黒の影従   作:御剣鎖刃

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ディアブロに対して超狂信者なそして無駄に使える眷属がいたら、というお話。

初投稿よろしくお願いします。


1話「召喚された悪魔」

ファルムスとの戦争で魂を刈り取った俺は、現在進化の眠りで意識を失いそうになっていた。

戦場で眠るなんて嫌だし、空間移動は自爆しそうだし、ランガに街まで運んでもらおう…。

 

「ランガ、居るか?」

 

「は、控えております、我が主よ!」

 

「ここに転がっている二人を捕縛し手出し厳禁と命じてヨウム達に渡してくれ」

 

その時、一人生き残った奴を見つけてしまった。魂を奪えなかったとなると放置しておけないな。

うーん…悪魔でも召喚して捕獲(最悪の場合足止め)でもさせるか。

 

「生き残っている者はどう致しますか?」

 

「それは別の者に任せる…」

 

供物はそこら中にある2万人分の死体全てだ。

眠気と戦いながら魔法不能領域(アンチマジックエリア)を解除し、召喚魔法を使う。

 

「供物エサを用意してやったぞ。出てこい悪魔。俺の役に立ちやがれ…!」

 

そろそろ詠唱が適当になってきた。こんなので召喚される奴は余程のもの好きか馬鹿だろうな…。

呼び出せたのは4体の悪魔。あれ、もっと呼べると思ったけど…まぁ魂を抜き取った人間の亡骸だし仕方ないか。

 

「おいお前ら、生き残った奴が一人いる。そいつを生かして捕らえて、このランガに届けろ…」

 

ランガにスライム状態で乗って命令する。

スライムに命令される大悪魔とかシュールだなぁ…。あこれダメだ思考がヤバい。この世界に来てから初めて感じる猛烈な眠気で頭が回らない。

 

「クフフフフ、これほどの供物、そして初仕事…光栄の極みで、少々張り切ってしまいそうです」

 

「…今後とも、お仕えしても宜しいのでしょうか?」

 

そんな感じに悪魔達は挨拶を述べていたが、俺は意識を失う寸前でほぼ聞き流していた。

 

「先ずは役に立つことを証明してみせろ。行け」

 

それだけ言うと、俺は気絶しながらテンペストに運ばれていった。

 

「クフフフ…容易いことでございます。我が主よ」

 

           *

 

新しい体にあったユニークスキルのおかげで生き延びていた魔術師ラーゼンは、物陰に隠れていた。

 

(なんなのじゃ、あの化け物は…。聞いておらんぞ……!魔物の国の主はスライムではなかったのか!?)

 

ファルムス王を助けるのだという忠誠心がなければ、今頃心が折られていただろう。

リムルがスライム状態に戻り、狼のような魔獣に運ばれていくのをラーゼンは気配を殺して見ていた。

その場に残ったのは4体の悪魔のみ。

 

(やはりあれが主だったようじゃの。あれだけの大魔法を連発すれば魔力が尽きるのも当たり前じゃろうて。…悪魔を召喚したのが護衛目的ならば、今なら王を救い出すチャンスがあるやもしれぬ!)

 

その考えは半分正解で半分不正解。

悪魔達は、既に召喚されてしまった。その悪魔達――――二柱の悪魔にとって、ラーゼン程度は単なる獲物でしかない。

召喚主に与えられた仕事を終わらせて褒めてもらう、そういう認識で生かされているだけの哀れな獲物でしかなかったのだ。

そんなこととはまだ知らず、ラーゼンは物陰から飛び出す。

次の瞬間、悪魔達の近くにいた上位悪魔(グレーターデーモン)が2体、ラーゼンの正面に立つ。

 

「ほぉ?空間転移かよ。お主等、グレーターデーモンにしてはかなりの古参のようじゃのう。」

 

グレーターデーモンは答えない。彼等は足止めしか命じられていないのだ。

―――――悠然と歩み寄る美しい悪魔から。

 

「クフフフフ、貴方を拘束させて頂きます。抵抗したければお好きにどうぞ。ただし、殺しはしませんが痛めつける事は止められておりませんから、ご注意を」

 

男とも女とも判断のつかない、美しく歪な笑みの悪魔。

 

「……」

 

その傍らに控える顔も見えない悪魔。

 

「ぬしが儂の相手をしてくれるのかのう?」

 

「相手?クフフ、これは面白い冗談ですね」

 

「何が冗談なものかよ、悪魔風情が!」

 

自身の実力を信じてラーゼンは堂々と言い放つ。

それを見て悪魔は楽しげに嗤った。

 

「クフフフフ。いいですね、これは楽しめそうです。食後の運動に、少し付き合って差し上げましょう」

 

見る者の魂の根源から恐怖を湧き上がらせる恐ろしい笑みを浮かべる。

静かに控えていた悪魔は上空に一瞬視線を向けた。

 

『我が主よ。あの羽虫は潰してきましょうか?』

 

『お前を使うまでもなく消えてもらうので大人しく控えていなさい』

 

『承知致しました』

 

戦闘を覗く不埒者の処遇を一秒未満で決めた二柱。それに気づかずラーゼンはフェイントを入れられたと勘違いする。

 

「なめるでないわ!核撃魔法:熱収束砲(ニュークリアカノン)!!」

 

元素系の奥義だったのだが、悪魔が手を翳した瞬間に屈折しどこかへと飛んでいく。

人間には聞き取れない小音だが、生物が消し飛ばされる衝撃音があった。

 

「不発じゃと…?チッ、こんな時に!!」

 

魔法失敗が起きたと認識したらしい。即座に悪魔から距離を取る。

 

「おや、今の魔法は中々お見事でしたが?」

 

「何を言うか!効果が発揮されねば意味が無かろう!」

 

「成程。もしも貴方の言う効果とやらが私を倒すという意味であれば、魔法に頼っていては達成できないと忠告して差し上げます」

 

不気味なほどの余裕。

 

「ほほう、言いよるわ。ならばこれでどうじゃ!精霊召喚:土の騎士(ウォーノーム)―――来たれ、根源たる大地の上位精霊よ!!」

 

持ちうる限り最強の召喚魔法を使ったラーゼン。英雄級の者にしか呼び出せないような上位精霊を現世に降ろす。

 

(魔法が不発でなかったなら、この切り札を出すまでもなかったんじゃがのう…。しかし、この悪魔は不気味じゃ。ここは油断せぬほうがよかろうて…)

 

目の前の悪魔だけでなく、配下らしき1体や後ろの2体も蹴散らす予定だった。

しかし。

 

「成程成程。“悪魔は天使に強く、天使は精霊に強く、精霊は悪魔に強い”。この三竦みの関係から選択するなら上位精霊を呼び出したのは正解ですね」

 

「ですが…若すぎます」

 

自分が相手をするまでもない雑魚だ、と言わんばかりの笑顔。

 

「レプリカ」

 

「御意」

 

控えていた悪魔が音もなく消えた。

 

「蓄積された経験が全く足りん。力だけの木偶坊など、我が主の前に立つ資格も無い」

 

若々しく、背筋が凍るような声が響く。

一瞬でウォーノームの鎧が斬り捨てられ、冷たい目を光らせた小柄な悪魔が核をパキリと噛み砕く。そして元いた位置に戻り跪いた。

これで勝てると確信していた切り札がたった一瞬で破壊された。

 

「馬鹿な!精霊じゃぞ!?上位精霊じゃぞおお!!」

 

驚愕して叫ぶラーゼンを無視して悪魔は平然と言う。

 

「魔法はもう結構。召喚主様より頂いたこの体をもっと試したいので、次は趣向を変えましょう」

 

パチンと指を鳴らし、広大な範囲の『魔法不能領域(アンチマジックエリア)』が無詠唱で発動する。

 

「さぁ、これで魔法は使えなくなりました。今度は物理的にお好きな攻撃をしてみてください」 

 

悪魔が魔法を封じる異常な行動に困惑したラーゼン。しかし迷いを振り払って臨戦態勢となり、ユニークスキル『乱暴者(アバレルモノ)』も起動して攻撃に出る。

 

「!?」

 

大木をもへし折る拳も蹴りも、完璧に受け流されていた。

魔人であり、ショウゴの肉体から空手の技すら自らのものとしたラーゼンを遥かに上回る技量で全攻撃を捌く。

その時ラーゼンは気づいた。気づいてしまった。

目の前の悪魔。黒い髪に2色のメッシュ、金の瞳と紅い瞳孔。眼球が黒い事を除けば人間にしか見えない容姿。

後ろに控えた悪魔も、一瞬見えた顔は異形の目をのぞけば人間そのものだった。

限りなく人に近い容姿。それは上位存在の証。

上位精霊を瞬殺できるということは、最低でも上位魔将(アークデーモン)級である証拠。

アンチマジックエリアという大魔法を無詠唱で発動できるのも、超越した知識と技量がある事を意味する。

そして二人の外見的特徴は古い伝承などで目撃談が報告されていた者と同じ。

下手に知識を研鑽していなければ察する事もなかっただろうに。ラーゼンは目の前にいる存在が何なのか理解してしまった。

 

ラーゼン(まさか…げ、原初の……!!)

 

その瞬間、ラーゼンは絶望し恐怖した。戦うことも逃げることすらもままならない、そんな遥か上の存在なのだと分かってしまって。

ドシャ、とその場に崩れ落ち気を失う。

 

「既に失神しているようです。戦意は欠片も残っておりません」

 

生命情報と感情を確認しこれ以上戦闘は不可能と判断する眷属―――レプリカ。

 

「はぁ、もう終わりですか…」

 

仕方がないと諦め、2体の上位悪魔にラーゼンを運ばせる事にした悪魔―――“原初の黒(ノワール)”。

 

初仕事を終えた事を召喚主に御報告しようと、悪魔達はその場を後にする。




名前:レプリカ

種族:悪魔族(上位魔将(アークデーモン)→悪魔公(デーモンロード))

称号:原初の模造品(レプリカント)
  影の女王

容姿:比較的小柄な女性型(必要なら変えられる)。
  黒髪を黒地に銀糸を編んだ紐で纏めている。
  トローチカットの黒曜石風のピアスを付けている。
  左目→赤白目に金目
  右目→黒白目に赤目

服装:灰色のコートを着てフードを被っている(下は黒いベストとシャツ、ショートズボン)。黒いマフラーが特徴。

性格:冷静で真面目、完璧主義者。自他共に認める人格破綻レベルの戦闘狂。死への恐怖という感情が欠落しており格上との戦いに快楽を見出している。ワーカーホリックな所がある。
  ディアブロとリムルに絶対の忠誠を誓っており命じられればどんな事でも喜んで実行する。ディアブロとの付き合いは非常に長く名を呼ばれただけで察し迅速に行動する。さすリムしようとすればできるが先にディアブロがやるし自制している。
  基本は敬語だが素は結構口が悪い。普段は冷徹な態度だが喜怒哀楽が無いわけではなく主と話す時は比較的分かりやすい。忠誠心がレベチすぎて自認が道具、主の魔王覇気を心地良いと思える程の狂信者。その一方で最も強い存在として戦いたいと戦闘狂が顔を出す事もある。遊びたがりの飼い犬である。

人物:ディアブロの従者として永く仕える先史種・大公爵の悪魔。永く無敗を誇る実力者でディアブロが唯一信頼している腹心。
  上級に進化してから定まるはずが先天的に「黒」だった事と異様な成長速度で上位魔将に駆け上がり、ディアブロが称号を略して呼んだ「レプリカ」が正式な個体名になった。



ユニークスキル
『推論者(ミチビキダスモノ)』…思考加速、並列演算、予測演算、法則操作、詠唱破棄、森羅万象
『堕落者(オチルモノ)』…影操作、魔力簒奪

エクストラスキル
『万能感知』『多重結界』『空間移動』『魔王覇気』

コモンスキル
『物質創造』『魔力操作』『超速再生』

耐性
『物理攻撃無効』『状態異常無効』『自然影響無効』『痛覚無効』『精神攻撃耐性』『聖魔攻撃耐性』

その他
武器『大鎌』…まるで死神が使いそうな自身の体躯より大きい鎌。
武器『鉤爪』…ディアブロの鉤爪と異なり植物のような異形に腕が丸ごと変形する。
武器『影刃』…ユニークスキルで実体化し形状を操作している。触れた対象のエネルギーを簒奪し吸収する事ができ、ある程度自律している
『魂の回廊』…念話は勿論、いつどこにいようとディアブロの元へ転移できる。互いの思考や感情を読み取り情報共有も可能。
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