僕のトリオンアカデミア   作:ヤマフジ

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ワートリで好きなキャラはレイジさんと村上です。


入学試験

『受験票、ちゃんと持ったか? 筆記用具とかハンカチとかも』

 

「昨日何度も確認したから大丈夫だよ、おじさん。母さんもだけど、心配しすぎだって」

 

スマホから聞こえる声に、ほんの少しだけうんざりした気持ちになる。自分のことのように気にかけてくれるのは嬉しいが、それでも心配しすぎではないだろうか。

 

『いやぁ、お前のことだから大丈夫だとは思ってるけどな。なんかこう、ソワソワしちまうっていうか』

 

「それならいつもみたいにドーンと構えててよ。いい知らせを持って帰れるように頑張るからさ」

 

『──へっ、そうかよ。なら、とびっきりの合格祝いを用意して待ってるぜ。頑張れよ、シンジ』

 

「うん、行ってきます」

 

激励を受けて通話を終える。今日までにできる限りの準備は尽くした。あとはそれを全部ぶつけるだけ。

「よし、行くか!」

 

リュックを背負い、静かに気合いを入れてからホテルの部屋を発つ。ロビーを抜けて外に出ると、吸い込んだ空気はまるで気を引き締めろと言ってくるかのように冷たかった。

 

俺こと『木崎シンジ』、15歳。この日が雄英高校入学試験当日の朝だった。

 

***

 

『雄英高校』

 

No.1ヒーロー『オールマイト』をはじめ、数々の名ヒーローを輩出してきたヒーロー科の超名門校。

 

今年も1万を超える受験生が、定員40名のヒーロー科への合格を目指し、その校舎に足を踏み入れていた。

 

受験生たちの表情は様々だ。緊張に顔を青くする者。緊張を飲み込み、決意の表情を浮かべる者。そもそも自身の合格を疑いすらしない者。

 

そして、そんな受験生の中でも特に注目を集める生徒が1人いた。

 

「お、おい。見ろよアイツ……」

 

「デッカ!? なんだありゃ、異形系の個性持ちか?」

 

「あんなのと競い合わなくちゃならねぇのか……」

 

口々に言葉を漏らす生徒たちの視線の先には、1人の男子がいた。いや、少なくともその体格だけを見れば、とても同年代の学生とは思えなかった。

 

190センチを超えているであろう身長に、制服の上からでも隠しきれない存在感を放つ筋肉。人外の姿を有した生徒も多くいる中で、それでも彼の人間らしい体格は「破格」の一言に尽きた。

 

だが、周囲の受験生たちが強力なライバルの存在を認め、一段と気合いを入れ直す中、当の本人はというと──

 

(雄英まじでデッケェ! これ学校じゃなくてもはや町だろ!)

 

こちらはこちらで、会場の広大さに圧倒されている最中なのであった。

 

***

 

「筆記試験どうだった?」

 

「マジでやべぇ……想定より遥かに難しかった……」

 

「さすが偏差値79。こりゃ実技でも気は抜けねぇな」

 

筆記試験を終えて、今俺たちは実技試験の説明を受けるため大講堂に集められていた。

 

周囲では筆記試験の話題で持ち切り。手応えがあったと話す受験生たちでさえ、余裕のある者はごくわずかな様子だった。

 

(筆記は何とかなったけど、問題はここからの実技試験だよな)

 

何しろ国内最高峰のヒーロー科だ。どちらかを落としても合格できるなんて甘い考えは捨てるべきだろう。そうして気持ちを切り替えていると、壇上に1人の人物が現れた。

 

『受験生のリスナー、今日は俺のライブにようこそ! エブリバディ セイ ヘイ!』

 

無言のレスポンスに迎えられ登場したのは、ボイスヒーロー『プレゼントマイク』。ラジオ番組などで絶大な人気を誇るプロヒーローだ。

 

雄英高校の教師は全員現役のプロヒーローとは聞いていたが、こうして目の当たりにすると改めてその凄さを実感する。

 

(うおおお! プレゼントマイクだ! これが説明会じゃなかったら絶対レスポンス返すのに!)

 

気持ちを切り替えたばかりだったけど、正直、内心では興奮しっぱなしだった。

 

『こいつはシヴィー。なら受験生のリスナーに実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ』

 

いけねぇ、さすがに概要はちゃんと聞こう。興奮しすぎて聞いてませんでしたじゃ笑い話にもならん。

 

『入試要項通り、リスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!』

 

続く内容は以下の通り。受験生は各演習場に分かれて仮想敵(ヴィラン)であるロボットと戦闘を行う。

 

仮想敵は3種類、それぞれ攻略難易度によって撃破時の獲得ポイントが割り振られており、実技試験はこのポイントをどれだけ獲得したかによって合否が判定されるとのことだ。

 

もちろん、巻き込み事故ならともかく明らかな他受験生への攻撃はご法度だ。実際そんなことしてくるやついないだろうから一応の注意なんだろうけども。

 

(ロボ、ロボかぁ……行動不能にすれば撃破判定みたいだし、下手に完全破壊を狙うこともないか。足かカメラを潰すだけでもいけるかも──ん?)

 

内容を整理して方針を考えていると、あることに気づいた。プレゼントマイクの話では仮想敵は3種類と言っていたが、配られた資料には4(・)種(・)類(・)目(・)の(・)仮(・)想(・)敵(・)が掲載されている。

 

掲載ミスというのも考えづらいが、これはどういう扱いなんだろうか。

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

そんな疑問を抱いていると、堂々とした挙手と共に1人のメガネ男子がライトで照らされる。プレゼントマイクがそのまま質問を促すと、これまた堂々とした声で彼は言葉を続けた。

 

「プリントには4種の敵が記載されています! 誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態。我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求め、この場に座しているのです!」

 

気になっていたところにタイミング良くツッコんでくれた。サンキューメガネ君。ただ、あまりにも言葉選びが真面目すぎやしないだろうか。

 

なんかついでと言わんばかりに振り返って後ろの男子生徒に注意まで始めた。真面目が人の形してメガネをかけたようなやつだな。

 

『オーケーオーケー。受験番号7111君、ナイスなお便りサンキューな』

 

そしてプレゼントマイクからの回答はこうだ。4種類目の仮想敵は0ポイント。各会場に1体配置され、所狭しと暴れ回るお邪魔ギミックである。

 

倒せないことはないが、倒したところで得点はない。受験生たちは上手く避けることをお勧めする。

 

──仮想とはいえ敵を避けて通れ、ねぇ。

 

そんな違和感を抱きながら、説明はスムーズに終了した。

 

『最後にリスナーへ、我が校の校訓をプレゼントしよう』

 

『かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者、と』

 

『さらに向こうへ──Plus ultra! それではみんな』

 

良い受難を──そんなプレゼントマイクの激励を受け、俺たちは各会場へ向かうのだった。

 

***

 

(いや、町ぐらい広い学校って思ってたけど、本当に町があるってどういうことよ!?)

 

バスに乗り演習場に到着して浮かんだ感想はこれだった。こんな会場が敷地内にいくつもあるとか、とんでもねぇな雄英高校。

 

それはさておき──実技試験では持ち込みが自由とされていたためか、周囲に目を向けると準備運動を行う生徒以外にも、装備の確認や調整を行っている姿が見られた。

 

俺も念入りに体を解し、開始の合図を待つことに──

 

『はいスタート』

 

──そういうパターンね!

 

戸惑う受験生たちを置き去りに、演習場のゲートに突入する。最初の目的は──

 

(中央に向かいつつ状況把握!)

 

個性を発動、両脚にエネルギーを集中し、強化した脚力で手近なビルの屋上へと跳び上がり、周辺を見渡す。

 

(中央エリア及び北地区、東地区に仮想敵確認。撃破までの最短ルートは──)

 

思考を止めることなくビル上から最も近い仮想敵へ突撃、強襲をしかける。

 

『ヒーロー発見! ブッコロス!』

 

「そうかよ!」

 

脚力の強化に使っていたエネルギーを両手に集中、キューブ状に展開、弾(・)丸(・)を生成する。

 

「アステロイド!」

 

弾丸を仮想敵に向けて射出。着弾した頭部とホイール部分が破壊され、仮想敵が停止する。1ポイント獲得。

 

(アステロイドは問題なく通る。潰すなら頭の方が確実か──)

 

『ブッコロス!』

 

撃破時の情報を整理していると、ビルの壁をぶち破って仮想敵が奇襲。弾丸の生成は間に合わないと判断する。

 

『ブッコロ──』

 

「スコーピオン!」

 

エネルギーを今度はナ(・)イ(・)フ(・)型(・)に(・)成(・)形(・)。振るわれた仮想敵の腕を避けつつ、すれ違いざまに振り下ろして頭部を切断。これで2ポイント獲得。合計3ポイント。

 

「攻撃は通る。ならあとはガンガンいこうか!」

 

仮想敵の強度をある程度把握した俺は、その後も順調にポイントを積み重ねていった。

 

***

 

「いやぁ、今年の受験生も豊作だねぇ!」

 

「そうですね、根津校長」

 

実技試験を映し出すモニタールームにて、校長である根津を始めとした雄英教師陣が、受験生を見定めるために映像へ視線を送っていた。

 

「A会場の彼、いいですね」

 

「スタートから仮想敵撃破まで一切の迷いなし。いいわね、そそるわね!」

 

セメントス、ミッドナイトの視線の先に映されていたのは、規格外の体躯を誇る1人の受験生──シンジだった。2人の評価を聞き、他の教師たちもそのモニターへと視線を向ける。

 

「たしかに、今年の受験生の中では頭1つ抜けていますね」

 

「おや、相澤君が受験生を褒めるなんて、珍しいこともあったものさ!」

 

「あくまで学生レベルでの話です」

 

モニタールームに転がる謎の寝袋──その中からモニターを見つめる相澤は、手元の資料に目を落とした。

 

『木崎シンジ』

 

個性『トリオン』

トリオンと呼ばれる生体エネルギーを自在に操る。戦闘では主に身体能力の強化、弾丸や武器を生成しての攻撃などに利用される。

 

ただし、トリオンを過度に消費すると五感が極度に過敏になり、最悪の場合は行動不能に陥る。

 

(使い方次第であらゆる状況に対応できる万能の個性──と、一言で結論づけるのは簡単だがな……)

 

身体能力強化から武器の成形への切り替え、それに伴う状況判断能力。個性の扱いだけに絞っても、学生にとってかなり難易度の高い技術であることを相澤は見抜いていた。

 

同時に、ここに至るまでどれだけの鍛錬を積んできたのかも。

 

「──けど、本番はここからなのさ」

 

根津校長がリモコンを操作する。モニターに映し出された景色が小刻みに揺れ始めた。

 

「圧倒的脅威、これを前にして受験生(キミ)たちはどうするのか。お手並み拝見といこうじゃないか」

 

お邪魔ギミックである0ポイント仮想敵。その巨影が、演習場を覆った。

 

***

 

──0ポイント仮想敵起動より数分前──

 

「ふぅ……かなりポイントは稼げたな」

 

だいたい40ポイント超えたぐらいか。途中から数えるのやめてたから正確な数字は分からんくなってるけども。

 

試験時間ももうすぐ残り5分、こっからもう一段ペースをあげて───

 

BOOOM!!!

 

「うおっ!? なんだ!?」

 

突然近くにいた仮想敵が爆散し、その衝撃に巻き込まれ軽く吹き飛ばされてしまった。ここまで戦った仮想敵の中に、こんな攻撃をしてくるやつはいなかったはずなのに。

 

だが、すぐに体勢を立て直し、爆発が起きた方向に目を向けるとその原因はすぐにわかった。

 

残骸となった3ポイント仮想敵の上に1人の受験生がいる。トゲトゲとした印象を受ける金髪に、これまたトゲトゲとした鋭い目付きが彼の気性をこれでもかと表しているようだった。

 

(とんでもねぇ爆発だな。火力だけなら現状でもプロで通用するんじゃ──いや、考察は後だ。さっさと次の仮想敵を倒すぞ)

 

そう考えたところで2体の2ポイント仮想敵が接近してくる。片方をアステロイドで即座に撃ち抜き、もう一体を引き付けてスコーピオンで仕留めようとしたところで──

 

BOOOM!!!

 

「っっっ! はぁ!?」

 

目の前の仮想敵が爆散し、再び巻き込まれかけた。というより、これはどう考えても。

 

(正気かこいつ!? 今確実に、俺(・)を(・)巻(・)き(・)込(・)む(・)前(・)提(・)で(・)攻(・)撃(・)し(・)た(・)ぞ(・)!)

 

あの距離、あのタイミングで攻撃すれば俺を巻き込むことは予測できたはずだ。

 

自分の攻撃範囲を把握しきれてないのか──いや、めちゃくちゃな奴だが、細かな個性の扱いに技術の高さが見て取れた。てことは本当にわざとやってんのか?

 

「おい」

 

「ん、なんだよ?」

 

「俺の近くに寄るんじゃねぇよモブが。邪魔だからあっち行ってちまちまポイント稼いでろ」

 

「──は?」

 

──こいつは一体何を言ってるんだ?

 

そもそも寄ってきたのはお前だし。ましてや攻撃に巻き込んできたのもお前だろ。

 

いやもっと言いたいことはあるけどとりあえずは──

 

「危ねぇだろうが!」

 

「あぁ?」

 

「2回も爆発に巻き込みやがって、これが実際の災害現場だったらどうするつもりだったんだ!」

 

百歩譲って今のが故意じゃないにしても、ヒーロー目指すならもっと実戦を想定すべきだろ! ましてやほかの受験生(ヒーロー)を巻き込むなんて論外にも程があるわ!

 

「知るか。巻き込まれるようなクソムーブかましてんのが悪ぃんだよ。そもそもこれは実戦じゃなくてただの試験だろうが」

 

「んだとコラ! ふざけんじゃ──」

 

ドガアアアアアン!!!

 

「「っ!?」」

 

3度目の轟音。だが目の前の爆発男の仕業じゃない。地面が小刻みに振動し、巨大な影が俺たちのいるエリアを覆う。

 

「なんだよ、あれ……!?」

 

──そこに居たのは、ビルの屋上に手を掛け、こちらをのぞき込む巨大なロボットだった。

 

「うわあああ!?」

 

「なんだよこのロボット!?」

 

「まさか、説明会で言ってた0ポイントってこいつのことか!?」

 

悲鳴を上げながら受験生たちがその場から逃げていく。誰もが立ち向かうことを即座に諦めるほどの脅威がそこにいた。

 

そんな中で俺は──

 

(倒せる──いや無理だ! 現状の俺じゃどう考えても火力が足りない!)

 

ほかの受験生と同じように撤退を選ぼうとして──

 

「た、助けて──」

 

「──え?」

 

視線の先で、他の受験生に向かって瓦礫が落ちていくのが見えた。

 

「アステロイド!!!」

 

最大出力の弾丸を瓦礫に撃ちこみ破壊する。撤退の2文字はこの時点で頭から消えていた。

 

「無事か!?」

 

「あ、ありが──」

 

「動けるならさっさと退け! ちゃんと生きて帰ることもヒーローの仕事だ!」

 

感謝の言葉を遮って助けた受験生をさっさと下がらせる。頭を下げて去っていくのを確認してから正面に向き直った。

 

(ここで逃げたら、さっきみたいなやつが増えるかもしれない。でもどうする? 俺じゃこいつを倒せないのは変わらない)

 

残りのトリオンを全て使っても火力不足という現実は覆らない。学生レベルでそれだけの個性を持ってるやつなんて───

 

「────あ」

 

いる。1人だけ、確実に。プロにも匹敵しうる火力を持ったやつが!

 

視線を周囲に巡らせる。あんだけ強気な性格だ。素直に撤退してるとは思えない。

 

そして──

 

「いたぁ!!!」

 

「うおっ、なんだテメェ!?」

 

0ポイント仮想敵の進行ルートから少し外れたビルの上にアイツは居た。俺が突然詰め寄ったせいか、少し戸惑っているようだった。

 

「おいボンバーマン!」

 

「誰がボンバーマンだ殺すぞ!」

 

「あのロボットを止めたい。力を貸してくれ!」

 

「あぁ?」

 

こいつの力は確実にあの仮想敵を止めるための突破口になる。気性の荒いやつだが、仮にもヒーロー志望ならこの提案にも乗ってくれるはず──

 

「はっ、知るかよ。止めたきゃ一人で行ってこい」

 

「ですよね! 素直に応じるわけないか!」

 

「そもそも、あのロボはマイク野郎も避けろつってたろうが。勝てねぇかもしれねぇ相手に突っ込むなんざ、それこそバカモブのすることだろ」

 

「ぐっ……」

 

たしかにそうだ。正直、さっきの受験生を助けた時点で、あの仮想敵に関わる理由は無いのかもしれない。

 

──でも、それでもだ。

 

今になって、説明会で感じた違和感の正体が分かった。

 

今回は試験だから。実際の現場ではないから──そんな考えのまま仮に合格して、ヒーローになるなんてのは、俺は嫌だ。

 

「──そうか、わかったよ」

 

「ちっ、無駄な時間取らせやがって。クソモブが──」

 

「そもそもお前のし(・)ょ(・)ぼ(・)い(・)爆(・)破(・)に期待した俺が間違いだった。変にアテにして悪かったよ」

 

「──あ"あ"ん!?」

 

だから意地でもこいつを利用する。

 

たとえエゴだと言われても、俺がなりたヒーローになるために!

 

「いやぁどうにもお前が不安そうに見えたからさ。やっぱり俺も諦めて撤退することにするよ」

 

「ふざけんなテメェ! その気になればあんなクソロボ粉々にできるわボケェ!」

 

──その言葉を待っていた!

 

「言ったな? じゃあ手伝えよ!」

 

「なっ……クソが! なんか手はあんのかよ?」

 

「狙いは頭だ。俺の射撃で注意を引きつつ限界まで装甲を削る。そこを叩いてくれ」

 

「勝算は?」

 

「俺も踏ん張るけど、はっきり言ってお前次第。粉々にできんだろ? 頼りにしてるぜ」

 

「……試験終了10秒前。そこで爆破をぶち当てる。それまでは死ぬ気で削れ」

 

「上等。まかせとけ!」

 

言葉を残して移動開始。ビルからビルへ跳び移り、仮想敵の頭部に最も近い場所へ移動する。

 

「最大出力、アステロイド!!!」

 

両手にトリオンキューブを展開。普段なら複数の敵を狙うために分割して放つが、今回は威力重視。分割せず、そのまま0ポイント仮想敵の頭部に叩き込む。

 

「っ! やべぇ!」

 

隣のビルに跳び移った直後、無造作に振るわれた腕でさっきまで足場にしていたビルが一瞬で瓦礫の山となった。

 

──残り30秒

 

「っ……クソっこんな時に……」

 

光が目に突き刺さる。

 

耳が音を拾いすぎる。

 

演習場に漂う僅かな匂いに吐き気を催し。

 

肌に触れる空気の感触すら不快に感じた。

 

個性の副作用、過剰なトリオン使用による極度な五感の過敏化だ。

 

──残り20秒

 

「まだ、まだあああああ!!!」

 

それでも、撃ち続ける。

 

誰かに願われたからではなく。自分の理想を貫くために。

 

頭部の装甲には、確かな亀裂が走っていた──残り15秒。

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

最後の力で飛び移ったビルの上で倒れ込む。もはやトリオンが完全に尽き、弾丸の生成すらできなくなった。

 

仮想敵が腕を振り上げる。もはや動くこともできなくなった俺は、ただ仰向けで空を見上げて──

 

「──悪ぃなデカブツ……俺たちの勝ちだ」

 

──残り10秒

 

「──死ねぇ!!!」

 

上空から降り注ぐ大爆発。それの衝撃は亀裂の中へと叩き込まれ、仮想敵の頭部を完全に破壊した。

 

「──ははっ、すっげぇや」

 

協力を求めて正解だった。あいつは将来すごいヒーローになるのかもしれない。回らない頭でそんなことを考えていた。

 

『タイムアーップ! これにて実技試験終了だ!!!』

 

そして、スピーカーから聞こえたプレゼントマイクの声を最後に、俺は完全に意識を手放した。

 

 




読了ありがとうございました。

最後に今作主人公であるシンジのプロフィールと、個性の詳細説明を書いておきます。

名前 木崎シンジ
年齢 15歳(入試時点)
誕生日 7月2日
身長/体重 191cm/96kg
趣味 トレーニング、料理
外見
ワートリのレイジさんにそっくり。ただしお母さんの血によって優しげな顔立ちに生まれた

性格
普段は真面目で落ち着いているが、ノリが良く、時折年相応の幼さを覗かせる。

個性『トリオン』
主な説明は作中の通りですが、ここではより詳細な説明を書きます。
まず今作においてこの個性には2種類の運用方法があり、それが『直接操作』と『コスチューム、サポートアイテムの動力源としての運用』です。こちらは個別に解説します。

『直接操作』
作中で用いた弾丸やナイフの生成、身体能力の強化などの運用方法です。
弾丸はワートリ原作の「射手」、ナイフは「スコーピオン」、身体能力の強化はトリオン体による身体能力の向上をヒロアカの個性として落とし込んだものになります。

『コスチューム、サポートアイテムの動力源としての運用』
こちらは次回以降でで登場する予定なのですが、トリオン体と各種トリガーを、コスチュームとサポートアイテムに当てはめたものです。
なお先に言及しておきますが、戦闘の緊張感を損なわないために「ベイルアウト」の機能は無いものとしました。

サポートアイテム例
孤月、レイガスト、各種銃トリガー、狙撃用トリガー、各種オプショントリガー etc.....

ヒロアカ世界にトリガーを持ち込みたい。けどシンジをサポートアイテム頼りのヒーローにはしたくない。そんな思いで設定を落とし込んだ結果、このような形になりました。
ワートリ原作の設定と違ってくる部分もあるでしょうが、それはこの作品においてのオリジナル設定として考えていただければと思います。

それでは今回はここまで! 次回をお楽しみしてもらえると嬉しいです!

P.S.
お気に入り登録とか評価とかコメントとかいただけるとトテモウレシイデス。


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