機動戦士ガンダムSEED GREYCHAIN 〜機動戦士ガンダムSEED二次創作〜 作:凰人吹雪
システム面のメンテナンスを終えグレイチェインから足場へと移ると、
「お嬢様、お疲れ様です」
「そちらも終わったの?」
「ええ、補充はつつがなく」
スターケージでエネルギーや酸素、食料の補充を管理していたエレーナが待っていた。
「アルバートさん、データの方はまた」
「おう、分析終わったら転送すっから、それに合わせてシステムいじってくれや」
「ありがとうございます」
メモをパタパタと振りながら去っていくアルバートの背に、織衣は深々とお辞儀をする。
「で、千尋は?」
顔を上げ、エレーナへと問いかける。その声には、わかっているけれど、と言わんばかりの棘があった。対するエレーナも呆れ顔である。
「いつものところです」
「はぁ……あの子は全く……迎え行くか……」
肩をすくめ、織衣はエレーナを伴って歩き出した。
アメノミハシラの外縁部、小さな個室の扉の前で、織衣は大きく深呼吸をする。
「いくか」
短く気合を入れて、扉横の開閉パネルに触れる。
個室は二重扉になっており、二枚目の扉も開くと、
「う……けほっ、けほっ……煙たっ」
個室には煙が充満しており、その中央では、千尋が椅子に座りタバコを咥えていた。
「え、織衣ちゃん?もう終わりました?」
早々に自身の担当業務、スターケージのシステムデータの吸い出しと送信を終えた千尋は、一人用の喫煙室に閉じこもっていたのである。
「何本、ゲホッ……吸ってんのよ!ケチらず換気ボタン押しなさいよ!」
「一回押すごとにお金かかるし……別に良いかなって……」
良いと思っているのは本人だけである。
「ああ、もう!」
「ま、待って!待ってぇ!」
換気ボタンに手を伸ばす織衣。それを阻止しようと片手で織衣の手を掴む千尋。
それを横目に、
「ポチッとな」
支払いの認証を通して、エレーナが押した。音を立てて煙が天井に吸われていく。
「あ、あああぁぁぁぁ……」
「何を残念そうにしてるのよ」
織衣が、悲しそうに排気口を見つめる千尋の後頭部を叩く。タバコの灰がポトリと落ちた。
「煙だって立派なタバコの成分なのにぃ……」
ため息と共に吐き出された煙が天井を這う。
「ため息吐きたいのはこっちよ。立派の意味を辞書で引き直してきなさい」
視界を埋め尽くす煙は無くなったものの、織衣とエレーナにとってはまだまだ刺激臭が強かった。
「えー……でも迷惑かけてないし……スターケージの中じゃ禁煙してるよ?」
「え、本気で言ってる……?」
織衣がチラリとエレーナに視線を向けるが、その表情には驚きが隠しきれていない。そっと織衣に耳打ちする。
「(もしかして、タバコの匂いが服に染み付いていて普段もタバコ臭いことに気づいていないのでは……?)」
「(ありうる……)」
そんな二人に見向きもせず、千尋はまた悲しげに天を仰ぐ。
「あぁ……まだまだあの煙も楽しめたのに……勿体無い……」
「病院、連れていきましょうか?」
「趣味と実益を兼ねてるのでお断りします!」
ここで交わす、いつものやり取りであった。