オリジナル小説を書き始めました!
読んで、楽しんでいただければ幸いです
「大佐!救援を求めます!救援を!?うわぁぁぁぁぁ!?」
叫んでいた仲間が1人、頭から化け物に咥えられて持ち上げられる
そのままゆっくり化け物は噛み潰していく
そいつは、最後まで悲痛な叫び声を上げて死んでいった
(クソッ!?あれ低級じゃねぇだろ!?)
そんな様子を悲鳴を押し殺していた男は、頭の中で悪態をつく
今日の任務は俺ら下級祓い師でも倒せる、低級妖魔を倒すはずだった
だが、ここにいるのは低く見積っても上級…
いや、もはや確認されている妖魔の中で2番目に強い最上級妖魔かもしれない
(嫌だ…死にたくない…)
体が震え、歯がカチカチなる
腰に力が入らなくなり、立てない
「っ………」
すぐ近くに、化け物が歩いている
巨大な体は、動く度に地面を揺らす
地面が揺れる度に男の体も共に揺れる
もう…ほかの仲間は全員殺されてしまった
あとは…男だけ
(頼む…どこかへ行ってくれ!)
心の中で神に祈る
ただ、今生き残れることを
(頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む…)
だが、祈りは無駄だった
足音が止まる
荒い鼻息が近くでする
「はっ…はっ…」
息が漏れてしまう
横から、生暖かい空気が流れてくる
恐る恐る横を見ると…そこには…
「ヒッ!?」
黄色い、巨大な瞳
化け物は…ティラノサウルスのような…しかし皮膚が岩のようになっている化け物は大口を開けて、男を飲み込もうとしてくる
(ああ…ここで終わりか…)
もう、抗う力もない
そのまま、飲み込まれて殺されるのを待つだけ
目を閉じて、待つ
だが、その瞬間、男に襲いかかったのは全く別の現象
全身に何かが飛び散る
血肉だ
(……死んだのか?一体誰が…)
「本当にみっともない。幼馴染がこんなザマとは…いい加減諦めて婿にでも入ったらどうです?」
(………最悪だ)
ゆっくりと目を開ける
そこに居たのは青髪の女性…男の幼馴染であり、本来なら低級祓い師である男が会うことすら叶わない最上級祓い師でもある「通目鬼鮫」
化け物がいた場所に立っており、その周囲には炭のようなものが散らばっている
気づけば男の体に飛び散っていた血肉も炭のようになっていた
「何?ジロジロ見ないでよ。早く助けられたこと自覚して、土下座でもして感謝すれば?」
「……助かった。ありがとう」
「フン。これに懲りたら下級祓い師なんてやめることね」
そっぽを向きながらぶっきらぼうにそう言ってくる鬼鮫
男は頭を掻きながら立ち上がる
そこでふとした疑問を覚えた
「なぁ鬼鮫、お前なんで此処に来たんだ?」
「っ……」
ビクリと鬼鮫の肩が震える
ギギギ…とまるで錆び付いた機械のように振り向いた鬼鮫は手をワタワタとさせながら早口で話し始める
「いやいや別に!?貴方がここにいるって分かってて来たわけじゃないですし!?元々任務でこっちの方に来ていてたまたま…そう!たまたま!通りかかったの!」
「そ、そうか…」
「そうよ!というより!貴方の分際で私に質問しないでください!不愉快です!」
そう言いながら頬を突いてくる鬼鮫
ずんずんと突いてくるから結構痛い
「じゃあ、帰りますよ。ほら、掴まってください」
鬼鮫が手を差し出してくる
鬼鮫の手を握ると、上から虹の光が降りてくる
最上級祓い師専用の移動手段
何日もかけて歩いていく下級祓い師には使えない特別な転移
少しすると、周囲の景色は暗い森から石畳の室内に変わっていた
「さ、報告に行きますよ。貴方達の小隊が全滅したのですから。生き残った貴方が報告しなければいけませんよね?」
ニヤリと笑いながらそう言ってくる鬼鮫
確かに、妖魔の級判定が誤っていたこと、男以外の下級祓い師が全滅したことを報告しなければいけない
「私は先に行きますので、呼ばれたら来てくださいね」
手をヒラヒラと振りながら去っていく鬼鮫
男は部屋に取り残される
「はぁ…面倒なことになったな…」
男は、頭を抱える
その場でウロウロして頭を掻きむしる
(いやいや…まだ幼馴染があの鬼鮫だったことはまだいい…このまま下級祓い師を貫き通せばあいつはいつか興味を失うはずだ…でもなぁ…)
男は、ひたすら自身の不幸を呪う
この世界は「祓魔大戦」と呼ばれるとある世界の日本で作られていたゲームであり、1000時間費やしても足りない広大なマップに数多くの強敵たち、自分で武器と敵が落とす素材、そして祓い師が使う「祓術」を組み合わせることができる自由度の高さを売りにしていたゲームだ
そこだけを見たら王道的なゲームだ
それに加えてキャラビジュが全員出る度に話題になるくらいにはデザインし尽くされているため、それに惹かれた人も一定数いた
だが…それはチョウチンアンコウのチョウチンのように吊り下げられた疑似餌だ
このゲームの本筋はゲロ吐きそうな程重いストーリー
祓い師と妖魔のリアルを極めた熾烈な命の取り合い、祓い師の招待、妖魔の出処…全てにおいてかなりのストーリーの重さがある
この世界には出処不明の怪物である「妖魔」がおり、妖魔は人を襲い、殺し、食べる
人間側も黙っているわけじゃない
人間の中で「祓術」と呼ばれる生まれた時から備わっている能力を持つものは「祓い師」となり、祓い師はいつしか組織化。祓い師の中でも順序が生まれるようになった
今、男が属している「下級祓い師」など毎日のように死ぬ
雑に偵察で死ぬし、上級祓い師のストレス発散で拷問されて死ぬし、戦ったら確定で死ぬ
そんな世界で、最悪なことに男は「下級祓い師」にしかなれなかった
(本当は早く逃げたいのに…)
1度、下級祓い師になりたての頃に遠くに逃げたことがある
だが、すぐに鬼鮫に見つかり、連れ戻された
鬼鮫は的確に男の居場所を突き止めてくる
「はぁ…」
深いため息を吐く
今の状況の悪さは最上級だ
下級祓い師になって死にかけるのも最悪だが、この扉の先に待っているのはもっと最悪な連中
最上級祓い師…世界を滅ぼしかねない「祓術」を持つ人格破綻者のイカレ女の集まり
鬼鮫もその一員であり、あの陰湿で執拗く、ウザったらしい口は最上級祓い師になってからさらに増長している
そんな中に入るなど、ライオンの檻の中にインパラを入れるものである
「ため息なんて、君に似合わないね」
背筋が凍る
無駄にイケメンな声、王子のような言い回し、フワリと香ってきたシンプルめな香水の匂い
後ろに…奴がいる
「……こんにちは。「如月行水」様。お会いできたこと光栄でございます」
「もう…そんな堅苦しく無くていいのに…」
後ろを振り返り、礼儀正しく頭を下げる
目の前にいる女は「如月行水」
鬼鮫と同じ最上級祓い師であり、今現在最悪なことに男と面識のあるイカレ女だ
「もう…レンはいつもそうやって他人行儀で…誰もいないし、ギョウちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「お断りさせていただきます」
「素っ気ないレンも好き〜♥」
男…レンは心の中で頭を抱える
原作では最終版にようやく落とせるクラスの男嫌いと人間不審を拗らせていたのに、今は男であるレンにベタベタとして目まで♥にしている
行水はレンの首に付けられているネックレスを弄っている
(なんで特にめんどくさい2人に絡まれるんだよ…)
最上級祓い師の中にはめんどくさいの領域を超える、絡まれたら死が3人、目をつけられたら終わりが2人いる
因みに最上級祓い師は全員で7人いる
つまり全員絡まれたくないし目をつけられたくない
「もうお時間なのでは?」
「…そうだね。君と僕の入口は違うし…違う場所から入ったらあの人に怒られてしまう」
心底残念そうにしながら歩き去っていく行水
そして、時間は18時ピッタリ
最上級祓い師の定例会議が始まった
18時15分…ドアが開かれる
レンは服を整え、会議の場へと足を運んだ
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「ふぅ~会議は肩が凝るなぁ…」
ようやく解放され、凝りに凝った肩をもみほぐす
自身の胸に着いた脂肪の塊を睨みつける
(こんなの…戦うのに邪魔なだけなんだよな…)
動く時はさらしで巻かなければいけないし、動いたら蒸れて暑くなる
「見てくる男どもも気持ち悪いし…」
人の身体を見てニヤニヤして何が愉しいのだろうか
一生理解出来ないと思っているし、理解したいとも思わない
(ああでもやっぱり…レンだけは…違うな…)
彼は、ずっと私の顔だけを…目だけを見て話してくれる
彼の目からは邪な思いなど感じられない
彼と話していると気楽なのだ
「好き…」
好きだ。彼のことが
祓い師になって、祓魔連盟に入って、今唯一生き残ってる同期
最上級と下級という隔たりは出来てしまったが、今でも同期の絆は繋がっていると思う
「でも…鬼鮫ちゃんも抜かりないねぇ」
行水はポケットからネックレスを取り出す
それはレンの首にかけられていたものであり、行水はそれを指にかけてクルクルと回す
そのネックレスには束縛や精神操作、場所特定に盗聴等の様々な祓術が組み込まれており、こんな芸当ができるのは同じ最上級でも鬼鮫だけだ
「あの時、どうやって見つけたと思ったんだけど…こんなの付けてたらすぐ見つかるよねぇ」
ネックレスを握り潰す
レンには代わりに行水が買ったネックレスをつけておいた
壊しても文句は言えないだろう
「彼女もそうだよなぁ…だって、幼馴染だもんねぇ…」
鬼鮫から飽きるほど聞かされる自慢話
昔から頼りがいのある幼馴染だと言うこと、暴漢に襲われかけた時、命懸けで助けてくれたこと
こんなことをされて好きにならない女の子はいないだろう
「でもね…」
行水は首元からロケットを取り出す
ロケットの中には行水とレンの祓い師見習い時代の写真が収められていた
「絶対に渡さないよ」
行水は、ロケットに口付けを落とした