無事にリムル様が魔王になられた。
激戦もあったがリムル様の戦う姿が見れた。ついでに魔王ミリムはクレイマン側を探るための演技だったらしい(うっかりで獣王国を吹き飛ばしたようだが)。
と、帰ってくる前に国民全員に出迎える準備もさせている。
「お帰りなさいませリムル様!」
「この度は“
喜びが溢れ出ている良い笑顔。
先ほどギィがリムル様に脅迫していたくだりで怒気を露わにしていたとは傍から見えないだろう。
そうしたらリムル様になぜ出迎える準備ができたのか何より魔王達の宴ワルプルギスの内容を把握しているのかを聞かれた。
「簡単ですよリムル様。我々がヴェルドラ様に頼んでいたのです」
「…おい、おい、オッサン」
「ッスー…」
全力で目を逸らすヴェルドラ様は問い詰められ交渉内容を白状していた。
あの竜種が食べ物に釣られている事について考えてはいけない。
「ちゃんとリムル様の護衛を務めたのでしょうね?」
「当然です!私がいれば貴方達など必要無いのだと証明されました!それより貴方達こそリムル様より与えられた任務はどうなっているのです?」
「クフフフフ、それは抜かりありません。リムル様に直接ご報告申し上げるつもりですよ」
この会話、誰も目が笑ってない。主にライバル関係ができていた。
「おいお前ら、いい加減にしとけよ?」
「そうですぞ。リムル様もお疲れでしょうしハルナ達が食事の用意をしております。まずはゆっくりと英気を養った後、お話すれば宜しいでしょう」
リムル様に窘められ一旦口喧嘩は止まった。
*
落ち着いた後。
「それで、お前らは何をやってるんだ?ファルムス王国を滅ぼしヨウムを新たな王として立てる。その任務を放りだして帰ってきたという事は、応援が必要なのか?」
スライム形態になり大らかな気持ちで聞いてみる。応援が必要ならソウエイあたりを手助けに向かわせようか。
「
この仕事はシオンには無理なので聞き流す。
しかしながら2人に俺の気配りは全く不要だったらしい。
「いえいえリムル様、その必要は御座いません。全て計画通り、順調に進んでおります」
「最初に、あの者共を元の姿に戻しました。肉塊になったままでは不便でしたので」
穏やかな気分吹き飛んだ。
肉塊!?ってあれか!と動揺する。
そうだよね……アレは確かにそのままでは不味い。そんな心の動揺を押し隠しながら話を続けるよう促し―――
「――――という感じに揺さぶりをかけておきました」
二人共笑顔で報告が終わった。
ツッコミどころが満載過ぎて何から聞くべきか。やはり一番気になるのは……。
「アレを見せちゃったの?」
「はい。恐怖を植え付けるには最適と判断致しました」
世間話をするような気軽さでレプリカが微笑む。
そっか、見せちゃったかあの肉塊を…。後ろでシオンが得意げにしているが褒めてない。
そりゃあ恐怖心を抱くよ。俺だって転生前なら吐いてる。
これでは完全に魔王の所業ですよ。
気持ちを切り替えるため人の姿で紅茶を飲もうと思う。
「それで講和の条件ですが、賠償金として星金貨一万枚を要求しております」
「!?」
思わず紅茶を吹いた。一万枚てお前ら…。一兆円の賠償請求をしたようなもんだ。
「お前らそれは、ふっかけ過ぎなんじゃないか?」
「クフフフフ、問題御座いません。三つの選択肢を与えましたが答えは1つしか無いのです」
「3つ目は言うまでもなく2つ目も論外であれば、1つ目を選択した上で交渉を行おうとするでしょう」
「「逆に3つ目を選んでくれると楽なのですが…/ですけどね…」」
容赦ない事に加えて恐ろしい事を呟いているが。
確かに選ぶなら1つ目しかない。値下げ交渉…いやそこまで愚かじゃないか。
分割払いくらいは言ってきそうだけど。
「値下げには応じませんしファルムス王国としては要求を飲むと表明するしかない。けれど、実際には実現に至らないでしょう。それだけの金貨が市場から消えると経済も滞るでしょうしね」
「彼等が取る手段としては、別の第三者に責任を押し付ける方法でしょうか」
成程。ディアブロの言う方法は、頭金を用意して残りを別のもので支払い、別のものの所有者が支払いを拒否してもファルムス王国は一切関係無いと突っぱねるやり方だ。
理性的な相手でないと通用しないが、それをこちらがやられると厄介だな。
「そうなったらどうするんだ?」
「予定通りです。少なくとも星金貨千枚は回収できますので、計画の第一段階は終了となりますから」
「星金貨を回収できるという根拠は?」
「ああ、その事ですか。簡単です」
要するに星金貨は価値が高すぎて使い道が殆ど無いかららしい。国家予算として使うのは主に金貨で、星金貨は換金できない証券のような扱いになる。銀行も存在しないので利息が発生する事もなく、そこまで抵抗なく支払える。流石ディアブロだ。
星金貨千枚(一千億円相当)という想定以上の額が貰えるなら俺としてはそれでも充分だが…。
*
ディアブロ様と私がそれで良しとする筈もなく、更に内乱が起きるよう計画を練っている。
「こっちの損失分を十分に補填させた上で更に何を企んでいる?」
「クフフフフ。解放したエドマリス王は既に私の傀儡です。ユニークスキル『誘惑者』の影響下にありますので、ある程度は私の意に沿って動くでしょう。つまり――――」
『誘惑者』の支配下にある者はディアブロ様に生殺与奪権を奪われた状態だ。
意思の強制はできないが何時でも死を与えられる状況にある。命令に従っている間は良いが、叛意を抱いた瞬間筒抜けだ。
つまりその瞬間に殺されるかもしれないわけで…それを理解していれば裏切れない。
人を恐怖で縛り操る、主らしい能力だ。
それで観察したところ、予想通りエドマリス王は1つ目の選択肢を選び間違いなく退位する。ミュラー侯爵とヘルマン伯爵に責任追及を行ってもらう予定だったがその必要は無くなる。
というより今は王派閥として協力関係を築けているそうで、計画から逸脱したが有利だ。
権力基盤を失った王には責任追及の矛先が向かうだろう。
「王立騎士団はリムル様により皆殺しとなっており、王家を守る者はいない。今現在貴族と敵対する事はエドマリス王にとって死と同義です。言いなりになる他ないでしょう。ですがそれはあくまでも表向きであり裏では―――」
「エドマリス王はヨウムを味方に、つまり俺達を味方に引き入れようと動くわけか」
「御明察、恐れ入ります」
「って事は、ヨウムに戦力を貸し出せばいいんだな?」
「はい。我々の下僕となったラーゼンより連絡が入る手筈となっておりますので、その時は宜しくお願いします」
「勝てるんだろうな?次に王になる奴が他国を巻き込んで連合を組んだりしないか?」
「周辺諸国からはフューズ殿やガゼル王が圧力をかけ睨みを利かせております。ですのでその可能性は小さいのですが…」
「もしもの場合は私が露払いに参戦する予定ですので、御安心を」
眷属一人くらいが露払いには丁度良いだろう。
あくまで裏方に徹するし連合を組まれる可能性は小さいが、どうしても愚かに死を望むならば仕方ない。
「よし、任せるぞ。何かあったら報告を頼む」
「「ハッ!お任せくださいませ、我が王よ!」」
跪くとポンと肩を叩かれ、引き続き任務遂行を命じられたのだった。
そのタイミングでハルナ殿が茶請けを用意してきた。
「お、これは抹茶プリンかな?」
「はい、リムル様。シュナ様ほどではありませんが私も腕を上げたんですよ」
リムル様が前世で食べていた料理の1つらしい。すると読書していたヴェルドラ様が近づいてきた。
「ほう?我の分もあるのだろうな?」
「勿論ですわ、ヴェルドラ様」
しかしながらこれは交渉によりヴェルドラ様に渡さなければならない。
「ヴェルドラ様、これは約束の分です」
「クァーハッハッハ!ディアブロ、レプリカよ、貴様等は中々に義理堅いようだ」
満足そうに献上したプリンを受け取っている。相当この料理が好きなようだ。
「ディアブロ、レプリカ。お前らは食べなくて良いのか?」
「情報の対価としてお支払いしたのですから、気遣いは不要で御座います」
どんな内容でも契約は契約。等価交換は守らなければならない。
「そうか、それならいいけど」
「それにしても、タイミング良くワルプルギスの最中に帰ってくるとは丁度すれ違いになったみたいだな」
「いえ、我々はエドマリス王達を脅した後に各地を巡りファルムスの財政状況を調べていました。計画に不備が無いか調査していたのですがその際にヴェルドラ様よりディアブロ様と私共々帰ってくるよう連絡があったのです」
正直に言った途端、ピシリと空気が固まった。
慌てたようにヴェルドラ様がプリン片手に席を立つ。
「わ、我は用事を思い出したぞ!」
「まあ待てよ、ヴェルドラ君」
怒気を浮かべたリムル様が微笑む。逆にヴェルドラ様は青ざめていた。
「ま、待て!話せば分かる!!」
「分かるか!人の仕事の邪魔してんじゃねーよ!!」
その後暫くヴェルドラ様は甘味を没収されていた。
――――――そして、全ては読み通りに動く。
ファルムスでの御前会議は心をへし折られたエドマリス王とその味方になった大臣達によりスムーズに進行した。貴族共は煩かったが頭の固い保守派などよくある事だ。
後継者に推されたエドワルドという人間が自分の思う通りだと笑っている。
(ククッ、愚かな事だ)
最初から仕組まれた筋書きであるとも気づかずに。
「私はリムル様の執事ですので、お傍を離れるわけには参りません」
直接ディアブロ様が出向くのは5日後の和睦協議。それ以外はこちらで進めている。これで常にディアブロ様はリムル様の傍についていられる。
「あ、俺も出ようか?」
「いいえ、私だけで大丈夫です」
そして和睦協議にて、ジュラ・テンペスト連邦国とファルムス王国の間で和議が成立した。建前上は魔国連邦を国家として認める形になる。迂闊に国際法を無視する事はできない。
人道的な観点での立場だが、ここには武力が存在する。
国を統べるは新しい魔王リムル=テンペスト。“暴風竜”ヴェルドラの盟友にして2年弱でジュラの大森林を支配下に治めた存在。
その事実を見れば、魔国連邦と戦端を開こうなどと考える国はいない。利益を得ようなどと愚かな真似をすれば国が滅ぶ事になるだろう。
この日よりリムル様は不可侵の存在として扱われるようになる。
魔王と呼ばれる者、“
大きな問題も起こらず、計画の第一段階は完了した。
全ては―――――我が主の望むままに。