機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜 作:凰人吹雪
ようやく開店休業を終え、織衣達は星の煌めく海へと漕ぎ出していた。
長時間の慣らしと言う意味も込めて、半日で帰るデブリ掃除のお仕事である。
試運転後、シールド内蔵型ビームライフルは取り回しを重視した調整に。それでも、ライフルと呼ぶには威力が高すぎるが。
「お嬢様、拾ってお金に変えなくて宜しいのですか?」
「いーのよ。今日は吟味してる時間もないし。ただのゴミ持ち込んでも仕方ないでしょ」
スターケージを隠せるようなデブリが見つからず、織衣は艦のすぐそばでトリガーを引き絞る。放たれたビームが、並んでいたデブリをまとめて消滅させた。
「千尋、前進するわ。ついて来て」
「はーい」
軽い返事でブースターを吹かす。織衣は宙域に浮かぶ危険なデブリ達を射程に収め消滅させつつ、ついでとばかりにドラグーンとソードドラグーンの慣熟も並行していた。
「う、むぅ……ビームライフルで狙いながらドラグーンとソードドラグーンに思考を回すって、結構クるわねぇ」
「無理はしないでくださいね?」
「いざ戦闘になった時に無理にならないように、今無理してるのよ」
飛び回りながら狙いをつけ、片や射撃を、片や突撃を。さらに自身はビームライフルで狙いをつける。言うは易いが、思考の移り変わりは目まぐるしい。
「あー、くそ、外した」
「はしたないですよ、お嬢様」
ビームライフルに思考を吸われあらぬ方向へ射撃してしまった気恥ずかしさに、思わず悪態を吐く。
「はいはい。気をつけまーす……っと」
大きめのデブリに狙いを定め、トリガー。
「うんうん、出力も安定してるし、ほんっと見違えたわ」
満足げに頷いていた織衣に、
「お嬢様!レーダーに感!所属不明八、マルフタです!」
「見えてる。回線は?」
エレーナの鋭い声に、余裕綽々に返した。
「反応なし……映像繋ぎます!」
ズームされた映像がコックピットに映し出され、ジンとゲイツ、ダガーの姿が見える。
「混成かぁ……海賊かしら。一直線に向かって来てるわね。千尋、後退開始して。私はちょっと声かけてくる」
「は、はい!」
「お願いします」
ペダルを踏み込み、急加速。オープンチャンネルに切り替えた。
「こちら、アメノミハシラ所属部隊。周囲のデブリ処理中なのだけど、所属不明のそちらは、どういった理由で近づいて来てるのかしら」
呼びかけには答えず。散開。ライフルが向けられ、さらに誘導兵器にロックオンされたことを示すブザーが鳴り響いた。
「問答無用ってこと?いいわ、そちらが仕掛けて来たのだから、遠慮はいらないってことね」
ダガーが背負ったコンテナからミサイルが打ち出されるのを視認。
織衣の顔に、獰猛な笑みが浮かんだ。
「誰だか知らないけど……化けて出てこないで頂戴ねっ!」
ペダルを踏み込み、さらにドラグーンを全機射出。スターケージへと向かうゲイツ三機へと向かわせる。自身は、正面へ。ペダルを踏み込み、切り込んだ。
ダガーのライフルが閃く。
「遅いッ!」
ペダルを踏み込み、回転。放たれたビームはグレイチェインの背面を通り過ぎた。
右腕を伸ばし、腰のシュベルトゲベールを引き抜く。
迫るダガー。刹那、二機が交差した。腰で分たれ、宙を泳ぎ、爆散。
「まず、一機っ!」
取り囲む四機の位置を確認しながら、意識はドラグーンへ。囲まれ、連携しながら撃ち落とそうと連射するゲイツのライフルを躱しながら、
「それじゃ、当たってあげられないわねっ!」
全方位から立て続けに放たれたビームの檻に囚われた三機のゲイツは逃げ場を失い、遅れて放たれた本命が直撃し爆散する。あと四機。
ジンが二機、慌てたように踵を返し、ダガー二機を置き去りにしようとする、が。
「返事の一つもしなさいよっ!」
仲間を見捨てる姿が、織衣の怒りを買ってしまった。
ダガーを飛び越え、逃げ背にミサイルをロック、放つと同時にダガーへソードドラグーンを射出。
回避しようと横に流れたダガー二機が、
「あら」
互いの進路を塞ぎ、衝突。そこを逃さず、ソードドラグーンがまとめて貫いた。
ジンが振り返り、迫るミサイルへマシンガンを放つ。
だがミサイルは射線を外れ、銃弾を躱す。
「そっちじゃないわよ」
一発をわざと射線へ戻す。命中、爆発。
その爆炎を目隠しに、別のミサイルが死角から回り込み、ジンを捉えた。
「……フン。……多分海賊だろうけど……気味が悪いわね」
吐き捨てる織衣だけが、その宙域に残された。
「お疲れ様です、お嬢様」
「こっちはレーダー反応ないけど、エレーナは?」
「ございません。アメノミハシラへは共有しておきましたが……」
一切反応を返さなかった所属不明機に、織衣と同じく薄気味の悪さを感じたエレーナが言葉を濁す。
「今日は、もう戻りましょうか。千尋、転回して。私は念の為直掩につくわ」
「わかりました!」
織衣は、所属不明機が来た方向をしばらく見つめ、首を振ると、スターケージへと機体を寄せるべく思い切りペダルを踏み込んだ。胸の内に浮かぶ、嫌な感覚を振り切るように。
アメノミハシラへと戻ると、工廠で図面を引いていたロールが織衣達の帰還にパッと顔を上げた。
「データ出しなさいデータ!機体から武装から、アタシ直々に総ざらいで……?」
織衣に手で制され、首を傾げていると、すぐにアメノミハシラの職員が工廠へと駆け込んできた。そのまま艦の前で、織衣と話し込み始める。
ピリついた空気を感じ、
「へぇ……」
ニヤリと笑うと、図面に視線を戻し、猛然と線を引き始める。
「戦争戦争また戦争。嫌になるわねー」
心底楽しそうに、図面の上でペンを踊らせた。