——リリアの駄菓子屋、開店初日。
「リリアの駄菓子屋開店しました。よろしくお願いします」
リリアはスカートの裾を少し上げ、会釈した。
ドアを開けて中に入り、顔を赤くしながらカウンターの奥で控えるレオンに尋ねた。
「レオン、どうだったでしょうか?」
「及第点だな。声から自信のなさが顕れていた」
「緊張しました」
リリアはカウンターの奥のイスに座り、客が来店するのを待った。
ドアが開かれ、鈴が鳴る。
親子が来店し、母親がリリアに尋ねた。
「このお店では何を取り扱っているんですか?」
「駄菓子です」
親子は店内を見て回り、何も買わずに出て行った。
リリアは肩を落とした。
来店しても、何も買わずに帰る客が増える一方だった。
*
——昼時になり、レオンはリリアに言った。
「リリア、店番を代わろう。食事を取ってくるといい」
リリアは浮かない表情で頷いた。
「レオン、よろしくお願いします」
重たい足取りで家に帰った。
*
——ベルフォード家のダイニングルームで、昼食を済ませた三姉妹はお茶を飲んでいた。
ヴィクトリアがリリアに声をかける。
「リリア、元気がないけど、体調でも崩したのかしら?」
リリアは首を横に振り、笑顔を作った。
「ヴィクトリア姉様、大丈夫です」
「そう」
ヴィクトリアはセシリアに話しかけた。
「セシリア、お店のほうは順調なのかしら?」
「まずまずです。そういうヴィクトリア姉さんはどうなんですか?」
ヴィクトリアは右頬に手を当てた。
「商売は難しいわね。お父様の後継者になれるか、今から不安よ」
「お姉様方、私はお店に戻ります」
リリアは席を立ち、足早に外へと向かう。
「リリアお嬢様、お待ちください」
足を止め、振り向くと、包みを持った使用人が近づいてくる。
「レオン様のお食事を用意したので、私もお供します」
リリアは柔らかく微笑んだ。
「私が届けるので、仕事に戻ってください」
「よろしいのですか?」
「はい」
「それでは、よろしくお願いします」
リリアはレオンの弁当を受け取り、店へ向かった。
*
——リリアの駄菓子屋に到着し、リリアは目を僅かに見開いた。
買い物して出て行く親子を見て、足早に店に入る。
「騎士様、このお店では何を売られているのですか?」
「上菓子をご存じですか。子どもが覚えやすいように、駄菓子に名を改めました」
母親は買い物カゴを手に持ち、子どもが急かすように駄菓子を入れる。
「騎士様、お会計お願いします」
レオンは駄菓子を紙袋に詰める。
「銅貨二十八枚です」
客は代金を支払い、紙袋を受け取った。
母親は息子に言った。
「一度に食べたらダメだからね」
「は~い」
リリアとすれ違った親子は笑顔で店を出て行った。
レオンに近寄り、カウンターに弁当を置いた。
「レオンの食事です」
「ああ。裏で食べるとしよう」
「レオン、一つ教えてください。私の何がダメだったのでしょうか?」
「客にとって、駄菓子は聞き馴染みのない言葉だから説明する必要があった」
「なるほど」
リリアは柔らかく微笑んだ。
「レオン、ありがとうございます。あとは私に任せてください」
「ああ」
レオンは弁当を持ち、店の裏手に移動した。
リリアはイスに腰かけ、来客を待った。
ドアが開かれ、鈴が鳴る。
客に何の店か尋ねられ、リリアは答える。
「上菓子をご存じでしょうか。子どもが覚えやすいように、駄菓子に名を改めました」
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