TSしたからエッチなミッションを達成してレベルアップする   作:大崎 狂花

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第1話 幼女になる/耳舐め/経験値棒

「もっとお金を稼がなくちゃなあ・・・・・・」

 

 二十代成人済み男性の谷崎シュロはこう呟きながら、宝箱を開けた。そばには首を刎ね飛ばされた、ゴブリンの死体がある。

 

 ここ、シュロが今いるのは現代日本だ。ビルもあるし、スマホもある現代日本。しかし、40年とか50年とか、そのくらい前に『魔物』というものが出現し、さらにはダンジョンなんてものが登場したせいで、スマホやビルだけでなく魔法やらスキルやらステータスやら魔道具やらのファンタジーなものが存在するようになってしまったのである。

 

 で、まあ、魔物を倒すと宝箱が手に入るから、それらが出現する前には存在しなかったハンターと呼ばれる職業が存在するようになったのである。宝箱の中身を売り払って生業を立てる職業である。

 

 まあ、ここはそういう世界なのだ。細かいとことかはあまり気にしないでくれると嬉しい。そういうもんだと思ってくれ。

 

 で、そんな世界でハンターをしているのが主人公の谷崎シュロだ。

 

「あー、もっとお金が欲しいぜ・・・・・・」

 

 シュロは、そう言ってため息をついた。

 

「そうすれば、もっとルラに楽をさせてやれるんだけどな・・・・・・」

 

 シュロは妹のために働いている。両親はいなくて、妹と二人暮らしだ。だからこそ、楽をさせるために目一杯働いてお金を稼ぎたいわけだけど・・・・・・

 

「あんまり儲からないな」

 

 もちろん、生活が出来ないほどではないけど、妹にもっと色々買ってやるにはもう少しほしい。

 

「転職とかするか? うーん、でもなあ・・・・・・今のところ、ハンターが一番稼げてるしなあ・・・・・・俺基準では」

 

 もちろん、シュロ以外にもっと稼いでいる人はいるけど、でもシュロ基準ではこれでも稼げてる方なのだ。他の仕事をしたこともあったけど、ていうか今現に並行してしてはいるけど、ハンターが一番稼げる。だから、才能が向いているのは明らかにハンターなんだろうけど、それがこの様では・・・・・・

 

「俺のレベルがもっと上がりやすかったらな・・・・・・そしたらもっと敵を倒せて、もっと宝箱をゲット出来るのに・・・・・・っと、悲観的になっている場合じゃないな。とりあえず宝箱の中身を確認しよう。高く売れるようなもんだといいんだけどな・・・・・・」

 

 罠発見の魔道具で罠がないことを確認してから宝箱を開けた。

 

 そこにあったのは──

 

「なんだ・・・・・・?」

 

 ピンク色、ハート型の、宝石が一つ入っていた。

 

「なんだ、これ・・・・・・? 初めて見る物だ。うーん、魅了とか、催淫の効果がある魔道具とか・・・・・・そういうのだったら需要がありそうだし売れると思うけど・・・・・・」

 

 手に取って、眺めていたその時だった。

 

「!?」

 

 ピカーっと、突然その宝石が光り出した。

 

「!? 手に取っただけで発動するのか!?」

 

 慌てて放り投げたが、おそらくはもう遅かった。シュロはピンク色の光に包まれてしまった・・・・・・。

 

 ・・・・・・

 

「なんだったんだ・・・・・・?」

 

 ようやく光が収まる。シュロは顔を上げた。地面に放り投げたからか、その役目を終えたからか、宝石は割れていた。

 

「こっちはなんともないな・・・・・・」

 

 シュロは自分の手の甲を見た。手の甲にはお札が貼ってある。呪いとか、そういうバッドステータスを回避するための防御の魔道具だ。破れたり、白紙になったりしていないということは、発動していない、つまりこちらに害を及ぼすような悪いものではなかったということなのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・? いやなんか変だ」

 

 自分の手を見て、シュロは違和感を覚えた。手が綺麗すぎる。滑らかすぎる。それに、こんなに小さくはなかったはずだ。お札との比較をすれば、明らかに手の大きさが変わっていることがわかる。

 

「それに、体が軽いな・・・・・・やけに軽い」

 

 それに、声も高い気がする。

 

「・・・・・・え、あれ? ひょっとして・・・・・・」

 

 前に聞いたことがある。魔道具の中にはそういう魔道具もあると。めちゃくちゃレアらしいし、まず自分が手に入れることはないだろうとそこまで気にも留めていなかったのだが・・・・・・

 

 シュロは急いでスマホを取り出す。そして、インカメで自分の姿を見てみた。

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 そこには見慣れた自分の姿ではなく、妹と同じくらいの歳の、淡い紫色の、長い髪と同じ色の目を持つ美幼女。

 

「性転換の、魔道具・・・・・・」

 

 前に聞いたことのある魔道具の名前が口からこぼれ落ちる。シュロはしばし呆然と、変わってしまった自分の姿を見つめたのだった。

 

 ◇

 

「マジかよ・・・・・・まさか、俺が女の子になるなんて・・・・・・」

 

 シュロは、肩を落としながら歩いていた。魔道具で起きた色々な事象に対応している、『魔道具お助けセンター』で色々と検査してもらったところ、確かに女の子になっていた。今は、センターがくれた半袖のシャツにスカートといった服装である。

 

「まあ、ちゃんと本人確認が出来たのは良かったな」

 

 TSした時、最初に不安になるのは身分証とか、そういったヤツだが、ちゃんと本人確認ができて、身分証とかに色々備考が追加された。

 

 指紋、声帯、虹彩・・・・・・色々変わってしまってそれらで本人確認は出来ないわけだけど、このファンタジー世界では魂の形で本人確認をするという方法があるので問題はないのだ。

 

 そう、魂の形・・・・・・指紋ならぬ魂紋で。そう、魂紋・・・・・・こんもんってけっこう危ない響きだ。二番目の『ん』を『う』にしたらまずい。

 

 現に、センターの職員さんは間違えていた。シュロはセンターで魂紋確認を受けた時のことを思い出す。

 

『それではこうもん・・・・・・魂紋確認をさせていただきます』

 

『・・・・・・いやまあ、仕方ないってことはわかるんですけど、そこは噛まないように全力で努力していただかないと・・・・・・』

 

『すいません。言い間違えてしまいました。あの、言い間違いついでに本当に肛門確認させてもらってもよろしいですか?』

 

『よろしくないです』

 

 ・・・・・・

 

 ・・・・・・うん、まあいいだろう。思い出す必要のないくだらない記憶だった。

 

(そういえば、なんか気になることも言ってたな・・・・・・)

 

 シュロは、職員の言っていた気になることも思い出した。

 

『性別が変わってしまうケースは、珍しいことは珍しいですけど、ないわけではないんですよ。毎年、ある程度の数の被害者が出てきます。ですが、残念ながら治療法は見つかっていないんです』

 

『マジですか・・・・・・? いや、でもなんらかの糸口くらいはないんですか・・・・・・?』

 

『ないですね。あなたの場合は、特にその中でもレアケースみたいなので、確実にないと断言できます』

 

『レアケース・・・・・・? それはどういうことですか?』

 

 何がレアケースだというのだろう。シュロはどういうことかと聞いた。

 

『いいですか? 通常の場合、性転換の魔道具・・・・・・青いハートの宝石で性転換するんですよ。通常なら。でも、あなたはピンクのハートの魔道具で性転換した。それは、《性転換の魔道具》ではありません。それは《特殊ミッション付き性転換の魔道具》なんですね』

 

『《特殊ミッション付き性転換の魔道具》・・・・・・?』

 

『ええ。この魔道具が存在することは前々から確認されていましたが、それを使って性転換した人はいません。だから、あなたが第一号です。なので、あなたの場合は対策なんてまず打てようがないんですね。通常の場合でも大抵絶望ですが、あなたの場合は特に絶望です』

 

『マジかよ・・・・・・』

 

 シュロは頭を抱えた。

 

『まあでも、それには特殊ミッションがついているので、一応当たりではありますよ』

 

『当たり・・・・・・?』

 

『ええ。それで性転換した者には特殊ミッションが与えられて、それをクリアするとレベルアップするらしいんです。これは、知性ある魔物を拷問して得た情報なので、確かだと思いますよ』

 

『なるほど・・・・・・うーん、まあそれなら、あり・・・・・・なのか?』

 

 むむむ・・・・・・と唸るシュロを見ながら、職員はぼそっと呟いた。

 

『まあ、そのミッションって全部エッチなやつらしいですけどね・・・・・・』

 

『? 何か言いました?』

 

『なんでもないです』

 

 で、まあそのあとそのセンターでそういうことが起こった時用に常備されている服をもらって、今ここにいるというわけだ。

 

「まあ、それは良かった。とりあえずは良かったけど・・・・・・スカートとか恥ずかしすぎる!」

 

 シュロ。当然のことながら、人生初スカートである。

 

「スースーするし、恥ずかしい・・・・・・!」

 

 二十代成人済み男性なのに、こうして公然とスカートを穿くことになるなんて、流石に恥ずかしすぎる。恥ずかしすぎるのだ。女の子の体になったわけだし、別に変ではないとわかっていても普通に恥ずかしい。男としての自覚がぐらぐら揺らいでいく感覚がする。普段より視点が低いのも変な感じだし、今までに股間にあったものがなくなっている感触もかなり変な感じだ。

 

 センターではいつもはさらっとした対応をする職員が、わざわざしゃがみ込んでシュロに目線を合わせてくれた挙句、やたらと優しい口調になっていたのも、すごく奇妙な感じがして気味が悪かった。

 

「しかし、ミッションか・・・・・・レベルアップするっていうのはありがたいことだけど・・・・・・」

 

 シュロはレベルが上がりにくい体質なのだ。レベルという概念が発生してから今までに、比較的上がりやすい体質と上がりにくい体質があることがわかっている。

 

 だから、それはありがたいのだが・・・・・・

 

「でも、怪しいな・・・・・・何か裏があるんじゃないのか? そのミッションがめちゃくちゃ難しいとか・・・・・・」

 

 そんなふうに考えていた時だった。

 

 急に頭の中にピコーン、という音が鳴って目の前に文字が浮かんできた。そこに書かれていたのは──

 

『ミッション スカートをたくし上げろ。ただし十秒間はたくし上げたままでいること』

 

「・・・・・・は?」

 

◇

 

「は、スカートたくし上げ・・・・・・?」

 

 突然ミッションとやらが生えてきて、シュロは困惑していた。シュロは特殊ミッション付き性転換の魔道具で性転換したわけだし、ミッションがあるっていうのはわかってたけど、なんだこのミッション・・・・・・?

 

「いや、たくし上げろってだけでパンツを見せろとは書いて──」

 

 ミッションはステータスと同じように透明な板のようなもの──ウインドウに書かれている。ミッションの下に『※ちゃんとパンツが見えるようにたくし上げること』と書いてあった。逃げ道がない。

 

「なんなんだよ・・・・・・ちょっと特殊な性癖のヤツとかが決めてんのか? このミッション・・・・・・」

 

 実は、この魔道具で出るミッションはセンシティブなものしかないのだが、残念ながらシュロはそれを知らないのだ。まあ、知ってても防ぎようのないことだが・・・・・・

 

「いや、こんなミッションなんかやるわけないでしょ。やるわけなんて・・・・・・」

 

『このミッションをクリアすると、レベルアップするらしいです』

 

 思い出されるのはそんな職員さんの言葉だ。

 

「い、いやそうは言っても職員さんも実際に経験したわけじゃないんだろ? 間違った情報かもしれないし、そんなことのために──」

 

(でも、これでちゃんとレベルが上がればもっと強い魔物を倒せて、もっと宝箱をゲット出来る。お金を稼げて、妹に色々な物を買ってやることが出来る・・・・・・!)

 

 シュロは逡巡した。しばらくどうしようかと逡巡したが・・・・・・答えは決まった。

 

(うん、とりあえず、物は試しだ・・・・・・! とりあえずやってみなきゃわからないんだから!)

 

 とりあえず、やってみることにした。幸いにも辺りに人影はない。

 

(とりあえずやってみよう! 恥ずかしいけど、スカートを十秒たくし上げるくらいなんでもないことだ!)

 

 もしレベルが上がったら、はっきり言ってそんな羞恥なんて補って余りあるほどな見返りが得られる。そう、得られるのだ。得られるというのに・・・・・・

 

(え? やばい。めちゃくちゃに恥ずかしいぞ・・・・・・?)

 

 シュロは躊躇してしまう。すっごく恥ずかしい。顔は真っ赤だし、目はぐるぐるになってしまっている。

 

(あ、あれ? 自分でスカートを捲るのって、思ったよりも恥ずかしいな・・・・・・)

 

 初めての感覚だ。男子だった頃はもちろん味わったことのない感覚だし、女子でもこんなことする経験はなかなかないだろう。公の道路でスカートをたくし上げるなんて・・・・・・

 

(やばい、ドキドキする。へんたいだって思われちゃったらどうしよう・・・・・・)

 

 けっこう逡巡していたが、やがて意を決した。

 

(ええい男だろ! スカートの一つや二つ、すっとたくし上げてみせろ!)

 

 シュロは痛いほどに高鳴る心臓を抑えつけながら、スカートをたくし上げてそのパンツを外気に晒した。パンツも、ちゃんと女の子のものになっている。顔を真っ赤にして、目をぐるぐるにしながらスカートをたくし上げて十秒を待つ。十秒がとてつもなく長く感じられた。

 

(なんだか、こうやって自分でスカートを、こんなところでたくし上げるなんて、本当にへんたいになった気分になる・・・・・・それに、なんだか恥ずかしいだけじゃなくて──)

 

 ピコーンという音がした。見ると、ウインドウにミッションクリアという文字が出ている。いつの間にか十秒経っていたようだ。シュロは慌ててスカートを元に戻した。

 

(あ、危ない危ない。これ以上やったら未知の扉を開くところ・・・・・・い、いや違う! 未知の扉とか開くわけないから!)

 

 シュロはスカートを直して、それから辺りを見た。

 

(良かった。周りに人はいないみたいだ。目撃されなかったのが不幸中の幸いと言ったところ──)

 

 ほっと胸を撫で下ろそうとした、その時だった。

 

 シュロは道路の向かい側の歩道に、男の子がいるのを発見した。どうやら見落としてしまったみたいである。

 

 その男の子は、顔を真っ赤にしていて、その様は明らかにさっきまでシュロがやっていたことを目撃していた証で──

 

「・・・・・・っ!」

 

 シュロは同じように顔を真っ赤にすると、何か言われる前にせかせかと早足で帰っていった。

 

 そして、シュロが未知の扉を開くことはなかったのだが、この男の子は未知の扉を開いてしまい、露出羞恥モノでしか興奮できない体になってしまったのであった・・・・・・罪なTSっ娘である。

 

 ◇

 

 多少恥ずかしいことはあったものの、シュロは無事(?)に妹と暮らすアパートへと帰ってきていた。

 

「一応レベルはちゃんと上がっているっぽいから恥のかき損にはならずに済んだものの・・・・・・はあ」

 

 シュロは肩を落としながらアパートの自分の部屋のドアを開ける。

 

「ただいまー」

 

 そう言って部屋の中に入っていくとバタバタと足音がして、慌てた様子の妹のルラが走ってきた。

 

「お兄ちゃん大丈夫!? 大変なことになったって──」

 

 ルラは心配そうな顔をしていたが、シュロの姿を見るなり固まった。ポカンとした顔をしていたが、やがて口を開いて言った。

 

「もしかして・・・・・・お兄ちゃん?」

 

「うん。お兄ちゃんだよー」

 

 ルラは驚き、そのシュロの姿を上から下までしげしげと眺めていたが、やがてぱあっと表情を輝かせると

 

「かわいいー!!」

 

 そう言って抱きついてきた。

 

「うおっ! ちょ、ルラ!」

 

「えー、なになに!? お兄ちゃんすっごく可愛くなってるじゃん! なーんだ、心配して損したよ! 姿が変わって大変なことになったって聞いてたからさ!」

 

「いや、大変なことにはなってるんだよ・・・・・・」

 

「えー、でもかわいいから良くない?」

 

「良くないよ・・・・・・」

 

 ルラにとってはこのシュロの姿は琴線に触れたらしい。普段からスキンシップ多めだが、今日は特にスキンシップが激しくて、髪の毛を触って「わーすごい! さらさらだ!」とか言ったり、シュロのほっぺたを両手で持って、「すごい・・・・・・すべすべもちもちだ・・・・・・」とか言ってきたりした。

 

(全く、ルラは・・・・・・)

 

 やれやれ、とシュロは少し辟易しながらも、ルラが喜んでいる姿を見るのはやっぱり嬉しい。今までの苦労が全て消えていくようだ。パンツを見られるという苦労が・・・・・・

 

「私と同じくらいの背丈になったね!」

 

 ルラはシュロを見て、そう言って笑った。確かに、今のシュロは小学校高学年のルラと同じくらいの背丈になっている。しゃがんだりすることなしに、同じ目線っていうのはなんだか変な感じがする。

 

「なんか、兄妹だけあってけっこう私に似た感じだね!」

 

「そう?」

 

「これなら、私の服とか着れるんじゃない?」

 

「え?」

 

 言われて、シュロは気がついた。そういえば、この服はセンターからもらったやつだ。レンタルとかじゃなくて普通にくれた物だけれども、くれたのはこの一着だけだ。男の時の服はサイズが合わないから、今着れる服はこれしかないということになる。  

 

 服の問題・・・・・・それを全然考えてなかった。買うお金はないとなると、やっぱり・・・・・・

 

「あとで試着会しようね、お兄ちゃん!」

 

「・・・・・・うん」

 

 妹の服を着るしかない。兄として、かなり抵抗感はあるものの、仕方ないとシュロは渋々頷くのであった。兄としての威厳を失うことになるかもしれないと、覚悟しながら・・・・・・

 

 ・・・・・・さて。シュロは居間へと入っていく。目線がいつもより下がっているからだろう。景色がいつもとちょっと違っていて、変な感覚がした。

 

 居間のテーブルの上にノートが広げてある。どうやら、ルラは宿題をしていたようだ。

 

「お、宿題をしていたのか偉いな」

 

「えへへ・・・・・・」

 

 褒められて、ルラは嬉しそうに笑う。

 

 いつものように頭を撫でようとしたけど、小さくなっているから、いつもと違いちょっとだけ背伸びをして撫でた。

 

 ふと、シュロはルラの宿題のノートの隣に置いてある筆箱を見た。ルラの筆箱はけっこう年季が入って、ボロボロになっていた。

 

 前に、もう買い替えようと提案したことがあるのだが

 

『えー? まだ使えるし、もったいないよ!』

 

 そう言われて断られてしまった。

 

『でも、お前だってもっと新しい、かわいいやつ欲しいだろ?』

 

 シュロは食い下がったのだが

 

『もー、そんなの別にいらないよ! 今ので十分なんだから!』

 

 ルラはそう言った。けど、シュロは前にルラが最近流行りのキャラクターが描かれた筆箱を喉から手が出るほど欲しい、と言わんばかりの表情で見つめていたのを見たことがある。前に用事があって雑貨屋に寄った時にそういうふうに見ていたのを見たのだ。

 

 ルラはきっと、遠慮しているのだと思う。その筆箱は高かったし、それに筆箱を新調する余裕なんかないと思って、大丈夫だと言っているのだ。

 

(ルラ・・・・・・)

 

 ルラは相手のことを気遣えるいい子だ。シュロは、妹だからというのもあるけどただそれだけではなくて、相手のことを気遣って自分の欲しいという気持ちを押し殺してしまうようないい子でもあるから色んな物を買ってあげたいと思うのだ。だから、シュロはそんなルラのために──

 

 ピコーン

 

『ミッション ルラの耳を舐めろ』

 

 耳を舐めようと思う。

 

◇

 

(・・・・・・いや、は? 耳舐め・・・・・・? 俺が、妹に・・・・・・?)

 

 急に言われたんでうっかり何も考えずに普通に耳舐めしてしまうところだったが、良く考えればおかしいところしかない。

 

(いや、どういうことなんだよ・・・・・・なんで俺にそんなことさせたいんだよ・・・・・・というか、これなんか変なミッションしかなくないか!? たまたまか・・・・・・?)

 

 たまたまではなく、仕様であるがシュロはそんなことを知らない。

 

(バカかよ! 妹の耳舐めをするなんてそんなことする兄貴がどこにいるんだよ! そんなこと──)

 

 シュロはそのミッションを無視しようとしたのだが、頭に浮かんだのは先ほどミッションを達成することでちゃんと上がったレベルのことと、ボロボロの筆箱を使い続けるルラの姿だった。

 

(・・・・・・)

 

 シュロはしばらく逡巡していたが、やがて決心した。

 

「なあ、ルラ」

 

「何? お兄ちゃん」

 

「俺に、お前の耳を舐めさせてくれないか?」

 

 兄として未だかつて聞いたことのないセリフである。

 

 ルラは、ちょっと目を丸くして驚いたような表情をしていたが、やがてにこっと笑って言った。

 

「いいよ!」

 

「え、いいのか・・・・・・? 自分で言うのもなんだけどかなり変な頼みだぞ、これ・・・・・・」

 

「いいよ! お兄ちゃんのことだし、きっと何か理由があるんでしょ? 私は大丈夫だよ! 耳を舐めるくらい平気!」

 

 お兄ちゃんのことを信頼している、とてもいい妹である。出来ればもっとシリアスなシーンでこういうやり取りはしたかった・・・・・・。

 

「えっと、じゃあ・・・・・・舐めるね?」

 

「うん! 遠慮なくベロベロ舐めちゃってよ!」

 

「いやベロベロは舐めないよ・・・・・・犬とかじゃないんだから・・・・・・」

 

 シュロはグッと顔を近づける。妹の耳をこんな間近で見ることなんてなかなかない経験だ。

 

(あ、いや、そういえば妹の耳かきをしてあげた時はこんくらい近くで見た時もあったか・・・・・・)

 

「そういえば、最近耳かきとかやってなかったな」

 

「そうだね」

 

「・・・・・・今度やるか?」

 

「うん!」

 

 今度耳かきをする約束をしたところで、いよいよ舐めに入る。

 

(耳舐めか・・・・・・けっこう聞いたりするけど自分がやることになるとは思わなかったな・・・・・・)

 

 もちろん、シュロはスマホを持っていない。しかし、昔からの友達が、なんでか知らないけどけっこうな頻度でおすすめの耳舐めASMR音声を聴かせるためにスマホごとシュロに貸してくれるのだ。まあ、その友達なりの気遣いではあるのだと思うが、独特な気遣いではある。

 

 まあ、だからけっこう聞くのだが、まさかそれを自分でやることになるとは夢にも思わなかった。

 

(今度、自作の耳舐めASMR音声でも作ってプレゼントとかしようかな・・・・・・いや、恥ずかしいからやめよう)

 

 とにかく、今は眼前の耳である。

 

 ルラは、シュロに聞いてきた。

 

「ねえ、私のそこ、変じゃないかな・・・・・・?」

 

「別に、変じゃない。むしろ、綺麗だよ・・・・・・」

 

「そっか。よかった」

 

 ・・・・・・なんか、耳舐めをするだけだというのにちょっと妙な雰囲気である。

 

 ルラの肩に手を置き、顔を近づけていく。実際、ルラの耳は綺麗でそういう意味では舐めることにそこまで抵抗感はない。

 

 シュロは、その小さくなった舌をルラの耳の中へと挿し込んだ。

 

「ひゃっ!?」

 

「ど、どうした?」

 

「い、いやちょっとくすぐったかっただけ・・・・・・つ、続けて大丈夫だよ・・・・・・!」

 

「そ、そっか・・・・・・」

 

 シュロは言われた通り続けることにした。

 

 けど、いきなり耳の穴の中に舌を挿れるのは早過ぎたかと思って、最初は耳の外側の部分から舐めていくことにした。

 

「ん・・・・・・んむ・・・・・・」

 

 初めは、耳の外側の穴の周辺とかを舌でなぞるように丸く舐めていく。時々は、耳たぶをはむっと柔らかに、痛くないように噛んでみたりもする。

 

「・・・・・・」

 

 ルラは顔を真っ赤にさせて俯いてしまっている。やっぱり耳舐めはきつかったか・・・・・・と思いながらも、今さら止めることは出来ないとシュロはそれを続けていく。

 

 ルラはまだ小学生で、知らなかったのだ。耳舐めというものを。耳舐めの快感、心地よさというものを。しかも、その初めてをしているのは大好きな兄である。ルラには刺激が強くて、頭の中、心の中が色んなものでぐしゃぐしゃになっていた。

 

(何やってるんだろう、俺・・・・・・)

 

 シュロはそう思いながらも、心を押し殺して無心に耳舐めに専念していたが

 

(でも、ただ耳を舐めるだけっていうのもなんかちょっと寂しいよな・・・・・・)

 

 そう思ったシュロは何か言うことにした。

 

(何を言おう・・・・・・うーん・・・・・・いつも聞いてるASMR作品を参考にして・・・・・・)

 

 シュロは、一旦耳から舌を離してから囁いた。

 

「ふふっ・・・・・・耳、おいしい」

 

(耳おいしい・・・・・・? 耳おいしいってなんだ・・・・・・?)

 

 なんかちょっと変なセリフをチョイスしてしまった。

 

(聞いてる時はそんな疑問に思わなかったけど、今改めて自分で言うとけっこう変なセリフだな・・・・・・なんだよ耳おいしいって・・・・・・耳からグルタミン酸でも出てんのかよ・・・・・・)

 

 そういえば、前に耳が甘くておいしいって言われる耳舐め音声があったような気がするけど、耳が甘くておいしいわけなくないかと思ったことがある。砂糖でもまぶしてあるのかなって思った、いい思い出だ。(作者の実体験)

 

 まあとにかく気を取り直して、言葉でも責めながら舐めていく。

 

「ふふっ、真っ赤になっちゃってルラはかわいいなあ」

 

「うう・・・・・・だ、だって仕方ないじゃん・・・・・・」

 

「耳なめなめされるの気持ちいいね? ルラは耳が弱いのかな?」

 

 シュロはふーっと耳に息を吹きかけた。

 

「ひゃうっ!」

 

「びくってしちゃって、かわいいね」

 

 耳の穴の中まで舐められて、気持ちよさそうな声をあげながら背筋を走るゾクゾクとした快感に戸惑うルラ。そして──

 

(なんだか少し・・・・・・楽しくなってきたかも)

 

 楽しくなってきたシュロ。ルラを妖しげな瞳で見つめながら、薄く笑みを浮かべて耳を舐める様は、とても元成人男性とは思えないエッチさだった。子供らしい無邪気な悪戯っぽさを孕んだ妖艶さがある。

 

 シュロは耳を舐めていく。そして終わったあとには・・・・・・

 

「はあ、はあ・・・・・・」

 

 頬を紅潮させ、息を荒げたハイライトの消えたルラが床にくたっと寝転がってしまっている。

 

(やらかしたなあ・・・・・・)

 

 シュロはそれを見ながら、普通にやらかしたなと思うのだった。

 

 ◇

 

「一緒にお風呂入ろうよー!」

 

 しばらく経って。

 

 復活したルラがそんなことを言い出した。

 

「ああ、そうだな」

 

 一緒にお風呂に入るのはいつものことだ。大体いつも2人で一緒に入っている。ただ、いつもと違うのは──

 

「やっぱり女の子の体になってるんだねー!」

 

「うん、そうだな・・・・・・」

 

 服を脱いで改めて認識する。センターからもらった服を着るのにはセンターにあった早着替えの魔道具で着替えたから、性転換してから裸になるのはこれが初めてだ。

 

 シュロは曲がりなりにもハンターで、戦闘を生業としているものだ。だからけっこうがっしりした体をしていたわけだけど、その面影は完全に失われている。腕は真っ白で容易く折れてしまいそうなほどほっそりしているし、体だってほっそりとして儚げで、魔物と戦うことなんてとてもではないが出来なそうに見える。むしろ、騎士に護られる幼いお姫様のようだ。

 

 ただ、レベルとか、攻撃力や防御力などのステータスは男だった頃と変わっていないので、別に魔物と戦う分には支障はないんだろう。体が変わってしまったのに、不思議だ。

 

 浴場へ入ると

 

「じゃあ私が洗ってあげるね!」

 

 ルラがそんなことを言ってきた。

 

「別にいいよ・・・・・・」

 

「ダメだよ! 女の子の髪は乱暴に扱っちゃダメなんだって友達が言ってたんだから!」

 

「そ、そうなのか・・・・・・?」

 

「そうなんだよー。だから、私が女の子の髪の洗い方教えてあげるね!」

 

 なんだか立場が逆になっている気がする。まあいいか・・・・・・とシュロはニコニコしながら教えてくれるルラを微笑ましそうな顔で見守った。

 

 そして

 

「ひゃっ! ちょ、どこ触ってんだよルラ!」

 

「ふふふ・・・・・・さっきのお返しだよー!」

 

「ちょ、そこは・・・・・・ひゃあっ!」

 

 まあ、そんな感じでルラにたっぷりと仕返しをされてしまった。

 

「あの・・・・・・あのさ、お兄ちゃん。お兄ちゃんさえ良ければ、その、またやってくれないかな・・・・・・?」

 

「え・・・・・・?」

 

 ここにまた1人、脳を焼かれたやつが誕生したのだった。

 

 そしてこれよりのち、さらにミッションの内容はエスカレートする! 

 

◇

 

「・・・・・・今度はちゃんとしたミッションが来てくれるといいなあ」

 

 そんな時は永遠に来ない。

 

 そんなことを知らないシュロは1人そう願っていた。残念ながらこのミッションはセンシティブなものしか出てこないのである。

 

 けど、実際このミッション有用であるのは事実だ。実際に成果が上がっていて収入が少し増えた。

 

 で、まあ前まで魔物からドロップした宝物を買い取るセンターの職員さんは

 

「はい、買取ですか。はーい」

 

 とかなんとか言ってちょっとやる気ない感じだったのが

 

「わ、こんなに倒してきたの! えらいね〜。飴ちゃんあげよっか!」

 

 というふうに対応が劇的に変わった。ちょっと冷ための対応だったのがダダ甘の対応に変わったのである。センターにいる他の人たちもお菓子とかいっぱいくれるようになった。まあ、大体それはシュロの口には入らずにルラに与えられているけれども。

 

 それもメリットといえばメリットである。魔道具の効果を浴びたことによるメリットだ。

 

 ただ、もちろんデメリットもある。例えば──

 

「お兄ちゃーん」

 

「なに?」

 

「えっと、ちょっとあれを取ってほしいと思ったんだけど・・・・・・」

 

 シュロを呼んでしまってから、気がついたみたいでルラの言葉はだんだん尻すぼみになっていく。

 

「おー、別にいいよ」

 

 シュロも快諾してしまってから気づいた。

 

「・・・・・・あっ、届かない・・・・・・」

 

 小さな女の子になったせいで、高いところにあるものが届かなくなってしまったのだ。

 

 あと、普通に食べる量が減った。普通に小さな女の子は食べるくらいの量でお腹いっぱいになるようになった。そんな感じで、デメリットはそこそこある。まあ、最大のデメリットはなんかミッションがセンシティブなものしかないってところなのだが・・・・・・

 

 まあ、その最大のデメリットを抜きにして次点で嫌なデメリットとしては、やっぱりあれが挙げられる。

 

「はあ、はあ・・・・・・お嬢ちゃんかわいいね・・・・・・僕とお菓子でも食べないかい?」

 

 ニヤニヤしたいかにもな男性がシュロに向かってそう声をかけてくる。

 

(またかよ・・・・・・)

 

 シュロはうんざりした顔をした。

 

 そう、次点でキツいデメリットは、『そういう趣味を持った男性にめちゃくちゃ声をかけられるということだ。いや、むしろ見ようによっては一番キツいデメリットと言えるかもしれない。

 

 シュロは女の子になってしまったものの、恋愛対象は未だ女性だ。男性から、そういう目で見られるというのはなかなかにキツいものがある。

 

 今日も、妹と一緒に出掛けている時、怪しげな男性に声をかけられた。

 

「おや、かわいいお嬢ちゃんたちだね。おじちゃんと一緒にお菓子でも食べないか?」

 

 ニヤニヤとして、向けられる視線からしてそういう目で見ていることは明白だ。

 

 はあ、またか、とシュロはため息をつき毅然とした態度で断った。

 

「申し訳ないですけど、知らない人についてっちゃいけないってお父さんお母さんから教わってるので」

 

 とりあえず子供らしい定型文で躱わす。しかし、そういうおじさんというのはしつこいものだ。

 

「そんなこと言わずにさ! 一緒に行こうよおじさんとさ!」

 

 シュロが断っているというのに、おじさんはさらに食い下がってきた。

 

(やっぱりこういうおじさんはしつこいな・・・・・・)

 

 シュロはちょっと困って、どうしようか、誰か通りがかりの人に助けを求めようか、とか考えていると・・・・・・

 

 スッとルラがシュロの背後から出てきた。そのままおじさんの方へと近づいていき──

 

「えいっ!」

 

 男の足を蹴りつけた。

 

「ぐおっ!?」

 

 突然の衝撃に、男は足を押さえてうずくまる。

 

「逃げよ、お兄ちゃん!」

 

 その隙に、そう言ってルラはシュロの手を引っ張って走り出す。シュロはルラに引っ張られるがままに走っていく。

 

(俺を助けてくれたのか、ルラが・・・・・・)

 

 シュロは驚いて目を見開き、それからふっと微笑んだ。

 

(成長したもんだな、ルラ・・・・・・)

 

 シュロが小さな女の子になっているということもあるが、兄を守れるくらいに成長したことも事実だろう。

 

 それが喜ばしくもあり、寂しくもあるシュロだった。

 

 ・・・・・・と、まあ不審者おじさんの魔の手から妹に護られる兄という逆転現象を起こしたあと。

 

 2人が家に帰るやいなや、シュロの頭の中でピコーンと通知音がなった。ミッションが来たのだ。

 

「なんだ・・・・・・? 今度はなんだ・・・・・・?」

 

 シュロは座布団を枕にして寝転がりながら、ウインドウを開いてどんなミッションが来たのか見る。

 

「今度はまともなやつがきてるといいんだけどな・・・・・・」

 

 シュロはそう呟きながらミッションの内容を見た。そこに書いてあったのは──

 

『経験値棒レベルドレインスキルを使ってレベルドレインをしよう!』

 

 という、内容だった。

 

「『経験値棒レベルドレインスキル』・・・・・・?」

 

 聞いたことがない単語だ。そもそも、そんなスキルなんてシュロは持っていないはず・・・・・・

 

 そんなシュロの思考を見透かしたかのように、下に注釈が書いてあった。

 

『※ミッション達成のために必要な経験値棒レベルドレインスキルはすでに配布してあります。ステータスウインドウからご覧ください』

 

 ステータスウインドウを開いてみると、確かにそんなスキルが追加されていた。

 

「いつの間に・・・・・・」

 

 スキルの使い方は、大体このウインドウ上にあるスキルの名前の部分をタップすればふわっと頭に浮かんでくる。ミッションの内容は、これを使えということみたいなので、シュロは早速それをタップして使い方を見た。

 

「え・・・・・・?」

 

 そのスキルの使い方を見て、シュロは驚愕に目を見開くのだった。

 

 ◇

 

 所変わって。

 

「くそっ! 失敗してしまった!」

 

 いかにも不審者といったおじさんが路地裏で1人悔しそうに大声で喚いていた。

 

 このおじさんは、先ほどシュロとルラに声をかけたおじさんである。2人に逃げられてしまったことをめちゃくちゃに悔しがっていたのだ。

 

「別に、俺はそんな怪しくないのにな・・・・・・本当にお菓子はあげようと思ってたわけだし、あとはまあ、ちょっと言葉責めとかしてもらえればそれでいいかなって思ってただけで・・・・・・」

 

 しかし、足掻いても仕方がない。失われたロリは二度と戻ってこない。

 

「はー、仕方ないな・・・・・・前に買ったメスガキ系音声作品でも聞くか」

 

 そう呟いて、男が自分の家へ帰ろうとしていた時のことだった。

 

「あ、いた。やっぱりまだこの辺にいたんだ」

 

 声が聞こえた。軽やかで可愛らしい声だ。

 

「!」

 

 その声に男がバッと振り向くと、そこにはシュロが立っていた。汚い路地裏には似つかわしくない、天使のような、それでいてどこか蠱惑的で小悪魔的な雰囲気を併せ持つ美しい女の子で、男は思わず見惚れてしまった。今のシュロは妹から借りた白いワンピースを着ていて、正統派で清純に綺麗だ。

 

 男は一瞬見惚れてしまってから、それからハッとしてシュロに笑顔で問いかけた。

 

「やあ、お嬢ちゃん、また会ったね。僕に何か用かい?」

 

 シュロは説明しにくそうに、そして顔を赤らめて少し恥ずかしそうにしながら

 

「えっと、なんて言ったらいいかな、ええと、説明しにくいことなんだけど・・・・・・」

 

 そう言った。男は(かわいいなあ・・・・・・)と和やかな笑顔でそれを見守る。

 

 やがて、シュロは

 

「えっと、まあ言葉で説明するよりジェスチャーでやった方が早いかな」

 

 そう言って、OKと表現する時のような、人差し指と親指の輪っかのマークを作って、えぁっと舌を出した口の前でそれを振ってみせた。

 

 そのジェスチャーは、明らかに──

 

「えっ!? まさか、それってフェ──」

 

 男が目を輝かせて言うと

 

「違うから! そういう卑猥なことじゃないから勘違いしないように!」

 

 顔を真っ赤にして否定されてしまった。明らかにフェから始まってラで終わるやつのジェスチャーだったのだが、どうやら違ったらしい。同人作品とかでよくあるロリビッチ的展開がついに自分の身にも降りかかったのかと思ったのだが・・・・・・

 

「経験値棒! 経験値棒でレベルドレインがしたいのであって、別にそういう卑猥なことしたいわけじゃないから!」

 

「経験値棒・・・・・・?」

 

 男は聞き慣れない単語に首を捻った。

 

 さて! ここで『経験値棒レベルドレインスキル』の仕様について説明しよう!

 

 それは普通のレベルドレインスキルと違って、スキルによって可視化された経験値、『股間に屹立する黒光りする棒』として可視化された経験値を舐めてそこからドビュっと出てくる経験値液を飲み込むことでレベルをドレインするという仕様のスキルなのだ!

 

「・・・・・・いやあの、それってフェ──」

 

「いや違うから。レベルドレインだから」

 

「でも、股間に屹立する黒光りする棒って、そんなの明らかに肉ぼ──」

 

「経験値棒だから! 経験値棒って言ったら経験値棒なの!!」

 

 そういうことらしい。なら、なぜさっきフェ・・・・・・素振りみたいな淫猥なジェスチャーをしてしまったのか、謎だ・・・・・・。

 

 と、に、か、く! とシュロはおじさんに詰め寄った。

 

「とにかく! 協力して! どうしてもそれでレベルドレインしなきゃいけないから!」

 

「い、いやそんな急にレベルドレインしろと言われたって──」

 

 男は言いかけてはっと気がついた。これは、ひょっとしたらご褒美ではないかと。ロリっ娘からレベルドレインしたいと頼まれるなんて、こんな機会そうそうない。

 

 だから男は一瞬で手のひらを返して

 

「いいよ!」

 

 そう言った。この世界では、レベルってけっこう大事なもののはずなのだが・・・・・・

 

 一方、頼んだとはいえこうもあっさりと快諾されて、シュロはちょっと引いていた。

 

「うわ、本当にロリコンなんだ・・・・・・」

 

「くっ」

 

 その引いてる感じもちょっと興奮するおじさんなのであった。

 

 ・・・・・・

 

 まあ、そういうことで路地裏で2人は経験値棒レベルドレインをすることになる。シュロがスキルを発動すると、レベルを可視化した黒光りする方が股間に顕現した。

 

「ん?」

 

「あ、これはその、えっと・・・・・・」

 

 レベルを可視化した経験値棒というものは、その人のレベルがどのくらいかによって大きさが変わってくるものだ。

 

 つまり、レベルが高いほど経験値棒が大きく、低いほど小さくなるということで──

 

「ええ? ちっちゃいなあ・・・・・・」

 

「ぐう・・・・・・!」

 

 シュロが正直な感想を口にすると、男は悔しそうな表情をした。このおじさんは意外にもレベルが低かったみたいである。まあ、シュロも正直言ってレベルが高いわけではないのだし、この男のことをとやかく言えたものではないのだが

 

(・・・・・・ちょっとからかってやろうか)

 

 シュロはそう思った。元々このおじさんはお菓子で釣って小さな女の子を自分について行かせようとしていたのだ。シュロだって連れ去られかけたのだし、少しぐらい揶揄ったっていいと思う。

 

 そしてシュロは、イタズラっぽい笑みを浮かべてその経験値棒をつんつんと突いて言った。

 

「えー? おじさんの経験値棒ちっちゃ〜い。レベルひく〜い。こんなのでおれ・・・・・・私と遊ぼうとしてたのー?」

 

「くうっ・・・・・・」

 

「こんなレベルじゃちっちゃすぎてスライムにすら届かないんじゃないのー? 小学生だってもうちょっとおっきいんじゃない?」

 

 シュロはぷぷぷ、という顔をして指尺で小さいというジェスチャーをした。

 

「こんなんだよこんなん! お子ちゃまレベルじゃん!」

 

 シュロはここぞとばかりに煽る。そして、当のおじさんはというと

 

「くうう・・・・・・!」

 

 なんかちょっと悦んでいた。

 

「なんで悦んでんの? きも・・・・・・」

 

「くううっ!!」

 

 シュロが素で引くと男はさらに悦んでしまった。なんなんだよこいつは。

 

 まあ、いい。とにかくシュロは少し屈んで、男の股間にある経験値棒に顔を近づけた。

 

「すんすん・・・・・・くっさあ♡」

 

「え・・・・・・経験値棒って臭いの?」

 

「え、わかんない。でもなんか臭かったから・・・・・・」

 

「何由来の匂いなんだそれ・・・・・・?」

 

 まあ、とにかくくっさい経験値棒を舐めることになった。

 

「ちっちゃいから、口に含みやすいね」

 

「うう・・・・・・」

 

 追撃のひと煽りをかましてからシュロは、はむっと経験値棒を口に含む。男の経験値棒に、シュロの口内の柔らかで温かな感覚が伝わる。どうやら、経験値棒には感覚もあるらしい。

 

「えっと、こんなのやったことないんだけど・・・・・・こんな感じでいいのかな?」

 

 そう言って、シュロは舌で丁寧に、当然に拙いながらも舐め回していく。経験値棒の、亀頭、裏筋・・・・・・経験値棒の亀頭裏筋ってなんだよ。亀頭と裏筋まであったらそれはもうあれなんだよ。

 

 まあとにかく、亀頭と裏筋をシュロの湿っていて柔らかい、小さくて温かい舌が心地よく撫で回していく。そしてシュロは、ちゃんと出来てるかどうか不安なので、上目遣いで男の表情を見守っている。

 

 物理的な心地よさに、自分のものをしゃぶらせているという征服感、それにこんな清らかでかわいらしい女の子にそんなことをさせているという背徳感。それらが、男の背筋をぞくぞくさせるほどの快感となって脳みそのてっぺんまで貫いた。

 

(なんか・・・・・・ちょっと面白いかも)

 

 そして、快感に悶える男を見て、シュロは自分が大の男をそんなふうにさせることをちょっと面白いと感じ始めていた。危ない扉を開きかけている。

 

 シュロは、わからないながらもとりあえず(こういうふうにすればいいのかな・・・・・・)と思うことをやっていく。拙いながらも、それが男に興奮を与えていく。

 

「ちょ、経験値棒じゃない方の棒まで屹立させないで・・・・・・」

 

「いや、これは屹立しても仕方なくない?」

 

 ・・・・・・まあそんなこんなで。しばらく、その路地裏にはぴちゃぴちゃ、じゅぽじゅぽという音が鳴り響いた。

 

 そして、ついに──

 

「うっ!」

 

「!」

 

 その瞬間が来た。男が頂点に達してシュロの口内に経験値液が発射されたのだ。

 

 シュロは吐き出すことなくそれを飲んだ。今回のミッションでは現場で手に入れた経験値、レベルがそのまま報酬となるのだ。

 

 シュロはそれを飲んで、それからうえーっという表情をした。

 

「うえぇ・・・・・・生臭い・・・・・・まずい・・・・・・」

 

 白濁した大量の経験値液を飲んで。

 

 男はレベル1になってしまったのだろう。経験値棒はさらに小さくなってしまっていた。

 

「うわ、もっとちっちゃくなっちゃったねー。こんなの、スライムに届かないどころか、(スライムに攻撃が)挿入ってることすら気がつかないんじゃなーい?」

 

「うう・・・・・・」

 

「ざっこ〜♡」

 

「うう・・・・・・」

 

 やっぱり男はどこか嬉しそうだった。

 

 そして

 

「ありがとう! お小遣いあげるよ!」

 

「え・・・・・・? あ、どうも・・・・・・」

 

 シュロはお小遣いをもらってしまった。3万円。

 

 帰路にて。

 

(なんか、はたから見たら完全に路地裏でえっちなことしてお金をもらった図だよな、これ・・・・・・)

 

 そう考えたシュロは、少しだけ穢されたような気分になるのだった。

 

 

 

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