刑事の仕事は疲れますが、悪女のお姉さんに呼ばれたら喜んで行きます 作:晴矢会長
俺――浦田優馬、二十三歳。
知人から『数合わせ』という名目で、頻繁に合コンや飲みの席に駆り出される。
俺が呼ばれる理由は、相手側の女性の参加率とテンションが跳ね上がるかららしい。
ただ、それだけ……。
物心ついた頃から、誰かを必死に追いかけた記憶がない。
俺がそこにいる。
すると、向こうから自然と声が掛かる。
それが、俺にとって普通の日常なんです。
そうだな……。
一応、塚浦警察署捜査一課の刑事です。
刑事の仕事は疲れます! しんどすぎる!
塚浦警察署、捜査一課。
刑事たちはパソコンの画面を見ながら、キーボードを叩いていた。
「被害届、取り下げです!」
「こちらも証言撤回です!」
刑事たちの声が飛び交っていた。
泉の姉御が声を張る。
「山村!」
「はい!」
大きな声が返ってくる。
「被害届は?」
「取り下げです!」
その言葉で、空気が少し沈んだ。
泉の姉御が、また声を張った。
「大村、そっちは?」
「倉田保さん、内部告発しようとしていましたが、やっぱり間違いでしたって言っています。それで――」
「長い説明はいらない!」
泉の姉御が強く返した。
「す、すみません!」
刑事の肩が、少し強張った。
他の刑事が口を開く。
「係長!」
「なんだ?」
「被害届、取り下げです!」
刑事たちの顔が険しくなる。
「被害届、取り下げです」
「本人は会いたくないとのことです」
「会えません」
「引っ越しました」
いくつもの言葉が重なった。
係長の相島が口を開く。
「皆さん、一人ずつ報告してください。整理が難しくなります」
すると、渋谷泉が声を張った。
「私がまとめる! 浅間危機管理会社が関わった案件だけ、取り下げ、転居、証言撤回が続いてる。偶然じゃない!」
相島係長が頷く。
「こういう案件は、かなりハードルが高いですね」
「だから全員で洗う!」
泉の姐御が、係長の言葉に被せた。
渋谷泉、三十二歳。
――警部補。
客観視すると、美人の部類に入る。
でも、泉の姐御に興味なし。
ビジュアル、好みじゃないんで。
それより、泉の姐御、係長より偉そうじゃねーかよ。
なんで、あんたが仕切ってんだよ。
――とは、言えませんけど。
俺、気が弱いんで。
泉の姐御が苦手な理由は、捜査のたびに俺を連れ出すことだった。
どうやら、新米刑事の俺に仕事を教えたいらしい。
けど、気乗りしない。
給料が入れば、それでいいわけで。
だって、警察官って公務員でしょ。
マジ、しんどい。
俺は、なんで警察官になったんだっけ。
あっ、思い出した!
高校時代の担任が進路相談で勧めて、親が賛成したんだった。
そうだ、担任の武田のせいだ。
武田マイルール大統領!
今になって、腹が立ってきた。
……最終的に警察官の道を選んだのは、俺ですけどね。