だから、私はれな子ちゃんとご飯が食べたいだけなんですって 作:えれくとろきゅーしょにすと
王塚真唯は厄介です。
とっても、とーっても厄介です。
学園の王子様だのスパダリだの、そんな看板を掲げておきながら中身はとんだ意地っ張りの負けず嫌い。
そんなにれな子ちゃんを独り占めしたいのか、小テストだの体力測定だの、色んなところで私に張り合ってきます。
そんなにライバル的な感じになっちゃってる私を排除したいんでしょうか。
いえ、確かに彼女は文武両道でスポーツ万能、頭脳明晰な超人、傍から見れば張り合ってるのは私の方に見えるかもしれませんけど、これは、別に手を抜くべきじゃないですよね、ってだけですし、そもそも運動とかで私が勝ってるところもありますし、私は意地張ってるわけじゃないんです。
私無表情キャラですから。
ちなみに紗月ちゃんからは「その調子よ」とエールを送られています。
ありがとうございます、紗月ちゃん。
……ともかく、勉強は全然負けちゃってますけど運動は私の方が上、スタイルとか見た目だって負けてるわけじゃありません、総合的には互角です。
そう、真唯ちゃんばっかがれな子ちゃんを独占する根拠なんてどこにもないのです。
故に今日こそ──
「れな子ちゃん、駅の方に新しく出来たカフェに──」
「れな子、駅前に新しいカフェが出来たらしいんだが──」
──っ、互角、同着です。
目が合いました。
開戦の合図です。
「ちょっとだけ待っててください」とことわってから、私は教室の外、人気のない踊り場から、屋上の方へと向かいました。
*
「だから! 昨日も真唯ちゃんだったじゃないですか! 今日は私です! 正当な権利です!」
「違う! 昨日は「親友」の私だ! 今日は「恋人」の私だから別人なんだ!」
「なんですか!? 昨日と違うのなんて髪型くらいじゃないですか! ポニーテールなら別人になるとか学園の王子様はすごいですね!」
「私を責める時ばかり表情が豊かだな君は! だいたい──」
屋上の入口へ後をついていくと、ゴールデンレトリバーとハイイロオオカミがキャンキャンと激しく吠え合っていた。
口喧嘩というよりは小学生の水掛論みたいな、レベルはそんなに高くない感じでキリがないタイプの口論だ。
物陰からそれを眺めていると、気付かれたのか、それとも視線を感じたのか、二人の声が止まる。
「……」
「……」
そして、普段よりもずっと時間を掛けて二人はこちらへ振り向いた。
顔はこっちを向いたが、どちらとも目は合わなかった。
「あ、えっと……違うんです、違うんですよ? れな子ちゃん」
「あ、ああ。これは……そう、「喧嘩するほど仲がいい」というやつで……!」
「……」
「つまり、だから……」
「そ、そうだとも……」
「……」
「……そうです、そうです! 真唯ちゃんが昨日もれな子ちゃんと遊んでたのに今日も遊ぶのは
ズルいですって喧嘩してました!」
「大体れな子もどういうことなんだ!? 私という恋人がありながら、六華と共に初めての共同作業をしたなんて! これは浮気だ! れな子の不義理だ!」
「はいそこ真唯! 料理の解釈を歪めない!」
「真唯!? 呼び捨て!? ズルいです、ズルいです! 私も「六華」がいいのですが!?」
「ああもう……! 六華! これでいい!?」
「はい! 素敵です!」
なんだこれは。
あの王塚真唯と御神楽六華が、互いのキャラを捨てて涙目で幼稚なレスバに励んでいる。
もはや「本心を明かす」という点においては私と以上に打ち解けているんじゃないだろうか、あの二人。
再びヒートアップしてキャンキャン吠え出す真唯と六華。
こんなラブコメ的展開に巻き込まれるのはゴメンだと思っていたが、なんだかコメディ比重が増してきたらしい。
思えば真唯はギャグ漫画みたいな金の使い方だし六華の身体能力もギャグ漫画のそれだ。
まさか方針転換か?
ならこれを機に真唯をもっと親友側に……は無理だ、髪を下ろす頻度があまりにも多すぎる。
口喧嘩の方は次第にお互いの反論材料も枯渇してきたのか、声の代わりに「ぐぬぬ……」などと情けない音、「でも」「だって」の応酬が飛び交うようになってきた。
あのカッコいい二人がこんなに情けないライバル関係みたいになるのか……
「……というかれな子! 君もなんとか言ったらどうだい!?」
「そうですよ! 二股なんて悪いことです!」
「いや二人とも友達だよ!?」
「仮にだ、友達としてもだ!」
「私友達も作っちゃ駄目なんですか!?」
恋は人をおかしくするというやつなのか、二人のIQがどんどん下がっているのが感じられる。
というかおかしい、少なくとも六華は友達だ、恋人じゃない。
……いや、まさかそんなことがあるはずない。
ともあれ、このまま二人をやり合わせてしまってはクラスの皆さんに幼児退行したカーストトップをお見せしてしまうことになり、それは非常に良くない気がする。
少し悩んだ後、私は真唯と六華の話を1人ずつ聞いてみることにした。
▽
2人の話を聞いた。
結論はこうだ。
真唯「六華と話している時のれな子が楽しそうで嫉妬した」
六華「真唯ちゃんと話してる時のれな子ちゃんが楽しそうで羨ましかった」
2人の主張を元に、一旦恋愛がどうこうとかそういうのは置いておいて私はひらめいた。
そうだ、2人を友達にしよう、と。
真唯と六華が友達になれば2人の中の友達ハードルはグンと下がるはず。
そうしたら2人とも改めて私と、最高の友達になってくれるはずだ。
私はあらゆる思考や悩み事を一旦ストップし、今の甘織れな子が出せる最高速度で一つの提案を導き出した。
「……じゃあさ、2人ともゲームで決めない?」
「ゲーム、ですか?」
「そう。マ◯オパーティで勝ったほうが今日は私と遊ぶ。どう?」
「私は構わないが……六華には荷が重いんじゃないか?」
「まさか。勝負ならもう少し上手に誘ってくれませんか?」
まるでプロレスのような戦前の煽り合いに、2人の目の間には稲妻が迸るかのよう。
けれども納得したらしい彼女達はそのままバチバチしながら教室へと戻っていった。
この先数日、不仲説が囁かれることになったのはまた別の話……
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