この二次創作の主人公、唯野戦人くんは転生者です。
幼稚園でのヒーローごっこ中に、急に個性に目覚めて暴走した子に巻き込まれ、その時の衝撃で前世を思い出しました。
転生ものとしては良くある展開ですが、戦人くんもこの手の転生者の例に漏れず、前世で見掛けた事のある漫画の世界に転生したと気付いてテンションがぶち上がりました。
ヒロアカという漫画は最初だけしか読んでいませんが、登場人物がそれぞれ個性と呼ばれる特殊能力を持っていたのは覚えています。
こういう転生物は、特典として凄い個性が手に入るものです。
その個性を使ってヒーローとして活躍しよう。
戦人くんはそう考えて、その日から身体を鍛えることにしました。
幼稚園を卒園し、小学校も卒業しました。
それでも困った事に、個性には目覚めませんでした。
いえ、とっくに気が付いていました。
前世には存在しなかった感覚。
これが個性です。
でも、誰にもそれを証明できません。
早熟で、同年代の誰よりも早く特訓を開始した、それ故に同年代の誰よりも鍛えられた無個性、或いは没個性。
それが戦人くんへの評価です。
その彼が雄英高校のヒーロー科を受験すると聞いても、誰も驚きません。
だってその為に、あれだけ頑張っているのだろう。
受かると良いねと、皆が言います。
勉強もして、スポーツも万能で、内申点を稼ぐ為だと公言しながら面倒な頼みも聞いてくれる努力の人。
あれでまともな個性が有ったら良かったのにね。
有りました。
だから、受験の時にも困りません。
戦人くんは知りませんでしたが、原作主人公と同年代だったので、ヒーロー科の入試ではロボットを倒す事になります。
極論すれば、透明なだけの女の子でも点数を稼げてしまえるテストです。
名作TRPG、ソードワールドRPG基準でファイター技能10まで鍛え、能力値も経験点を大量に割り振った戦人くんに掛かれば、無双とは言わないまでも問題なくロボを破壊し、点数を稼げます。
最後に出現した0ポイントの巨大お邪魔ロボに対しても、脚の関節回りを狙ったり、他の受験生と協力して行動を阻害したのもポイントは高いだろうと戦人くんは自己評価しています。
まだ前世で読んだ範囲なので、レスキューポイントの存在も戦人くんは知っていました。
だから、多分合格できたに違いない。
勿論、その判断は間違っていました。
集まってモニターを見つめる雄英教師陣は、みんなとても渋い顔をしています。
唯野戦人、無個性らしき受験生です。
いえ、無個性ならそこまで問題ではありません。
原作主人公、緑谷出久くんも同じです。
基本的に個性が目覚めるのはもっと子供の頃ですが、第二次性徴等が切っ掛けという人も居ない訳ではなく。
だから、戦人くんが今まで無個性というのも、そこまで奇妙な話ではありません。
ただ、彼は入学願書に自分の個性をこう記載しています。
個性名「HFO」
身体能力が高いのは、その個性の御陰だそうです。
分かりづらいアルファベット三文字の個性名は、個性が教えてくれたのだと彼は言いました。
実の所、無個性でもそれっぽい個性があるフリをして受験する子供は居ます。
所謂没個性でも、ちょっと盛って申告する子供もそれなりに居ます。
最近強くなったから個性届とは名前が違うけど、というのはある意味お約束の言い訳です。
そういうお年頃だから仕方ありません。
ただ、戦人くんの場合は少し違います。
あの伝説的なヴィランの略称に良く似た名称の謎の個性。
その個性由来の身体能力強化が受験前に「急に発現」した受験生。
緑谷と違ってオールマイトの後ろ盾もありません。
呑気に合格させるのは愚かしいが、放置したら何が起きるか分からない。
一応、点数は合格圏内だし、要監視対象として入学させてみる方がマシなのでは?
ということで、でっち上げられた特別枠での入学です。
なので、A組21人となりました。