魔女認定をされた元聖女は異世界から喚んだ大悪魔とゆっくり暮らしたい。 作:濁酒三十六
黒光りしたゴツゴツと鎧の様な皮骨に覆われた背中に鼻先から尻尾の先まで10m近い巨体、牛馬すら一呑みにしてしまうだろう
本来ならあのサイドポニーテイルの女騎士が騎乗してアガレスとして名乗るのだが獣の相手をするなら自分も獣として相手する事としたのである。
その姿をクロコダイルに変えて
「さあ、聖女。その美味しそうな
ユニコーンは嘶いて巨大鰐となったアガレスへと真っ向から突進、かと思いきや左へと跳んで素早い動きで鋭い額の一角をアガレスの側面…横っ腹に深々と突き立てた。
「サラディン、そのまま腹を突き破りなさい!!」
オカッパ聖女が叫び、一角獣が呼応して魔力を全開に四肢に力を込めた。しかし、
確かに巨大鰐と化したアガレスは重い。そして横腹は鰐には一番柔らかい部所かも知れない。同じ大きさでも只の鰐なら一角獣なら苦もなく倒せるだろう。…だが相手は只の鰐ではない、悪魔なのだ。それもこの世界の悪魔ではなく異世界の位の高い悪魔…悪魔大公爵アガレスなのだ。
女の白い手…しかも一本二本と傷口から伸びてくる。関節を幾つも持った白く細い女の腕が幾本も現れて一角獣を絡め取って行く。
「にっ、逃げてサラディン!!」
オカッパ聖女は慌てて一角獣に指示するが遅かった。女の腕の様な触手は一角獣を動けなくして数メートル上に持ち上げてしまった。アガレスは頭を上に上げる。
「美味そうな
一角獣がアガレスの口元まで運ばれて大きな顎が大きく開かれた。
「やめて、サラディンを食べないで…。殺さないでえっ!!」
「駄目だよ、オカッパちゃん。アガレスはどうするかを口にしてアタシは
ユーリシアは冷たく言い放つ。オカッパ聖女は泣きじゃくりながら一角獣へと駆け寄ろうとしたが横腹から一本長く伸びた女の腕が聖女を跳ね飛ばし、オカッパは尻餅を付く。
「邪魔だ、喰い
そして…バクンッ!!…っ、一気に顎が閉じて一角獣の姿が消え、オカッパ聖女が顔を絶望に塗り潰して悲鳴が響いた。生き残った黒装束も恐怖で戦意を喪失し、オカッパ聖女は心神を喪失していた。
「戦いは終わったわ。あんたたち、そのオカッパちゃんを連れて帰んな。まだ戦るなら、アガレスの胃袋に押し込められるよ?」
それを聞いた黒装束達はオカッパ聖女を連れて逃げ去った。それを見届けたユーリシアは安心したのかその場にペタンとへたり込み大きな溜息を吐く。
「…疲れた。」
聖アルメリア教選定聖女であったユーリシア・アルメイルは様々な功績を上げて昇格して守護獣召喚の儀を行った。
しかし彼女が喚び出したのは聖なる獣ではなく悪魔…しかも別世界に君臨する強大な悪魔の一柱をこの世界に喚び出してしまいその場で処分となり命を狙われてユーリシアはアガレスの力を借りて逃げ延びたが今の様に追手を向けられていた。
今回は三度目だが守護獣持ちの聖女を向けられたのは初めてであった。
「やっぱり女の子泣かせるのは胸糞悪いな…。」
「ユーリだって女じゃねえか。」
いつの間にか女騎士の姿に戻ったアガレスがユーリシアを見下ろしていた。…後ろには一角獣を呑み込んだ鰐のアガレスもいる。
「なに、鰐は別物なの?」
「分身だよ。まあ、別れてる時は別の意識があるけどな。名前はロロンゆーんだぜ。」
ロロンと呼ばれた鰐はアガレスの時よりも大人しそうで優しい目をしていた。
「疲れたんなら乗っていけよ。」
「…お尻痛そう。」
「クッションくらい用意するぜ。」
「お願い。」
二人は騎馬ならぬ騎鰐に乗り、のんびりと林道を進んだ。