半人半魔(兄)、死神になる   作:日向陰陽

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バージルの基本スペックは半人半魔時代を受け継いだと解釈していただけると
幸いでございます。


第1話 「北80区 更木」

―――俺がいつ生まれたのか、どうやって成長したのかは覚えていない。気づいたらそこにいて、いつも腹を空かせて渇きに飢えていた。自分でもみすぼらしい恰好をしている自覚はあった。食い物や飲み水は見渡す限り存在しなかった。いや、気づかなかったと言った方が正しい。ある時、枯れかかった樹をめぐって男と争いになった。動かなくなるまで叩きのめした。返り血を舐めた。僅かに渇きが癒される気がした。強引に腕を引きちぎって溢れ出る鮮血を飲み干した。喉の渇きが癒えた。次は強烈な空腹感に襲われた。試しに千切った腕を指から順にかぶりついて口の中に入れた。骨まで平らげた。いくらか腹が満たされた気がする。ついでなので糞と小便がこびりついている部分以外全てを食った。新たな食糧と飲料の調達方法を覚えて気分が良くなった。

 

こうして腹が減って喉が渇いてはうろついている住民を襲って食って血を飲み干した。それでも俺は満足しなかった。心の底から湧き出るような暴力衝動に抗えなかった。そして気の向くままに住民を襲った。可能な限り強そうな者を選んだ。完膚なきまでに叩きのめした。ついでに食って血を飲み干した。そして俺に恐れをなした住民共が徒党を組んで俺に襲い掛かった。俺の記憶に染み付いている技を駆使して迎撃した。体が自然に動く。片っ端から叩きのめした。敢えて殺さなかった。死体は不味い。それが今までの食生活で学んだ唯一の知識だった。次第に誰も俺の前に姿を現す者はいなくなった。

 

暇つぶしに記憶のままに体術を鍛えていると

 

「お前が『死体食い』の者か。」

 

「人聞きの悪いことを言うな。俺が食うのは生きている者だけだ。死体は不味い。」

 

「同じことだ。このままでは魂の均衡が崩れる。悪いが消えてもらうぞ。」

 

「お前…美味そうだな。」

 

ふたりの男の内、ひとりが刀を抜く。小綺麗な身なり、肌艶と血色のいい肌、唾液が湧いては飲みこむ。トリックダウン…1種の瞬間移動で背後を取る、背中を思いっきり殴る。男が弓なりの体勢になる。そのまま両肩に担いで男の顔と両脚を掴んで下に引く。背中が砕ける音がする。石が露出した地面に頭から投げ落とす。頭蓋骨が砕け脳ミソが飛び散る。

 

「俺を殺したくばもっと強い奴を呼んで来い。」

 

もうひとりの男にそう伝えた。逃げるように去って行った。倒れている奴は食える部分だけ食って血を飲み干した。ついでに身ぐるみを剥いで身に纏った。刀に目を向ける。初めて見たはずなのに無性に振りたくなった。刀を握る。記憶に従うままに振り続けた。何もかも初めてなはずなのに自然に体が滑らかに素早く動いた。延々と刀を振り続けた。刀での鍛錬にも飽き始めた頃、またふたりの男が現れた。

 

「てめえか、護廷十三隊の者を殺ったのは。」

 

「誰だお前は?」

 

「俺は護廷十三隊十一番隊第四席の者だ。貴様如きに名乗る名は無い。」

 

「『隊』というからには隊長がいるんだろう? 何故隊長が来ない?」

 

「てめえ如きが隊長の相手になるだと? 思い上がるのも――――。」

 

先は言わせなかった。エアトリックで瞬時に間合いを詰め喉に噛みついた。鮮血が降り注いだ。新鮮な血肉を味わいながら返り血を浴びて垂れさがった前髪を手櫛で雑にかき上げる。俺に食われた男は首の骨を露出させながらひと言も発せず倒れた。気のせいか力が漲る感覚がする。もっと強い奴と戦いたかった。そいつの血肉を食らいたかった。

 

「隊長を呼べ。これ以上死人を出したくなければな。」

 

生き残ったもうひとりが逃げるように去って行った。伸ばし放題だった髪を刀で短く切った。だいぶスッキリした。改めて前髪をかき上げる。 刀を拾う。二刀流の構えを取る。何だかしっくりこない。それでも両腕で振り続けた。飽きたので鮮度が落ちない内に倒れている男を食った。

 

「てめえか‼ うちのもんを殺ったのは‼」

 

「お前か? 隊長というのは?」

 

「そうだ‼ 名は更木剣八だ‼ てめえを殺すもんの名だ‼ よく覚えてから死にやがれ‼」

 

「それは楽しみだ。」

 

男が無造作に片手で刀を振り下ろす。納刀したまま鞘で受け止める。刀を抜き眼帯を斬り落とす。

 

「どういうつもりか知らんが本気を出せ。でなければつまらん。」

 

「……そいつは失礼しちまったな‼ 言われた通り本気で殺り合うぜ‼」

 

男の内に秘める力が目に見えて溢れ出す。俺の気分も高揚する。それからは斬っては斬られ、突いては突かれ、お互いに返り血塗れだった。男の血を浴びる度に力が増していくような気がした。そして男の刀が俺の胸を貫く、たぶん心臓の辺りだろう。苦痛も死の恐怖も感じなかった。ただ、俺の中の何かが劇的に変わった気がする。益々気分が高揚する。

 

「何笑ってんだ…? 何で死なねえ…?」

 

「ククク…⁉ 俺も本気ではなかったらしい…⁉ 礼を言うぞ…⁉」

 

それからは考えるのを止めて本能のままに暴れまくった。視界に映る俺の腕の皮膚は鱗のように変質していた。どうでもよかった。ただひたすら目の前の男を殺したい衝動に駆られて暴れた。男の刀を掻い潜る。素早く踏み込み日輪脚…内回し蹴りからの回転飛び内回し蹴りの2連撃を当てた。男が頭上に吹っ飛ぶ。トリックアップ…頭上への瞬間移動で先回りし月輪脚…連続前転宙返りしながらの踵落とし…で叩き落した。顔面から叩きつけられる男の後頭部へ急降下しながら刀を突き刺そうとしたところに…

 

「「そこまで‼」」

 

四対の刀が阻んだ。ふたりの男が立っていた。

 

「いやぁー驚いたね! 本気の更木くんと殺り合える人材が流魂街にいたとはね‼」

 

「関心してる場合か、この男をどうやって連れていく?」

 

「何だお前らは、邪魔をするな。」

 

「ボクかい? ボクは護廷十三隊八番隊隊長、京楽春水。よろしく。」

 

「俺は護廷十三隊十三番隊隊長、浮竹十四郎。悪いが更木を運ばせてもらうぞ。」

 

「何故邪魔をする? そいつも覚悟の上だろう。」

 

「そりゃあ決闘でもないのに隊長を殺されたら有能な人材を失うし護廷十三隊総出で君を殺さなくちゃいけないからさ。相当な被害も出る。有能な人材っていうのは君も含めてだけどね。」

 

「俺に組織の狗になれと言っているのか? 舐められたものだ。」

 

「そんなことは言ってないよ。衣食住完備だし君はもっともっと強くなれる。それはボクが保証するよ。」

 

「……本当だろうな。ちなみにさっきの更木とかいう奴はどのくらい強いんだ?」

 

「うーん…純粋な力勝負なら2~3番目くらいかもしれないけど相手の相性ってもんがあるからねぇ…。13番目かもしれないしそれ以上かもしれないし何とも言えないよ。」

 

「……そうか、俺は何をすればいい?」

 

「ここで暮らしてきたってことは文字の読み書きとは無縁だろう? まずはそこから学んでもらうよ。ついでに社会常識ってやつもね。」

 

「面倒だが仕方あるまい。お前の言う通りにするとしようか。」

 

京楽春水という男について行った。真央霊術院とかいう学校を紹介された。入学する前に、当然だが風呂に入らされ歯磨き洗髪諸々をさせられた。下着から制服まで一式用意してもらった。

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