刑事の仕事は疲れますが、悪女のお姉さんに呼ばれたら喜んで行きます   作:晴矢会長

2 / 2
我が国の御令嬢

塚浦警察署、捜査一課。

そのフロアの前方に、課長が立った。

「これから具体的に指示します」

課長は一拍置いて続けた。

「まず、過去三年分。浅間危機管理会社が関わった案件を全部洗って下さい。それから、被害届の取り下げ、示談、退職、転居、証言撤回。全部並べて、報告するように」

 

――浅間危機管理会社。

大企業だから、捜査も慎重に進めなければいけないらしい。

社会的信用ってものがあるんで。

まっ、そういうのは、どうでもいいけど……凶悪犯を捕まえに行くよりはマシかな。

 

こうやって、パソコンで調べる仕事の方が楽。

――けど、段々、目が疲れてきたな。

朝からずっと、これやってるんで。

 

 

俺は隣の席を見た。

武村さんが、真剣な顔でパソコンの画面と資料を見比べている。

ふと、泉の姉御に顔を向けた。

泉の姉御は立ち上がり、迷わず課長のデスクに歩いていく。

……嫌な予感がする。

 

泉の姉御はいつもの調子で言った。

「課長!」

課長は少し渋い顔になる。

「渋谷、どうした?」

「浅間危機管理会社。直接、行って話を聞いてきます!」

 

課長は、ため息をつく。

「自分が言ってること、分かってるか?」

泉の姉御は頷いた。

「分かってます。浅間は黒です。それなら、直接聞き出す方が速いと思います。では、行ってきます」

――やっぱり。

もう、次の展開、読めてます。

 

泉の姉御は小さく頭を下げて、その場を離れる。

「渋谷、一人で突っ込む気か?」

課長が声を上げる。

「一人じゃありません。浦田を連れて行きます」

 

 

泉の姉御は、そのまま俺のデスクまで来た。

「行くよ、浅間危機管理会社」

俺は、軽い笑みを作った。

「あのですね。僕、分からないことが多くて、まずリストを作成して。その、リストの中から――」

泉の姉御は、俺の言葉を遮る。

「浦田、あんた、今のままじゃ何も身に付かないよ! 仕事を覚えたかったら来て。経験を積むのが一番だから」

 

余計なお世話だよ!!!

独自ルール大臣! 

我が国の御令嬢! 

マイルールポリス! 

こだわりモンスター!

 

そうだな。

……泉の姉御に一番似合うのは、そう、我が国の御令嬢だな。

 

あっ、そうだ! 

『我が国の御令嬢、泉の姉御が人間国宝に認定されました!』

よし、これを小説のタイトルにしよう。

この小説は売れる! 絶対に売れる。

……けど、人間国宝って誰が認定するんだろう。

そこらへんは、どうでもいいか。

 

「浦田、なに考えてるか知らないけど、早く行くよ!」

泉の姉御は、扉に向かって歩き出した。

 

俺は後から追い掛けた。

「渋谷先輩! 待って下さい! 俺、真剣なんで!」

……いつものパターンだよ。

無理! もう限界!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。