、さらに無駄が減った。
四度目には、教師から指摘される部分が明らかに少なくなった。
「……ほう」
教師がわずかに目を細める。
心自身も、その変化を感じていた。
(覚えるのが早い……?)
単に集中しているから、というだけではない。
見た動きを頭の中で分解し、身体の使い方を理解して、すぐに修正する。
それが、驚くほど自然にできていた。
もちろん、最初から完璧ではない。
筋力も経験も足りない。長年修練を積んできた者と比べれば、まだまだ未熟だ。
それでも、学ぶたびに確実に上達している。
その感覚が、心にはあった。
(これは……面白いな)
もっと学びたい。
もっと強くなりたい。
純粋に、そう思った。
そして、その日の授業の終わり。
「今日の体術の基礎確認で、最も安定していたのはうちはサスケだった」
教師の言葉に、教室がざわついた。
「さすがサスケくん!」
「やっぱりすごい!」
サスケは特に反応せず、静かに座っている。
それがまた女子たちの歓声を呼んだ。
だが、教師は続けた。
「ただし、枢流陀も初めてとは思えないほど、動きの修正が早かった。今後の成長に期待したい」
今度は、心に視線が集まった。
「えっ、心くんもすごいの?」
「サスケくんと競えるのかな?」
「二人ともかっこいい……!」
心は困ったように頭をかいた。
サスケは初めて、はっきりと心を見た。
黒い瞳と青い瞳が、短い間だけ交差する。
サスケは心の顔を見て、それから教師の言葉を思い返すように目を細めた。
「……お前、体術は初めてなのか?」
授業が終わったあと、サスケが声をかけてきた。
「ああ。基礎的な鍛錬はしていたけど、きちんと教わるのは今日が初めてだ」
「そうか」
サスケは心の足元から上半身まで、さりげなく観察した。
「動きを覚えるのが早いんだな」
「サスケも、かなり上手かったよ」
「……当然だ」
いかにもサスケらしい返答だった。
心は苦笑する。
「俺も負けないように頑張るよ」
「好きにしろ」
サスケはそう言って、踵を返した。
だが、心は気づいていた。
彼は心に興味を持ったのだ。
ただ顔がいいだけの転入生なら、サスケはわざわざ話しかけたりしないだろう。
心は、サスケにとって初めて現れた、同じ場所を目指すかもしれない相手だった。
そして心にとっても、サスケは絶好の目標になる。
原作を知っているからこそ、彼の才能はよく分かっていた。
(この時点でも、かなりの実力だな)
だが、心はそこで満足するつもりはなかった。
この世界で生き残るために。
自分の一族について知るために。
そして、二度目の人生を後悔なく生きるために。
強くなる必要がある。
そのためなら、どんな努力も惜しまない。
◇山中いのの決意◇
放課後。
心とナルトが教室を出ようとしたとき、明るい声が響いた。
「あ、あのっ!」
二人が振り返る。
そこに立っていたのは、金髪の少女だった。
山中いの。
彼女はいつもより少し落ち着かない様子で、心を見上げていた。
「枢流陀くん、だよね?」
「うん。君は?」
「や、山中いの! よろしくね!」
「ああ、よろしく。いの」
心が自然に名前を呼ぶ。
それだけだった。
たったそれだけなのに。
「っ……!」
いのの顔が、みるみる赤くなった。
(名前、呼んでくれた……!)
普段のいのなら、男子相手でも物怖じしない。
気に入った相手には積極的に話しかけるし、自分の魅力にもそれなりの自信がある。
しかし、心を前にすると、なぜか調子が狂う。
顔がいい。
それは間違いない。
けれど、それ以上に、心の態度が自然だった。
自分を特別扱いしているわけでもないし、ぞんざいに扱っているわけでもない。
ただ、一人の友達として接してくれる。
その距離感が、いのにはたまらなかった。
「えっと……心くんって、何が好きなの?」
「そうだな。鍛錬と、読書かな」
「ど、読書! 私も本は好きよ!」
実際には、いのが本当に好きなのは美容や流行に関するものが中心だった。
だが、今はそんなことを考えている余裕がない。
「そうなんだ。今度、おすすめの本があったら教えてくれないか?」
「も、もちろん!」
いのは勢いよく頷いた。
心は微笑んだ。
「ありがとう。楽しみにしてるよ」
――撃ち抜かれた。
いのの心は、完全に撃ち抜かれていた。
(なに、今の笑顔……!)
顔を両手で覆いたくなるのを、必死にこらえる。
隣では、ナルトが不思議そうに二人を見ていた。
「なあ、いの。お前、なんか顔赤くねえか?」
「う、うるさいわね!」
「ええっ!? なんでオレが怒られるんだってばよ!?」
「ナルトは黙ってて!」
「ひでーってばよ!」
心は二人のやり取りを見て、楽しそうに笑った。
その笑顔を見て、いのはさらに顔を赤くする。
(だ、だめ……! 心くん、笑った顔も素敵すぎる……!)
そこへ、サクラがやってきた。
「いの、何してるの? 早く帰ろうよ」
「さ、サクラ!」
いのは慌てて振り返った。
「べ、別に何でもないわよ!」
「何でもないって顔じゃないけど……」
サクラは心を見た。
整った顔立ちの少年。
確かに、女子たちが騒ぐのも分かる。
しかし、サクラの視線はすぐに別の方向へ向いた。
廊下の先を歩いていく、黒髪の少年。
「サスケくーん!」
サクラはぱっと表情を輝かせて、そちらへ駆けていった。
いのは、その背中を見送った。
いつもなら、サスケのことでサクラと張り合っていたはずだ。
ところが今は、違う。
(……ごめん、サクラ)
いのは心をちらりと見た。
(私、心くんのことが気になっちゃった……!)
まだ恋と呼ぶには早いのかもしれない。
それでも、いのの中で心が特別な存在になり始めたのは、間違いなかった。
◇才能の片鱗◇
それから数日が過ぎた。
心の学校生活は、予想していたものとは少し違っていた。
まず、女子たちの視線がすごい。
朝、教室に入れば挨拶が飛んでくる。
休み時間になれば、女子たちが何かと理由をつけて話しかけてくる。
そして、その中心にはいつも、うちはサスケがいた。
サスケは相変わらず圧倒的な人気を誇っていたが、心の登場によって女子たちの間には新たな勢力が生まれていた。
「私はサスケくん派!」
「私は心くん派!」
「どっちも素敵じゃない!」
そんな会話が、教室のあちこちから聞こえてくる。
いのは、当然のように心くん派だった。
「心くん、おはよう!」
「おはよう、いの」
「今日も髪、綺麗ね!」
「ありがとう。いのも綺麗に整えてるね」
「えっ……そ、そう!?」
たった一言褒められただけで、いのは一日中機嫌がよくなった。
それを見たサクラは、何度も首を傾げた。
「いの、最近どうしたの?」
「な、何が?」
「サスケくんのこと、あんまり見てないじゃない」
「そ、そんなことないわよ!」
いのは否定した。
だが、視線は自然と心の方へ向いてしまう。
サスケが格好いいことに変わりはない。
しかし、心には心だけの魅力があった。
そのことを、いの自身が一番よく分かっていた。
一方、当の心は女子人気に戸惑いつつも、授業には真剣に取り組んでいた。
そして、その成果は少しずつ現れ始めていた。
体術の授業では、最初こそサスケに一歩及ばなかった。
しかし、教わった動きを何度も復習し、自分の苦手な部分を分析して修正していくうちに、差は急速に縮まっていった。
チャクラの扱いも同じだった。
最初は不安定だったチャクラの練り方が、徐々に安定していく。
忍術の理論を学べば、仕組みを理解するのが早い。
もちろん、理解しただけですぐに術を使えるわけではない。
印を結ぶ速度も、チャクラを制御する精度も、まだ鍛える必要がある。
それでも、心は一度学んだことを無駄にしなかった。
分からないことがあれば質問する。
教わったことは、その日のうちに復習する。
うまくいかなければ、何が原因なのかを考える。
前世で得た知識も、役立つ場面では積極的に活用した。
その積み重ねが、周囲にも見える形になっていった。
「今日の体術の組み手は、うちはと枢流陀を組ませる」
教師がそう告げたとき、教室がざわめいた。
「サスケくんと心くん!?」
「えっ、どっちが勝つの?」
「絶対サスケくんでしょ!」
「でも心くん、最近すごく上達してるよ!」
女子たちの声を聞きながら、心は静かに立ち上がった。
サスケも席を立つ。
二人は訓練場の中央で向かい合った。
「よろしく、サスケ」
「ああ」
短い返事。
互いに構えを取る。
「始め!」
教師の合図と同時に、サスケが踏み込んだ。
速い。
初めて組み手をしたときより、動きがよく見えるようになったとはいえ、サスケの反応速度は優れていた。
鋭い踏み込みから、心の胴を狙って拳が飛んでくる。
心は半歩下がって避け、相手の腕の動きに合わせて身体をひねった。
反撃。
サスケはすぐに身を引き、心の拳をかわした。
そのまま足を払おうとする。
心は跳び上がって回避し、着地と同時に距離を取った。
「……へえ」
サスケが小さく呟く。
今度はサスケから仕掛けた。
拳、蹴り、フェイント。
心は一つひとつの動きを見極め、受け流し、避けていく。
すべてを防げるわけではない。
肩に軽い一撃を受けた。
だが、心もサスケの防御の隙を見つけ、腕にタッチすることに成功した。
互いに決定打を許さない。
周囲の子供たちが、いつの間にか静かになっていた。
そして――。
「そこまで!」
教師の声が響いた。
二人は同時に距離を取った。
「引き分けとする」
「ええっ!?」
驚きの声が上がった。
サスケは息を整えながら、心を見た。
「前より動きがよくなったな」
「サスケのおかげだよ。君と組むと、自分の足りないところがよく分かる」
「……そうか」
サスケの口元が、ほんのわずかに動いた。
笑った、と言えるほどではない。
しかし、心に対する態度が少し変わったことは確かだった。
サスケは心を、単なる転入生ではなく、競い合える相手として認め始めていた。
教師もまた、二人を見比べて感心していた。
数日前まで、心の体術は基礎を覚え始めた段階だった。
それが今では、クラスで常に一番の成績を取っているサスケと互角の組み手をするまでになっている。
これは、ただの努力だけで説明できる成長速度ではなかった。
枢流陀一族の血が関係しているのか。
あるいは、心自身が持つ資質なのか。
今の段階では、誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは――。
心は、学べば学ぶほど強くなっていた。
そして、その成長はまだ始まったばかりだった。
心は知らない。
自分の瞳に秘められた力が、これからどれほど大きな可能性を秘めているのかを。
そして、サスケと並ぶ存在になりつつある自分を、女子たちだけではなく、里の大人たちも少しずつ注目し始めていることを。
教室の隅では、奈良シカマルが頬杖をついていた。
「……めんどくせぇことになりそうだな」
彼は心の成長を見て、そう呟いた。
もっとも、その目にはほんの少しだけ、興味の色が浮かんでいた。
新しく現れた金髪の少年。
見た目だけではなく、頭の回転も、学習能力も、どうやら並外れているらしい。
面倒事は嫌いだ。
だが、面白いものを見逃すのも、それはそれで退屈だった。
心が木ノ葉の忍者学校に入学してから、まだそれほど時間は経っていない。
それでも、彼の存在は少しずつ、確実に周囲を変え始めていた。
――そして、心自身の運命もまた、静かに動き始めていた。