——リリアの駄菓子屋、開店六日目。
扉が二枚の引き戸になり、窓も大きくなった。
店内の中央には型抜き用のテーブルが置かれ、カウンターからでも見えるようになっている。
「レオン、どうでしょうか?」
「ああ。内装自体は悪くないと思う」
「それはどういう意味でしょうか?」
「型抜き用のテーブルを置いたことで、陳列できなくなった駄菓子を裏に置いている」
リリアは少し俯いた。
「ですが、型抜き用のテーブルも必要です」
「だから、外に出せばいい」
レオンは引き戸を開け、店先のベンチの前にテーブルを移動させた。
店内に戻ったレオンはリリアに言った。
「型抜きのためだけに、店内のスペースを圧迫するのは勿体ない。それに、ベンチの前に置いておけば、駄菓子を広げて食べることもできる。迷惑だったか?」
「私は型抜きのことばかり考えて、周りが見えていませんでした」
リリアは柔らかく微笑んだ。
「レオン、ありがとうございます」
「リリアが型抜きを見せる時はカウンターですればいい」
レオンは口元を緩めた。
「きっと面白いことになる」
「レオン、一体何を考えているのですか?」
「それよりも裏に置いてある商品を並べよう」
「わかりました」
レオンが店内の中央に商品陳列用のテーブルを置き、リリアが駄菓子を並べる。
親子が来店する。
「いらっしゃいませ」
母親は店内を見渡し、微笑んだ。
「母ちゃん、早く買おうよ」
「はいはい」
母親は買い物かごを持ち、子どもが急かすように駄菓子を入れていく。
「またこんなに入れて。虫歯になっても知らないよ」
「寝る前に歯磨きしているから大丈夫だよ」
「リリアさん、お会計お願いします」
「はい。……私の名前をご存じなのですか?」
「お店の名前がお嬢さんの名前になっているから、わかりますよ」
リリアは駄菓子を紙袋に入れながら耳まで赤くした。
「銅貨三十二枚になります」
母親が代金を支払い、リリアは紙袋を渡す。
「ありがとうございました」
「ありがとうね」
「母ちゃん、早く行こう」
「はいはい」
親子はその場を後にした。
リリアは胸に手を当てた。
「型抜きの宣伝を忘れていたな」
「はい……」
リリアは深呼吸を一つ挟んだ。
「突然名前で呼ばれたので、少し動揺してしまいました」
「店の名前を考えたのは僕だが、迷惑だったか?」
リリアは首を横に振り、振り向いた。
彼女は柔らかく微笑んだ。
「いえ、少し恥ずかしかったのですが、目標が一つ達成できました」
「目標?」
「はい。お客様に名前で呼ばれることです」
「……」
「レオン、聞いていますか?」
「ああ。目標があるのはいいことだな」
「これもレオンのおかげです。だから……」
リリアは前に向き直り、言い直した。
「いえ、何でもありません。次は型抜きの宣伝をしますので、安心してください」
「ああ」
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