魔女認定をされた元聖女は異世界から喚んだ大悪魔と逃亡の旅をしています。。 作:濁酒三十六
ラングウォルド王国の国境近くの林道。黒いフードマントに身を包んだ小柄な人物が一人歩いていた。
空は青く晴天、鳥が風に身を任せて滑空している。黒マントの人物は足を止めてニコリと笑い、気持ち良さげに空を仰いだ。すると一人しかいない道、両端の森にも人影はないのに別の女性の声がその人物の耳元に聞こえた。
《良い天気だよな、鳥どもが風に乗って遊んでやがる。》
乱暴な口調だが機嫌は良さげな様だ。人物はフードを取って虚空に独り言ちする。
「
フードで隠していた素顔は少し乱れた白髪ショートヘアで幼さが少し残った勝ち気なボーイッシュな少女であった。
「国境はまだ先だね。」
《疲れたなら
「まだまだ歩けるよ、ありがと
そう言って歩き続けるかと思えば少女は急に足を止めた。
周囲の気配に微かな人の気配が幾つも漂い出して少女は警戒する。
「アガレス、刺客…だよね?」
《あぁ、殺してしまっていいか?》
「いいよけど何人かは帰してあげて。…帰る気なかったら仕方ないけど。」
《
「…なら守護獣もいるね、聖女は守護獣と一緒に絶対生きて帰してあげて。」
《お優しいこって。》
「優しい人は殺しを公認しないよ。」
少女が表情を険しくさせ、彼女の隣にはいつの間にか純銀の鎧に身を固めた金髪サイドポニーテールの女騎士が現れ、その手には騎士の背を越えたハルバートが握られブンッと片手で振り回した。
「さて、誰を生かして誰を殺すか、オレの気紛れでお前等の生死が決まるぜ!」
気付けば二人の周囲を十五人程の黒装束の刺客が取り囲み、その中に白い法衣を着た栗毛オカッパの少女が睨んでいた。
「見つけました
栗毛オカッパの聖女は灰髪の少女ユーリシアに敵意を剥き出しに口上を口にすると黒装束は両手に短剣を握り、女騎士アガレスもハルバートを構えた。
オカッパ聖女が勢いつけて右手をバッと真っ直ぐに上げた瞬間、黒装束が一気に飛び出してユーリシアとアガレスを襲う。…が、先ず一人目が胴体を分断されて臓物が踊るとオカッパ聖女が目を背ける。
「安心しなオカッパ、お前は生かしてやる。」
アガレスが残忍に嗤う。そして二人目三人目と刺客を真っ二つにする。ユーリシアも腰にぶら下げていた組み立て式の片手クロスボウ…ボーガンを取り出して矢を装填、刺客一人を仕留める。
「
「自衛よ、ジエイ!」
五分足らずで七人を仕留めると残った黒装束が後退してオカッパ聖女が動いた。
「
彼女の掛け声で光の柱が立ち上がり、額に一本の角を生やした白馬…
「
オカッパ聖女が叫ぶとユニコーンが目掛けて突進、額の一角を向けてアガレスに襲い掛かった。アガレスはハルバードを角で弾き、突進の軌道を変えると後方へ飛び退いた。
「ユーリ、あの一角獣、
「ちょっと待って、ねぇ、オカッパちゃん。」
「おっ、オカッパ!?」
「そのユニコーン引っ込めなさい、
ユーリシアが不敵に笑う。オカッパ聖女はその笑顔が気に入らなかった事と自身の守護獣を侮られた事に憤慨する。
「
彼女はそう啖呵を切るか、ユーリシアは逆に憐れみの目を向ける。
(
「アガレス、オカッパちゃんは覚悟が決まってる。
「よ〜し、契約者の許可が出たぜ聖女様。」
アガレスに残忍な笑みが張り付き、右手に握られたハルバートが忽然と消え、彼女の身体が急に膨れ上がり、純銀の鎧が弾け飛んでやはり消えた。
そしてアガレスの身体がどんどん大きくなってインナースーツも千切れ飛ぶと白い肌が黒くゴツゴツの岩肌になると人など軽く呑み込んでしまう程の顎を持った10m近い巨大な鰐に変化した。
「あ…、化け…物…!」
目の前に現れた巨大鰐の圧倒的な威圧感にオカッパ聖女は恐怖を隠せず恐れ戦慄いた。