機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜 作:凰人吹雪
ペダルを踏み込んだ瞬間、急激に加速するグレイチェイン。
「う、わっわっわっわっ!」
コックピット内では、織衣の叫びがこだまする。
「何やってんの!ペダルを蹴り込むな!お姫様のように扱いなさい!」
「お姫様を踏ますな!」
ヘルメットから聞こえるロールの声に怒鳴り返しながら、織衣は操作を調整する。
試運転を開始してすぐのこと。いつの間にか、ロールが機体の調整まで行っていたらしく、今までとは全く違う操作感に戸惑っていた。
「ピーキーすぎるわ!なんで!ここまでにした!言え!」
「核エンジンの出力が高まったんだから、それを活かしただけじゃない。小さくまとまってんじゃないわよ」
「限度があるわ!」
怒鳴りながら、試験すべき項目を一つ一つ潰していく。
特に大きかったのは、ドラグーンの運用方法だろう。
散々飛び回らせたドラグーンを機体に再接続。今までであれば、エネルギーの充填で、グレイチェイン本体のエネルギーが底をつき、システムがダウンしかねない行為だったが、
「うわ、ほんとに半分くらいしか減ってない……」
その減った半分も、時間の経過とともに急速に回復していく。
「当然よ!いろんなジャンクからパーツ集めたせいでそれが限界だけど、本来ならそこまでエネルギーが減ることもないんだから。ビームライフルとビームソード、ミサイルも目の前のデブリに向かって使ってみなさい」
「はいはいっと……」
シールドに内蔵されたビームライフルが光を放つ。着弾した巨大なデブリの表面には、
「クレーター……出力高すぎない?」
「連続で二発撃ったらシステムダウンするわ!やーっぱロマンよね!」
「何してくれてんの!?」
叫びながら、脚部に搭載されたコンテナからミサイルを放つ。
「う、く……」
いくつか逸れたものの、軌道を引き戻して着弾させる。
「ドラグーンと同様に思考誘導できるはずなんだけど?」
「勝手が、また違うっての……」
「ふぅん?ま、アタシは扱えないから、頑張って!」
ケラケラと笑う声に怒りを覚えつつ、手にしたビームソードを振り上げる。先の大戦で量産された対艦刀「シュベルトゲベール」をグレイチェインに合わせて出力を調整したものである。
「悪くはないけど、振りが重いわね」
「物理的に、反発が発生してるし。説明したじゃない」
「話に聞くのと!体感するのは!別だって話!」
叫びに合わせてレバーを操作して振り回す。哀れ、ただ浮遊していただけのデブリは、続けて行われた火器の試験の的となり、残骸すら消滅させられてしまった。
試運転を終え、織衣はアメノミハシラへと向かう。
「ふふん、どーよ?」
「……正直、見違えたわ。別の機体って言われても納得できるくらい」
素直に感嘆する織衣に気を良くしたか、ロールはそうでしょうそうでしょうと頷いてみせる。
「あなたが来なければ、グレイチェインの修理も進まなかったでしょうし、感謝してるわ」
「ふっふーん……あ、そうだ」
鼻高々に胸を張るロールが、人差し指を立てた。
「グレイチェインって名前、ダサいし変えましょ。せっかく生まれ変わったんだし」
「あ?」
「そうねえ。『ハイパーウルトラヴィーナスエレガント最強ゴッドプロヴィデンスゴッドオメガ』なんてどう?」
織衣の険しい表情が、みるみるうちに優しくなっていく。
「ありがとう。独創的な名前ね。だけど、戦闘中とか、通信の時に長いと困ることも多いから、遠慮しておくわ」
「えぇー。ま、アンタがそう言うなら仕方ないわね」
不満げにするロールに、優しい笑顔で織衣は続ける。
「話は変わるけど、もしあなたに子供が生まれた時にはすぐ連絡してちょうだい。この修理のお礼に、あなたの子供の名付け親になってあげる」
「いや、別にいらないけど」
「なってあげるから。未来の人々を導く私が。だから、必ず、絶対、すぐに連絡をちょうだい」
有無を言わさぬ織衣の勢いに、ロールはただ、コクコクと頷いて返すのであった。