機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜   作:凰人吹雪

1 / 4
プロローグ

「ほんっと鬱陶しいわね!あんたたち!」

 ヘルメットの中で吠える少女がレバーを引く。視界に広がる黒の中にキラキラと光るものが無数に見えるが、それに気を向ける余裕はない。

 「お嬢様、優雅さが目減りしておりますよ」

 「うっさい!ああもう、ほんっと腹の立つったら!」

 機体の加速に合わせ、視界が流れる。飛び回る砲塔を操り、鈍い輝きを放つ剣を振り下ろす。その一撃に、ありったけの苛立ちを込めて。

 「当たったらあぶねぇだろうが!」

 「そうだそうだ!観念してその機体よこしやがれ!」

 オープンチャンネルの呼びかけには舌打ちを返し、しかし通信を繋ぎはしない。

 「おめぇらのことも俺たちが女の幸せってもん教えてやるよ!」

 六機が連携して、フェイントを交えながら肉薄する。

 視界に広がる深緑の一つ眼に、少女はヘルメットの中でニヤリ。

 飛び回る砲台が突如停止、射線をクロスさせて殺し間を作る。

 「堕ちろ変態どもッ!」

 伸びる光が、正確にその一つ眼を捉えた。

 

 コズミックイラ七三年、地球とプラントの争いがひとまず停止し、二年が経過した。

 世界は戦争を止め、向けあった銃を下ろした。だが、それは決して互いを許し合ったことを意味しない。

 そして、宇宙では、民間、軍を問わず艦を襲い、略奪する宇宙海賊が存在しており、平和へと向かう世界の中にも、まだ争いの種はいくらでも潜んでいるのであった。

 

 灰の機体を駆る少女、天海織衣(あまみおりえ)もまた、小型艦に居住し、宇宙を住処としているが、普段過ごしている宙域で、少人数の宇宙海賊に目をつけられ、執拗に狙われていた。

 すでに六度目の会戦、運がいいのか悪いのか、何度撃墜しても奴らは脱出し、誰一人欠けることなく、襲いかかってくるのである。

 「連携ばっかり上手くなりやがって」

 「エネルギーは大丈夫ですか?」

 小さく呟く織衣に、ヘルメットのスピーカーから、軽やかな、しかし心配そうな声が重なる。

 「問題ないわ、千尋(ちひろ)。試作品とはいえ核エンジンが早々エネルギー切れ起こしてたまるもんですか」

 千尋、と呼ばれた少女がホッと一息つく。すでに戦闘開始から三十分、気が気ではないのだろう。

 「そこっ!」

 「う、うわぁっ!」

 一機撃墜したことを皮切りに、一機、また一機と撃墜する。

 残敵は三機、あと一息と織衣は小さく息を吐いた。

 「ち、ちっくしょお!」

 一機がやぶれかぶれになったのか、ビームクローを構えて突撃してくるのを感じ取り、急旋回。振り向きざまに薙いだ剣が、敵機の腰を両断する。

 「あ、アニキー!」

 撃墜された機体のパイロットを回収していたのだろう、ちょこまかと動き回っていた機体のパイロットと思しき声がオープンチャットに響き渡る。

 「くっそお!これで勝ったと思うなよー!」

 被弾も少なく無事な二機が、捨て台詞を吐きながら急いで宙域を離れていく。

 「二度とくんなばーか!」

 その背に、初めて織衣はオープンチャンネルを開き、雄叫びを上げた。

 肩で息をしつつ、機体を艦が隠れているデブリへと向ける。

 

 これが織衣と、そして彼女の仲間たちの日常になりつつあった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。