ある日の夜、たまたま家でくつろいでいたら、突然悲鳴が聞こえた。そして、防災無線が流れる。
『警報。警報。レベル3。神薙町に魔物が発生中。周辺の住民の皆様は速やかに避難を開始してください。現在魔法少女が急行しています。それまでは、慌てず、速やかに避難をしてください。繰り返しますーー』
「魔物、ねぇ・・・。」
少し興味がある。最初に見て、一目ぼれした銃、Mk99.1-A小銃といつも、かつての私の右腰のホルスターに収まっていた拳銃を取り、ストラップを肩にかけながら外出の準備をした。帽子を目深にかぶりながら玄関を開ける。鍵を閉めて通りに出た。この時間は人が少ない。家の中に籠っている人も多いのだろう。避難指示が出たのにも関わらず、通りは閑散としていた。
「こっちかな?」
建物の屋根越しに光が見える。魔法だろうか。少し走った。
少し走り、通りからのびる路地に入ったところで、ついに現場に到着した。警察や消防はまだ来ていない、遅いな。あれが魔法少女に魔物か。三人の少女といっても、同年代だろうか?が、傷ついて倒れていた。出血もしている。ただ、あの出血量から見るに、動脈は切れていない。少し見て帰ろうとした。興味があるのと巻き込まれにむやみに顔を出すのは違う。そう思っていたのだが・・・。
「そこにいるのは誰かしら?」
ばれた。
「参ったな。隠密は得意のつもりだったんだけど。」
何度か夜襲に参加したことがあって、そこで隠密行動のスキルを学んだ。だから、気配を隠せている自信はあったのだが、甘かったらしい。
「あなた、馬鹿なんじゃないの?自分から殺されに来るなんて。」
「速く逃げなさい!」
倒れている一人が叫ぶ。
「そうね・・・、馬鹿、か。確かに私は馬鹿よ。だけど、私に生きようと思えることなんて何もないから。殺したいならさっさとこの馬鹿を殺しなさい。」
魔物は、狼のような気持ち悪い見た目の奴が五体。そして、それを操っているであろう人物が一人。
ダメだな。思わず笑ってしまう。
「なにがおかしいの?」
「いいえ?特に何も。」
ただ、軍人だったころの私の血が騒ぐ。それだけだ。バレはしたが、向こうが何もしてこないようだったらこちらも何もしない。そこの三人には死んでもらうだけだ。だが、何かをしてくるようだったらその時は、全力で反撃する。
「はぁ、死んでもいいっていうなら、もう殺すわね。」
魔物を操作し、私を襲わせる。
だが、所詮は人間の知能にははるかに及ばないただの獣。動きは単純かつ遅い。気配を感じて回避する。
小銃のボルトを解放して、五発クリップを押し込む。そして、ボルトを閉鎖し、一体二狙いを定めて射撃した。
久しぶりに聞く、懐かしい発砲音。肩に伝わる衝撃。この静かな住宅街にはふさわしくない。
続けて二発、三発と打ち込み、五発すべてを直撃させて、ボルトは解放したままにした。
「何者なの?あなた。」
「さあ?私は誰なんだろう?」
「クッ!こうなったらせめて!」
魔物を操作していた人物が走ってくる。肉弾戦か、これも懐かしい。殴るために突き出された左腕を手に取って、肘関節を逆方法に折った。悲鳴が上がる。そのまま腕を取って投げ落とし、右ひざで腹、左足で右腕を押さえつけ、装着した銃剣を口に突っ込んだ。
「こうなったらせめて、・・・何?」
何か叫んでいるが、銃剣が口をふさぐのを邪魔して何を言っているのか聞き取れない。
「もうちょっとはっきりしゃべってくれる?」
相手は泣き始めた。ここまでくるとちょっとかわいそうになって来たので、
「ねぇ、こいつ殺してもいい?それとも捕虜にする?」
「え⁉ぇえ⁉えっと、・・・どうするんだろ?ちょ、ちょっと殺すのは待ってください!」
それを聞いて、相手の顔に希望が灯る。私は銃剣を口から引き抜き、そして銃の上下を変えた。
「な、何を・・・?」
無言で振り下ろす。銃床が額にあたり、気絶した。立ち上がって、銃剣で四肢を刺す。これで動けなくなっただろう。
「あ、あの・・・?」
「ちょっと見せて。」
少女たちの体の傷を見る。背負っていたリュックから救急箱を取り出して応急処置を始めた。ほとんどは大した傷ではないが、少し深い傷もある。おそらく噛みつかれたのだろう。
「ちょっと破くけど我慢してね。」
銃剣で服を切り裂き、傷口をよく見る。消毒液をしみこませた脱脂綿できれいにする。
「ちょっと動かないでよ。もうやりづらいでしょ。・・・ああもう、そこの二人、ちょっと動かないように抑えといて!」
痛がる彼女にうんざりしながら処置を終わらせた。
「じゃ、後はあんたたちでやりなさい。」
「あ、あの!」
「何か?」
「助けていただき、ありがとうございます。お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「後日、改めてお礼に伺いたくて・・・。」
そんな律儀にならなくても・・・。少なくとも戦場ではそんなこと言ってらんないよ?
「名前を教える気はないわ。ついてこないでね。」
そう言い放ち、その場を後にした。
信じられる?この主人公が魔法少女になるんだぜ?