主人公が恋珀を名前呼びし始めるシーンを描写し忘れたので初投稿です!
もし要望があれば自己紹介その他諸々含め番外編を作るかも?
廃墟での暮らしが始まって、しばらく経った。
最初は互いに警戒していた僕たちも、今では同じ空間で過ごすことが当たり前になっていた。
朝になれば目を覚まし、簡単な食事を用意する。昼間は建物の掃除や必要なものの調達をして、夜になれば火のそばで過ごす。
そんな何気ない日々が続いていた。
「お主、そこにあるものを取るのじゃ」
「これ?」
「そうじゃ。それじゃ」
恋珀が指さしたのは、少し離れた場所に置いてある道具だった。
僕がそれを手渡すと、彼女は満足そうに頷いた。
「うむ。ご苦労」
「自分で取りに行けばいいのに」
「ワシは今、忙しいのじゃ」
「何してるの?」
「……考え事じゃ」
そう言って、恋珀は腕を組んだ。
どう見ても、ただ座っているだけにしか見えない。
「そっか」
僕が笑うと、恋珀は少しだけ頬を膨らませた。
「なんじゃ、その顔は」
「いや、何でもないよ」
「まったく……人間というものは、余計なことばかり考える」
そう言いながらも、彼女の口元には小さな笑みが浮かんでいた。
その日の夕方。
僕は外から戻り、手にしていた荷物を床に置いた。
「ただいま」
返事はなかった。
いつもなら何かしら文句を言いながら顔を出す恋珀が、今日は姿を見せない。
少し不思議に思い、建物の奥へ向かった。
すると、窓際に恋珀が座っていた。
三本の尾を身体の周りに広げ、外の景色を眺めている。
「恋珀?」
「……む。戻ったか」
「何してたの?」
「外を見ておっただけじゃ」
僕も彼女の隣に座った。
窓の向こうには、夕日に染まった景色が広がっていた。
しばらく二人で眺めていると、恋珀がぽつりと口を開いた。
「お主は、ここで暮らしていて退屈ではないのか?」
「どうして?」
「人間はもっと賑やかな場所を好むものじゃろう。街へ行けば人も多い。店もある。楽しめることも多いはずじゃ」
「僕は、今の生活が好きだよ」
「……そうか」
恋珀はそれ以上、何も聞かなかった。
ただ、少しだけこちらに身体を寄せてきた。
その距離が、以前より近くなっていることに気づく。
「恋珀は?」
「何がじゃ」
「僕と暮らすの、嫌じゃない?」
彼女は驚いたようにこちらを見た。
そして、少し考えるように目を伏せた。
「……嫌なら、とっくに追い出しておる」
「そっか」
「それに、お主が戻ってくると、この場所が少し賑やかになる」
「それは褒めてる?」
「好きに受け取るがよい」
恋珀は顔をそらした。
けれど、隠しきれないほど頬が赤くなっていた。
僕はそれ以上からかわず、再び窓の外を眺めた。
夕日はゆっくりと沈んでいく。
この場所に来る前の僕は、明日が来ることに何の期待もしていなかった。
けれど今は、明日も彼女と過ごせることを、少しだけ楽しみにしている。
それはきっと、小さな変化だった。
恋珀にとっても、同じだったのかもしれない。
溜めてた分はここまで
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