黒の影従   作:御剣鎖刃

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7話「人魔会談 後編」

会議も終わりに近づいた頃。

 

「話は聞かせてもらったわ!!この国は滅亡する!!」

 

唐突に乱入してきたチビ…否、かなり弱体化したと噂に聞く精霊女王がそう言い放った。

後ろではなにやら覚えがある…ここ最近で大分苛ついた事の原因である、私と同じ黒に属する悪魔が扉を閉めている。

 

『いきなりなんだあの妖精…それにあいつは…』

 

『何れにせよリムル様の会談を邪魔するとは許し難い。さっさと捕まえますよレプリカ』

 

『承知』

 

部屋内の全員が唖然としている中、捕縛に動いた。

 

「リムル様、不審な者を捕らえました。如何致しますか?この国が滅ぶなどと巫山戯た事を抜かしていますがどの様な処分を下しましょう?」

 

「ちょ、ちょっと?何をするだーー!?」

 

精霊女王はディアブロ様が蜻蛉か何かのように捕まえ、私は魔法人形を捕縛する。

 

「我が主の会談に許可なく踏み入り不敬な事を叫ぶとは何事か?狼藉を働くならば相応の覚悟をしているのでしょうね?」

 

『まさか原初の黒(ノワール)様にレプリカ!?』

 

『今はディアブロ様だ、二度と間違えるな』

 

主はノワールという呼び方が好きではないらしく、我が主という呼び方で固定してきた。今はリムル様に与えられた名に喜んでおられるから普通に様付けで呼べるが。

 

各国の者達と魔国側の者達は困惑し、リムル様は妖精女王に呆れている。

 

「アタシの全力の魔力を以ってしても逃げ出せない!?しかもうちのベレッタまで捕まえた!?こ、コイツ等、只者じゃないわね?何よ、何なのよ!アタシが何をしたって言うのさ!」

 

いやその魔力量じゃ逃げるのは不可能だし狼藉を働いているだろうがよ。……失敬、思わず素が出てしまった。

 

「リムル様、その妖精は知り合いですか?」

 

「ああ、ラミリスっていう名の妖精で俺の知り合いだ。そんなナリしてるけど一応は魔王らしいよ?」

 

「そんなナリってどういう意味よ!?これでもアタシはね、十大魔王中最強と恐れられているんだからね!!」

 

無理がある。確かに古い存在だが強さの面では威厳も何もない。

詳しく知っているわけではないが、偶に現実世界を見た時やギィが時々冥界に戻ってきてディアブロ様にうざったく話しかけてきた折に聞いた話だと“星の管理者”ではあるらしい。

周囲の反応に不服そうな様子で色々と騒いでいたが、リムル様がヴェルドラ様の所に持っていくとパタリと気絶していた。ついでにヴェルドラ様も何かを言われてショックを受けていた。意味もなく乱入したわけでもないだろうが何しに来たんだ本当……。

静かになった2人は置いといて、まずは今後の行動を決める。

 

「ベニマル、敵はクレイマン。叩き潰すぞ!」

 

「待ってましたよその命令を!!」

 

主に手を出す愚か者は潰すに限る。それに荒事は悪魔の性格上わりと歓迎だ。

 

「それで三獣士及び獣人の戦士達も―――」

 

「言われるまでもなく我等は皆、今はリムル様の指揮下ですわ」

 

獣人達も気合十分か。

 

「リムルよ、それで勝てるのだろうな?」

 

「勝つ。アイツは俺を怒らせた」

 

「そうか。では俺は貴様を信じるとしよう」

 

「しかしクレイマンと言えば油断ならぬ魔王ですよ?数多の魔人を配下に擁し、東の帝国とも繋がりがあると噂されておりますし……」

 

エラルド殿が心配そうにしているがまぁ問題無い。

 

「関係ない。戦は数ではなく質だ!」

 

戦において数の暴力は大事だが、一定のレベルからは質が重視される。下級の悪魔をいくら集めた所で原初に一蹴されるのと同じだ。

 

「やれやれ、自分の常識が崩れる音が聞こえそうです…」

 

まぁそうだろう。

 

「さて、戦に関しては俺達の問題だ。今回は信用して任せてもらいたい。という事でヨウムを新時代の英雄王とすべく、皆さんにも協力をお願いしたい」

 

人間社会の問題は人間に頼る方が安全だ。

 

「まずはフューズ君、ミュラー候爵とヘルマン伯爵とやらに密かに連絡を頼む」

 

「ああ、任せてくれ」

 

細かい調整は後として、まずヨウム殿が王を救出した演出を行う。そのために捕虜を解放する必要があるが…。

 

「ところでシオン、捕虜3名の取調べは順調か?有益そうな情報は喋ったのか?」

 

「フッフッフ、勿論ですともリムル様!」

 

自信があるシオン殿に反して、手伝ったヨウム殿とミュウラン殿は気まずそうだった。

 

「―――ああ、旦那。取調べ?尋問?というか情報は喋ってたぜ」

 

「ええそうね……でもあれは取調べではなかったわ。尋問と呼ぶのも烏滸がましい何かだったけど……」

 

絶対に拷問まがいの事をしている間違いない。まぁそれだけの愚行をしたので同情はしない。

 

「まず、エド、エドノヨル?エド……」

 

「エドマリス国王では?」

 

名前忘れてたのか…。

 

「エドマリス国王に接触した商人がいたそうで、その者が我が国の絹織物なんかを持ち込み王の欲を刺激したそうです。それに今後の流通の主流が我が国になると恐れ、今回の件に繋がったみたいですね」

 

話を聞くに商人が意図的にファルムス王国を動かしたように感じる。商人が何者かは流石に分かってないようだが。

因みに教会関連でもシオン殿は名前を忘れていたがミュウラン殿が代わりに覚えていて助かった。

ニコラウス・シュペルタス枢機卿という人間が魔国連邦を神敵として討伐する「予定」とし、そこからファルムスの大司教が栄誉目当てに行動した。

 

「……どちらにせよまだやりようはあるな。西方聖教会は決定的な判断を下す前だった。ならば交渉によっては敵対を避ける道もあるやもしれぬ」

 

「ならば交渉は俺が」

 

ブルムンドが魔国連邦を国家として認める声明を出し、ドワルゴンは貿易の活性化によって大々的に宣伝、そしてサリオンが国交樹立を宣言する事になる。

ブルムンドは小国の様だが、この大国間の交流によって発生する先進的な文化を一番に取り入れられると考えれば他より上を行くだろう。

 

「フューズ、帰ったらブルムンド王に伝えて欲しい。頼みたい仕事があるってな」

 

「頼みたい仕事?また厄介事ですか?」

 

「失敬だね君。詳しく言うと長くなるし理解するの難しいだろうから今度お邪魔して説明させてもらうよ」

 

「旦那も大概失礼ですよ!?それじゃあ俺の頭が悪いみたいじゃないですか!」

 

「いやいや、そういう意味じゃないんだけどね。だってさフューズは経済とか得意か?」

 

「うっ……分かりました。王に伝えて面会予約を入れておきます」

 

どうやらブルムンドに何か役割を与えるらしい。まぁそれらは今現在の問題を終わらせてからになるだろうけど。

さて3名の捕虜と言ったが、エドマリス王、大司教、後一人は確か…初仕事で生け捕りにした奴か。

 

「シオン、捕虜は3人だっただろ?俺の攻撃から生き残ってたし結構厄介じゃなかったか?」

 

「え?あ、はい。あの酷く怯えていた男ですね」

 

どうやらディアブロ様に敵対して本気で心折れたらしい。

 

「ほう、生き残っていた最後の男か。察するに騎士団長フォルゲンというところか?」

 

「どんな感じの奴なんだ?結構強かっただろ?そのまま野放しにしても大丈夫そうか?」

 

「いいえリムル様。何の問題にもならぬ小者でした。ですが、人間にしてはそれなりに魔法を操れたようです」

 

笑顔で事実を述べるディアブロ様。

 

「シオン、名前はわかるか?」

 

「はい!ラーメンです!」

 

リムル様はなにやら懐かしいという感情を示した。面識があったと思えないし前世で同じ様な名称の何かを見たのだろうか?

 

「ラーメン?そんな人物がファルムスにいたか?」

 

「記憶に無いな。しかも魔法?魔法だと!?魔法といえばファルムスにはまだ魔人ラーゼンがいましたね…」

 

「英雄ラーゼンか。忘れてはならぬ男よな」

 

魔人で魔法を扱う、シオン殿はほぼ間違いなく固有名詞を間違えるし…まさかあの歯牙にもかけなかったのがラーゼンか?

しかも獣王国にまで知られ叡智の魔人などと異名を付けられているらしい。

 

「シオン、そいつはラーメンで間違いないんだな?」

 

「ええと多分……ですが若造でした!この町を襲撃してきた者の1人でしたし皆が言っている様な魔法使いではありません!」

 

シオン殿や他の者達によれば町を襲撃した異世界人本人だと言う。

 

「ディアブロ、レプリカよ。リムル様に褒めてもらおうと適当な事を言っているのではないのか?」

 

「心外です。あの程度の者を倒しただけでそこまで期待するのは愚かというもの。我々はただ与えられた仕事を全うして御仕えするのを認めてほしかっただけですよ」

 

「同意見です。そもそも我等は主に嘘をつく気など全くありませんし」

 

となると精神系魔法でその異世界人にラーゼンが憑依したと考えるのが自然か?今思えば肉体と魂が合致してない気がしたし。

 

「……それってラーゼンって魔法使いが若造の身体に憑依してるんじゃないのか?」

 

同じ予想に至ったようだ。

 

「えっ!?」

 

「クフフフフ、名前ならすぐに判明するでしょう」

 

慌てるシオン殿にディアブロ様は笑顔で追い打ちをかけていた。

あの後、捕虜3人目はラーゼンだったと判明した。

そしてラーゼンを一蹴した事から周りに大層驚かれたしリムル様も不可思議なものを見る目になっている。ディアブロ様や私から見るならともかく、人間の範囲では十分だったのだろう。

まぁ、当のディアブロ様はシオン殿を相手に勝ち誇っているけども。

 

「ヨウム、捕虜三名を連れて行動を起こしてもらうわけだが、ディアブロとレプリカも連れて行け」

 

「「ッ!?」」

 

突然すぎるリムル様の言に2人で同時に驚き、シオン殿はニヤニヤしていた。

どうやら魔国連邦の者達の中でこの作戦に従事するにあたり最も条件を備えているからだそう。

ベニマル殿は総大将で動けない

シオン殿はまず任せられない

ハクロウ殿は移動手段が限られる、

ゲルド殿やガビル殿は外見が目立つ上に策謀向きの性格ではない。

……確かに道理だった。

 

「頼んだぞ!ディアブロ、レプリカ!」

 

「おお、承知しましたリムル様!」

 

「誠心誠意務めさせていただきます!」

 

仕事を任せていただけた事がとても嬉しい。本当に嬉しい。

 

「数年かかるかも知れないが気長にな。何かあったら『思念伝達』で伝えてくれ」

 

「問題御座いません。その様にお時間をいただくまでもなく、さっさと終わらせて御覧に入れます」

 

一国を滅ぼす程度なら物理的破壊でも策略による崩壊でも問題ない。実際に召喚されてやった事もあるし。

その後は魔導王朝サリオンとの街道作成に関する話し合いをしてひとまず各国首脳との会議は終わった。

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