機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜 作:凰人吹雪
「くっそ、五時間も説教するなんて……」
翌日、長時間の正座により少し足を震わせながら工廠へと訪れると、
「なんでこんなツギハギなのよ!なに?雇い主さんは貧乏人なの?これで良く動かそうなんて思ったわね」
「し、仕方ないんスよ、純正品なんて手に入らねえし、技術も全体がつかめてねえんすから」
「……ん?」
聞き慣れない声と聞き慣れた声が扉の外にまで聞こえていた。
「おはようございまーす。アルバートさん?どうかした……の……?」
視界に映るのは工廠に似合わぬ純白のドレス。アルバートの前に仁王立ちし、エンジンを指差しているのは奇抜なレインボーで染まったショートカットの女性。
「アンタが雇い主?ちっちゃ!そんなナリでペダル届いてるの?」
「あ?」
一触即発の空気が流れ、アルバートの顔が一気に青ざめた。
「ち、ちょっと!アンタの方が小さいじゃないっすか!なにのっけから喧嘩売ってんスか!」
「アタシの栄養は全て脳に送られてるの。ああ、この子、駄肉に栄養吸われて頭悪いのね?可哀想ねえ」
握り拳を震わせる織衣を指差しながらせせら笑う推定少女。
「アルバート……ガキを入れて、良い場所じゃ、ない、でしょお?」
織衣は震える声で、彼女を無視してアルバートへと怒りを向ける。
「ち、ちが、違うんだって!ああもうなんでこうなった!」
アルバートの叫びが室内にこだまする。他の整備員たちは、巻き込まれないように遠巻きにしていた。
「この人、上が依頼して来てもらった技師なんだよ!」
「……は?このガキが?」
呆気に取られる織衣に、自慢げに胸を張る推定少女がニヤリと笑う。
「ガキ?訂正なさい。アタシはこれでもザフトの兵器開発に携わっていた、天才開発者、ロール・ペリエ様よ!」
その日の工廠は、室温管理が徹底されているにもかかわらずあまりに冷え切っていた。
「エネルギーが生み出せない?そんなのキャンセラーが悪さしてるからに決まってるじゃない。そんなところでつまづいてたの?」
「……だからそれを取り替えて……」
「悪さしてたのを近くに置いてたんでしょ?バッカみたい」
いちいち小馬鹿にするロールに、憤死しそうなほど青筋を立てる織衣。それをオロオロしながらアルバートが見守っていた。
が、小馬鹿にするだけあって、ロールは優秀であった。
「キャンセラーをここで一から作るのは無理ね。それを、修理するしかないわ。ジャンクの中に、キャンセラー積んだミサイルの残骸とかあったし、そこからパーツ代用して修理するわ。アンタたちはエンジンの出力周り整備しときなさい。データに目を通したけど、出力落としすぎ。核エンジンの意味がないじゃないの」
口は悪いがその手は止まることがない。
「……ええ、とはいえ出力を上げてもドラグーンくらいしか使わないけど」
「小型でも良いからビームライフル付けなさいよ。あとミサイル。そのうち絶対ビームの対策したモビルスーツ出てくるから」
研究者あがり、ということもあってか、指示も的確である。ただし、
「そんなに実弾武器使いたいなら、ロケットパンチつけましょ、ロケットパンチ。腕を改造して、マニピュレーターを射出したら次のマニピュレーターが飛び出すようにしたら困らないわ!」
趣味に生きすぎるきらいがあった。
「これなら、二日もあれば試運転まで回せるわ。まったく、揃いも揃って何やってんだか。わざわざ呼び出されて来てみれば、こーんな初歩で詰まってたなんて」
いつしか、ロールの純白だったドレスはオイルや埃で汚れ、額の汗を腕で拭えばそこにオイルでラインが描かれる。
「悪かったわね!自己流で開発したんだから、仕方ないでしょ!」
「不勉強を言い訳にするなっての!」
織衣が悪態で返すが、どこ吹く風。
しかし、朝は確かに冷え切っていた空気が、今は暑いほどに熱をはらんでいた。
「よっし、今日はここまで!ね、アンタ、伸縮して、しなるビームサーベルとか興味ない?」
「……ないわ」
「嘘だ!嬢ちゃんお前今一瞬楽しそうとか思ったろ!」
「思ってない、わよ?」
夕方には、どこか楽しげな会話が繰り広げられるようになっていたのだった。