ビジュは雛森、刀は流刃若火で   作:けいち

3 / 3
ある死神からの視点

「氷雪系、流水系の斬魄刀持ちは小隊を組んで消火作業に当たれ!鬼道が得意な奴もだ!…この規模の火災だ。途中、息切れしないよう各小隊ごと、必ずローテーションを組むのを忘れるなよ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

「よし…行け!」

 

指示を出し終えると同時、現場は一気に動き出す。各々が己の責務を果たすべく。だがしかし…

 

(…動きが悪い)

 

この場の指揮権を預かる男は冷静にそう判断し、心の内で舌打ちをする。同時に、それも仕方のないことだとも考える。何せ消火訓練など受けたことのない人間がこの場の大半だ。その上、斬魄刀や鬼道どころか霊力すら持たない者も数多くいる。彼らはこの火災に際し、急遽召集された者達だ。それ故、男には彼らについての一切の情報がなく、部隊の編成にも困る始末。

 

「……後で上には文句を言われるなぁ…こりゃ」

 

一応最低限の指示は出したが本当に最低限だ。言ってみれば、先ほどの指示の中身は『お前らの持ってる情報で適当に小隊組んで事に当たれ』という、聞くものが聞けば丸投げ以外なにものにも聞こえないことだろう。

 

(…でもまぁ、仕方ないだろ)

 

本来であれば、それ専属の訓練を積んだ人間が事に当たる方が様々な面で圧倒的に効率がいい。特にこういった1分1秒が貴重な場面では、その練度が物を言う。現世では『プロの現場に素人が入ってくるな』というと「ブラックだ」「差別だ」と批判されるそうだが、現実的に見れば、それはある側面からしたら確かに的を得ている意見でもあるのだ。

 

(…だが、今回ばかりは規模が大き過ぎた。)

 

そうも言ってられないほどに。

何せ今に至っても火災の規模がまるで把握出来ていない。東の森は広く、深い。そのため、全体を把握しようとすれば必然、空からとなるのだが、炎の勢いと熱気で近付くことすら容易ではない。空でこれなのだ。地上など、言わずもがなだ。

 

故に場当たり的かつ消去法という、指揮を執る者としてはなんとも情けない理由により、地上からの遠距離による放水という術を選択せざるをえなかったのだが…

 

「…やはり手が足りないか」

 

完全にキャパオーバーだ。それもそうだろう。元々、専門部隊だけでは対処は不可能と判断された結果の急遽召集だ。それでもこの火災の規模に対しては焼け石に水というのは分かりきったことだった。なにせ目に映る範囲、その全てが何の比喩でもなく炎に包まれているのだ。

 

「くっ…せめて総隊長がいてくだされば…!」

 

「呼んだかの?」

 

「そ、総隊長様!」

 

時間とともに衰えるどころかより勢いを増す炎を前にし、祈るような気持ちで吐いた言葉が果たして天に届いたのか。急報を伝えに走らせた部下を伴い、男が最も会いたい人間がこの場に現れたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です(作者:プラチナムウィッチ)(原作:Fate/)

ところでマスター?私に肉弾戦をやらせようとするのはやめませんか?見てください。この細腕と細脚を。


総合評価:10689/評価:8.56/連載:8話/更新日時:2026年09月06日(日) 12:00 小説情報

秦こころ、ロックス海賊団の副船長です(作者:カラカラ侍)(原作:ONE PIECE)

普通の女子中学生だった少女は、ワンピースの世界に転生する。▼奴隷として地獄を見る中で、口にした悪魔の実で秦こころの姿に。▼表情を失った少女は、海の悪魔の船に乗ることに。


総合評価:2788/評価:8.37/連載:7話/更新日時:2026年09月01日(火) 21:43 小説情報

だって私、頭のおかしい女だもの!(作者:だら子)(原作:鬼太郎誕生ゲゲゲの謎)

龍賀家四女に転生してしまった人間が、あれやこれやと生存戦略を練り、逃げようとするも、上手くいかずに最前線送りになる話。


総合評価:5947/評価:8.95/短編:1話/更新日時:2026年07月06日(月) 20:20 小説情報

マコラマコマコ 異戒神将ミサカ!(作者:モリーマ)(原作:とある科学の超電磁砲)

前世の記憶を持ったまま、なぜかミサカシリーズの一体にTS転生してしまった主人公。▼しかも、転生したその日は――絶対能力進化計画によって、一方通行と戦う予定の日だった。▼逃げ場なし。▼勝ち目なし。▼転生特典らしきものも、特になし。▼追い詰められた主人公は、半ばヤケになって一方通行を挑発する。▼「ミサカは転生チートの恐ろしさを知りやがれと白髪モヤシを挑発します!…


総合評価:10472/評価:8.21/連載:15話/更新日時:2026年11月01日(日) 11:30 小説情報

この刃、未だ名を持たず(作者:テスト中)(原作:無職転生)

知識がないオリ主が新しい世界でなんとか生きていくお話。


総合評価:4335/評価:8.11/連載:4話/更新日時:2026年11月01日(日) 01:53 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>