——リリアの駄菓子屋、開店七日目。
来店した男の子に、リリアは型抜きを宣伝していた。
「新商品の型抜きはどうでしょうか」
男の子はカウンターに手を伸ばし、踵を上げ、リリアが手に持つ型抜きを見つめた。
「それはお菓子なの?」
「はい。遊んで食べられるお菓子です」
「どうやって遊ぶの?」
「今からお見せします」
リリアはカウンターに型抜きを置き、爪楊枝を手に持った。
真剣な表情で型抜きを始める。
しかし、爪楊枝を持つ手が僅かに震えていた。
「あっ」
「割れちゃったね」
「申し訳ありません。やり直します」
男の子はカウンターから手を離し、踵を床に着け、首を横に振った。
「いらない」
リリアは苦笑した。
「そう仰らずに。楽しいですよ」
レオンが咳払いを一つした。
「型抜きに成功した場合、絵柄に応じた駄菓子を一つもらえる」
男の子は振り向き、聞き返した。
「お兄ちゃん、それ本当?」
「ああ。騎士に二言はない。型抜きは銅貨一枚だが、どうする?」
男の子は手に持った駄菓子を見つめ、元の場所に戻した。
カウンターに駆け寄った。
「お姉ちゃん、型抜きください」
リリアは柔らかく微笑んだ。
「はい。銅貨一枚になります」
男の子は銅貨一枚をカウンターに置いた。
「動物と花がありますが、どちらがよろしいですか?」
「どう違うの?」
「動物は、銅貨五枚までの駄菓子、花は難しいので、銅貨十枚までの駄菓子と交換できます」
「見せて」
「はい。こちらになります」
リリアは左右の手に動物と花の型抜きを摘まみ、男の子に見せた。
「動物は他にもあるの?」
「はい。犬、猿、アヒル、熊、亀の五種類あります」
「それも見せて」
「はい」
リリアは右手のひらに五種類の型抜きを置き、手のひらを傾けた。
男の子は背伸びをし、型抜きを見つめる。
「アヒルちょうだい」
リリアはアヒル以外の型抜きを傍らに戻し、爪楊枝と一緒に男の子に手渡した。
「店先のテーブルをお使いください」
「うん」
男の子は手のひらに型抜きと爪楊枝を載せ、慎重に歩きながら外へ向かった。
リリアはため息をついた。
「レオン、申し訳ありません」
「気にするな。リリアを補佐するのも僕の仕事に含まれている」
男の子が駆け足で店内に戻り、リリアに言った。
「お姉ちゃん、さっきと同じ型抜きちょうだい」
「はい。銅貨一枚になります」
男の子は代金を支払い、リリアから型抜きを受け取り、外へ向かった。
「リリア、今のうちにアヒルの型抜きをしておけ」
「レオン、なぜでしょうか?」
「あの子は型抜きに興味を示した。すぐにまた失敗するだろう。成功したものを見せてやれば、本当に成功できるのかという疑念を晴らせる」
レオンは口元を緩めた。
「誰だって失敗で終わるのは悔しいからな」
「はい。わかりました」
「リリアは一度成功している。落ち着いてやれば失敗しない」
リリアは型抜きをしながら、ふふっと笑った。
「レオンにそう言われると、自信がつきました。ありがとうございます」
「礼には及ばない。リリアを補佐するのも」
「——僕の仕事に含まれている」
最後の言葉は、レオンとリリアの声が重なった。
リリアが微笑み、レオンは苦笑した。
彼女が型抜きを成功させた頃、情けない表情をした男の子が再び店内に戻ってきた。
「お姉ちゃん、あれすぐ割れちゃうよ?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと成功できます」
リリアが型抜きしたアヒルを見せると、男の子は目を見開いた。
「どうやったの?」
「強い力で一度に抜こうとせず、少しずつ削ることが成功の秘訣です」
少年は笑みを浮かべた。
「さっきと同じ型抜きちょうだい」
「はい。銅貨一枚になります」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークや評価、感想をいただけると、執筆の励みになります。