脳裏の感覚に集中し、術式を探る。
「あ~、この感じはあれじゃな。幻術系じゃ。このステータス表示は普通に幻覚見せとるだけじゃな」
「わかるんですか?」
うーむひよりからの悪気のない舐めがつらい!
「古狸のぽんに散々かけられたもの。完全催眠みたいなやつをな」
「あんな穏やかな人に術をかけられるって何したんですかコン様」
あやつ見た目も本性もおっとりぽっちゃりお姉さんじゃからな。
一目で人望をつかんでしまうんじゃよ。
「いや、あやつ悪気なく人間関係を円滑にするために普段からちょっとづつ幻術をしておるよ」
「まさか」
「ほれそういう所じゃよ」
あやつ本当に善かれと思って気づかんレベルで周囲の人間に美化をかけるからの。
そしてそれで本当にうまく回ってしまうから怖いんじゃよ。
「ま、まあぽんさんの話の真偽はいいとして……じゃあこのステータスって本当なんですかね?」
「うーん、わからんのう。害があるかもわからん。まあこういうときは専門家じゃよ」
わしは境内の裏にあるゲーセンに向かう。
孫がゲームアプリ会社をかねたゲーセンやっとるんじゃよ。
「ええ……?モカさんのゲームセンターですか?あー……VR用の幻術とかもありますもんね」
「それにあやつゲームのネタにいろんな術を広く浅くかじっとるもの。ちょっと呼んでくる」
歩いて数分。三階建ての小さなペンシルビルが孫のモカのゲーセンじゃよ。
もう普通に営業しとるねこれは。地震の影響は少なかったみたいじゃな。
「タマちゃんや。モカはおるかのう?ちょっと相談したいことがあってな」
「おー、社長のおばあちゃんだにゃあ。今はどーせそんなに忙しくないだろーから社長室にいると思うにゃー」
「うむ、がんばるのじゃよ。これはおやつじゃよ。皆でお食べ」
「にゃははは、いつもすいませんにゃー」
孫の同級生の猫又が普通に店員やっとるんじゃから大したものじゃよ。
スタッフTシャツの猫耳娘じゃからまあサブカルが似合うのう。
プリクラにもぐらたたき、メダルゲームに筐体ゲーム。ミニバスケにエアホッケー。
うむ、相変わらず『地元のゲーセン』感があってええのう。
「おーモカ、時間あるかの?」
「あるよ!おばーちゃんのその感じ、なんかネタになりそうな厄介ごとでしょ!」
モカは相変わらずちびっこいのう。
服もフードパーカーとかそういうゆるい系じゃから社会人にまるで見えん。
ここだけパソコン部の部室のままじゃなあ……ちゃんと掃除するのじゃよ……
「うむ、すまんのう。頼らせてもらうのじゃ」
「任せて!」
この孫娘はもうアラサーくらいなのにテンションがいつまでも女子高生なのじゃ。
まあこの子も長命種ということじゃな。
「どうかのう?」
わしは家の中で椅子に座りながらメッチャ計測機械つけられておった。うーむ体が重い。
「んー、これはねえ。まず結界型だね。効果範囲に入ったら自動で感染するタイプの術だから今の基準だとヤバいねー」
「えっ、ヤバいんですか」
「害はないけど違法?かなあ?あとこれたぶん単に体をスキャンして今のステータス出してるだけだと思う」
「よくわかりませんが、とりあえず無害でいいんですよね?」
ひより……おぬしも多少は呪術できるじゃろうが!
まあわしに似てあまりにも実践型すぎるんじゃろうね。
わしも理論とかようわからんもの。
「まあうん、すごく古くて単純な術式だから大丈夫だとは思うよ?何て言うかな……血糖値とか体温とかを機械で数字出すのと同じだね」
「なんじゃタネが割れたらあっけないのう。これ体温計の類かや」
わしは無数の測定センサーを外す。あーしんどかった。
「MBTI診断とか握力計とかと変わんないよー。数字自体は当たらずとも遠からずじゃない?」
「んー、じゃあすまんがその辺の調査結果をまとめてギンにメールしといてくれるかのう?」
「あー、おじさん昨日の妖し筋崩落で大変そうだしね」
モカはスマホでさっと記事の見出しをわしに見せる。
あー、大ニュースじゃな。復旧作業で普通に自衛隊でとるわ。大変じゃの~。
「うむ、すまんのう。夕飯たべてくかや?」
「んー、じゃあパソコン借りるよ!ひよりさん今日のご飯なにかな?」
「とりあえず害がないようでよかったです。今日は豆乳鍋ですよ」
「わあい」
モカはさっさとわしとコタツに入ってパソコンでさささっと書類を仕上げている。
ごはんはひよりが作ってくれるし楽じゃのう。
その時、玄関の戸が叩かれ、何か人が倒れたような音がした。
うへえ、めんどくさいのう。
「む、モカとひよりは奥に入っとれ。どれ……」
わしはゴルフクラブを構えて玄関の扉を開ける。
「う、うう……!」
「オワッ!行き倒れじゃよ!ひより!とりあえずポカリ持ってくるのじゃ!」
「は、はい!」
問題は行き倒れてるのがファンタジーに出てくるような甲冑姿の女騎士なんじゃよ。
次から次に厄介ごとが起こるのじゃよ!こういう時は!