機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜 作:凰人吹雪
「ほんっと鬱陶しいわね!あんたたち!」
ヘルメットの中で吠える少女がレバーを引く。視界に広がる黒の中にキラキラと光るものが無数に見えるが、それに気を向ける余裕はない。
「お嬢様、優雅さが目減りしておりますよ」
「うっさい!ああもう、ほんっと腹の立つったら!」
機体の加速に合わせ、視界が流れる。飛び回る砲塔を操り、鈍い輝きを放つ剣を振り下ろす。その一撃に、ありったけの苛立ちを込めて。
「当たったらあぶねぇだろうが!」
「そうだそうだ!観念してその機体よこしやがれ!」
オープンチャンネルの呼びかけには舌打ちを返し、しかし通信を繋ぎはしない。
「おめぇらのことも俺たちが女の幸せってもん教えてやるよ!」
六機が連携して、フェイントを交えながら肉薄する。
視界に広がる深緑の一つ眼に、少女はヘルメットの中でニヤリ。
飛び回る砲台が突如停止、射線をクロスさせて殺し間を作る。
「堕ちろ変態どもッ!」
伸びる光が、正確にその一つ眼を捉えた。
コズミックイラ七三年、地球とプラントの争いがひとまず停止し、二年が経過した。
世界は戦争を止め、向けあった銃を下ろした。だが、それは決して互いを許し合ったことを意味しない。
そして、宇宙では、民間、軍を問わず艦を襲い、略奪する宇宙海賊が存在しており、平和へと向かう世界の中にも、まだ争いの種はいくらでも潜んでいるのであった。
灰の機体を駆る少女、
すでに六度目の会戦、運がいいのか悪いのか、何度撃墜しても奴らは脱出し、誰一人欠けることなく、襲いかかってくるのである。
「連携ばっかり上手くなりやがって」
「エネルギーは大丈夫ですか?」
小さく呟く織衣に、ヘルメットのスピーカーから、軽やかな、しかし心配そうな声が重なる。
「問題ないわ、
千尋、と呼ばれた少女がホッと一息つく。すでに戦闘開始から三十分、気が気ではないのだろう。
「そこっ!」
「う、うわぁっ!」
一機撃墜したことを皮切りに、一機、また一機と撃墜する。
残敵は三機、あと一息と織衣は小さく息を吐いた。
「ち、ちっくしょお!」
一機がやぶれかぶれになったのか、ビームクローを構えて突撃してくるのを感じ取り、急旋回。振り向きざまに薙いだ剣が、敵機の腰を両断する。
「あ、アニキー!」
撃墜された機体のパイロットを回収していたのだろう、ちょこまかと動き回っていた機体のパイロットと思しき声がオープンチャットに響き渡る。
「くっそお!これで勝ったと思うなよー!」
被弾も少なく無事な二機が、捨て台詞を吐きながら急いで宙域を離れていく。
「二度とくんなばーか!」
その背に、初めて織衣はオープンチャンネルを開き、雄叫びを上げた。
肩で息をしつつ、機体を艦が隠れているデブリへと向ける。
これが織衣と、そして彼女の仲間たちの日常になりつつあった。