——リリアの駄菓子屋、開店四日目。
午前中にオスカーが来店し、リリアに尋ねた。
「リリア、調子はどうだ?」
「お父様、初日とは違い、お客様が減っているのです」
「だろうな。ヴィクトリアとセシリアも同じことを言っていた。レオンはどう思う?」
「はい。まだ店の認知度が低く、客の心も十分に掴めていないと思います」
オスカーは口元を緩めた。
「何か策はあるのか?」
「はい。開店前に依頼は済ませてあります」
オスカーは振り返り、開け放たれた入口を見た。
「明日、入口を改築しようと思う。壁際に置いてある駄菓子を動かしておいてくれるか」
「はい。お父様」
オスカーはその場を立ち去った。
リリアはレオンに聞いた。
「レオン、お客様が減っているのはなぜですか?」
「開店初日は物珍しさもあって来店する者がいた。客足が伸び悩んでいるのは、客の心を掴めなかったからかもしれない」
レオンは変わらぬ口調で続けた。
「もっとも、リリアの駄菓子屋の客層は子どもだから、彼らが足を運びたくなるものがあれば、流れは変わると思う」
「レオンは何を依頼されたのですか?」
「僕たちは駄菓子で商売をしている。だから、子どもが遊んで食べられる駄菓子をエルザに依頼した」
リリアは小首を傾げた。
「子どもが遊んで食べられる駄菓子ですか」
ため息をついた。
「レオンはすごいですね。私よりも商売の才能があります」
「一つ勘違いしないでほしい。何を売るかで迷っていたリリアに、僕は駄菓子屋を勧めた。これは僕の責任でもある」
「レオンのことは信頼しています」
リリアは膝の上で指先を握り締めた。
「私も何かお役に立てればと思ったのです」
レオンは猫背になったリリアの背中を見つめた。
「ああ。その時が来れば、リリアの力が必要になる。今日は早めに店を閉めて、駄菓子を移動させよう」
リリアは浮かない表情のまま返事をした。
「……はい」
*
——リリアの駄菓子屋、開店五日目。
本日は店の出入口を改築するため、定休日となった。
元上菓子屋の会議室で、リリア、レオン、グスタフ、エルザの四人が集まっていた。
グスタフが会釈する。
「騎士様、ご注文の品が完成しました」
「それで試したのか?」
「はい。何度か失敗を重ねましたが、ご覧ください」
グスタフは一枚の駄菓子をテーブルに置き、爪楊枝を片手に持った。
それは、薄い長方形の板状の菓子で、表面には動物の絵柄が溝になって刻まれている。
彼は型抜きを始めた。
やがて型抜きが終わり、笑みを浮かべた。
「騎士様、如何でしょうか?」
「リリア、見ていたな。キミにも型抜きをしてもらう」
「はい」
リリアは型抜きと爪楊枝を手に持ち、型抜きを始めた。
「あっ」
「難しいだろう?」
「はい。割れてしまいました」
「成功するまでやってもらう。役に立ちたいんだろう?」
「はい。わかりました」
リリアは真剣な表情で型抜きを再開する。
三人は固唾を吞んで見守った。
*
——昼頃になり、ついにリリアは型抜きを成功させた。
リリアは柔らかく微笑んだ。
「レオン、できました」
「ああ。型抜きは銅貨一枚で売る。この型抜きに成功した者は、絵柄に応じた駄菓子一つと交換する権利が得られる」
「これが、子どもが遊んで食べられる駄菓子の正体だったのですね」
「ああ。誤って食べてしまっても健康に問題はない」
レオンは口元を緩めた。
「リリアには子どもの前で型抜きをしてもらう」
「えっ!? 私がやるんですか?」
レオンは肩を竦めた。
「役に立ちたい——あれは僕の聞き間違いだったのかな」
「少し恥ずかしいですが、やります」
「ああ。リリアには期待している」
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