ヒロインの人格が破綻してる世界で   作:怒飲焼

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第3話

「あら…そんなに震えちゃって…寒いの?暖めてあげる♡」

 

ブリザーニャはそう言いながら抱き締めてくる

だが、氷を操るブリザーニャの体温は極寒であり、密着すればするだけさらに体温が下がっていく

だが、レンが震えているのは寒さではない

 

(クソ!なんちゅう祓源の量してんだよ!)

 

ブリザーニャの祓源の量

まるで目の前に山があるような

そんな錯覚を覚える程の祓源に圧倒され、恐怖すら覚えている

怖いから震えているのだ

恐怖している相手に抱き締められたら震えはさらに増していく

 

「あらおかしいわね…こんなにくっついてあげてるのに…まだ震えてる…」

 

ペロリと首筋が舐められる

ヒヤリとした感触

ブリザーニャがレンの首筋を舐めたのだ

その感覚に思わず顔を引きつらせてしまう

 

「ああ…そんな顔しないで…私…」

 

レンの顔を見てブリザーニャは顔を赤らめさせる

瞳孔が細められ、視線がジットリとする

動きたいのに体を動かせない

そのままブリザーニャは氷で翼を作り出すとそのまま翼を動かし、飛び上がる

 

「さぁ、私の巣に帰りましょう!ようやく見つけた人だもの!巣に持って帰って…ゆっくりじっくり…愛し合いましょう♡」

 

段々と高度が上昇していく

このままブリザーニャの根城に持ち帰るつもりだ

 

(ダメだ…そんなことになったら確実に死ぬ)

 

これまでにも妖魔に巣に持ち帰られた祓い師の話はよく聞く

比較的に雌の多い妖魔だが、Hな展開を期待してはいけない

そこで行われるのはただの屠殺

食用の生物として屠殺され、解体され、調理されるだけ

 

(そんなのごめんだ…)

 

ブリザーニャは油断し切っており、レンの行動に注視していない

ならば…とレンは自身のバッグパックの中身をまさぐる

その中でほんのり暖かい石のようなものを握る

その石に祓源を注ぎ込む

 

「っ…あなた…!?」

 

ブリザーニャがレンを投げ捨てる

レンの体はほんのりオレンジ色に光り、レンが着地した場所に積もっていた雪が溶ける

 

「熱気石」…帰還石と同様に祓い師が用いる宝石の1つ

祓源を注ぐことで熱気を体に纏わせ、寒さと氷系攻撃を防ぐことができる

 

「まさか…あんなに震えてたあなたが反抗してくるなんて…予想外だわ…」

 

体が少し溶け、汗のように肌を伝っている

氷祓術を使うブリザーニャにとっては熱や炎は天敵のようなものだ

ブリザーニャの機嫌を損ねたのか、顔を顰めている

 

「暑かったか?もうこっちは春なんだから帰れよ。もう冬服は仕舞ってるしな」

 

「……不遜な…」

 

ブリザーニャは比較的口喧嘩は弱い

このゲームでは戦闘前に「口戦」と言うパートが入る

アクションバトルの前にターン制バトルが始まり、そこでのダメージ量がそのままアクションバトルでのHPの減少量に直結する

また、ザコ敵で口戦で倒せる場合もある

まぁ、ブリザーニャは大ボスクラスなので口戦で出来るのは精々HPを削るくらいだ

だが、他のキャラに比べてブリザーニャは口戦が弱い

さっきの上手くもない一言でさえイラついているのがわかる

 

「お前は気に入っているから殺しはしないが…四肢はもぎ取って持ち帰ろう!」

 

ブリザーニャが手を振り、氷柱の弾丸を無数に飛ばしてくる

その氷柱は熱気石でも溶けない強い冷気を纏っている

レンはその氷柱を走って避ける

ブリザーニャは妨害のために氷塊を出す、吹雪かせる、氷柱を別の方向から飛ばすなど妨害してくる

だが、やはり口戦でイラついているからか攻撃や妨害の精度が低い

 

「おいおい!氷の精!冬の化身!ハーピーの癖にそんな火照るなよ!自分の熱で溶けちまうぞ!」

 

別にレンは頭が回る方じゃない

日本にいた時は口喧嘩が弱く、喧嘩になる度に負けていた

幼馴染に毎回負けては雑魚雑魚と煽られ、馬乗りになられていたのが懐かしい

だが、ブリザーニャはそれ以上の雑魚だ

今の謎にギザったらしい煽り文句でさらに怒りをヒートアップさせたのか顔を真っ赤にしながら攻撃をさらに苛烈にする

 

「ハハッ!んな攻撃当たるかよ!」

 

「っこの!ぴょこぴょこ逃げるな!」

 

「ヤーだね!」

 

その後もレンは攻撃を避け続ける

だが、それだけだ

 

(ああクソ!こんなに祓源撒き散らしてるんだから誰か気付けよ!いつもみたいに鬼鮫は来ないし!)

 

口戦が弱いと言っても最上級妖魔

祓源の量も、祓術の質も、全てが超一級品だ

どれだけ祓術を使っても切れる気配のない祓源、どんな祓術でも最低限の量で最高のパフォーマンスを発揮する技術

それに加え、近接戦闘能力も高い

 

(ぶっちゃけると勝てる確率0%なんだよな…)

 

口戦システムはこの世界では精神的優位性を保てるということになっている

ゲームと同様に攻撃の振りが大きくなるや、矢の命中精度が下がるなどは踏襲されていることもある

精神的優位性が劣れば攻撃は当たらないし、いつも出来ていることが出来なくなるやつだっている

攻撃が当たらなくたってこちらが攻撃出来るわけではないし、いつか体力が切れて避けきれなくなる

だからブリザーニャを煽り、祓術を使わせ、祓い師が探知出来るほどの祓源を撒き散らさせているのだ

 

(この量だったら最上級が来るだろ!早く来てくれ!)

 

もう足も限界が近い

そう考えていた矢先、足先の感覚が無くなる

 

「あっ…」

 

痛みとか、そんな次元じゃない

もはや、1回回って冷静になり、足先を見る

右足の、足首から先が無くなっていた

そこからは一瞬だった

雨のように降り注ぐ氷柱が逃げ遅れたレンの体を貫いていく

右太もも、右腕、左すね、左肩と撃ち抜かれ、ついにはダルマに近いような形になる

 

「はぁようやく静かになったわね…ほんとに…人間はなんでこんなに弱っちいのに嗜虐心を擽ってくるのかしら…」

 

息を整えたブリザーニャが歩いてくる

もうこうなったら口戦の意味も無くなってしまう

ゲームシステムだと最大HPを減らすという絶対的なデバフがあるが、現実だとHPなどない

残るはすぐに立ち直りかねない不安定な精神的デバフのみ

 

「さて…おしゃべりな口はこれかしら…」

 

「ガッ!?」

 

口元が冷えていく

それは冷えるを通り越して凍り始める

舌が、かじかむ

 

「美味しそうな可愛い舌…でも…ペットは喋らないでしょ?」

 

ブリザーニャが舌を掴む

ミシミシと言い始め、ブリザーニャが引っ張り始める

そのまま引きちぎる気だ

レンは何とか逃げようとするが、ブリザーニャに馬乗りされて動けなくなる

ブリザーニャはそのままニヤニヤしながら舌を引っ張るが、その時に固まる

 

「あら?何か…押し上げてきて…」

 

ブリザーニャはそう言いながら自身の座っている場所…レンの下半身を見る

今、絶対的な強者に命を握られ、死にかけている状況で、レンのそこはテントを張っていた

 

「……ウフフッ!まさか!まさか興奮してるの!?貴方…前にフレデリカの言ってた「ドM」ってやつね!ああ!可愛い!本当に可愛いわ!」

 

それを見てより一層興奮したのかブリザーニャは舌を解凍し、そのまま舌でキスをしてくる

ねちっこく、互いの唾液を交換するような深いキス

 

(まだだ…まだその時じゃない…)

 

レンはキスをされながら思考を冷静に保つ

致命傷を受けているが、ブリザーニャの計らいなのか傷口は凍らされ、延命措置が取られている

ならまだチャンスはある

 

「ぷはっ…私!キス初めてしたわ!こんなに気持ちのいいことなのね!」

 

口を放し、口と口の間に銀の橋をかけたブリザーニャはそう言いながら恍惚とする

そのまま立ち上がると、ブリザーニャはレンの下半身の下に移動する

 

「私…してみたいわ…人間の交尾!みんながしたいって言ってるの!私が一番乗りね!」

 

そう言いながらレンのズボンに手をかける

そして、ズボンを下に思いっきり下げた時、ブリザーニャの顔を青い光が照らす

 

「……へ?男のあそこって光…」

 

ブリザーニャの顔が吹き飛ぶ

レンの股間の少し下…股間が吹き飛ばない程度の位置に生えていた宝石が光を上空に向けて放っていた

「砲台石」…熱気石と同様の祓源を込めることで能力を発揮する宝石

祓源を込めることで石が伸び、少しのチャージの後に込められた祓源の数倍の威力の放射が行われる

 

「はぁ…成功したか…」

 

脚が吹き飛ばされた一瞬、レンはポケットから砲台石を取り出していた

イチかバチかの賭けで砲台石を地面に設置していたが、まさか自身の股間の下に来るとは思っておらず、諦めていたが、何故かブリザーニャがノリ気になったことで成功できた

 

「……勝ったぞ…俺(下級)が…ブリザーニャ(最上級)に……」

 

薄れる意識の中、レンは嚙み締めるようにそう呟いた

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