四時間後、扉がノックされた。
「なんだ?」
郵便が来るような関係はないし、例の書類が来るにしても早すぎる。
「はーい。」
玄関を開けると、一人の女性が立っていた。
「どちら様でしょうか?」
「今朝、魔法教会の者がうかがったとは思いますが、その時の書類です。」
そう言って茶色い封筒を差し出してくる。
「あぁ、ありがとうございます。」
封筒を受け取ると、違和感を感じた。封筒に段差がない。中に一枚でも紙が入っていれば、わずかに段差ができるはず。
「何も入っていないようですが?」
「そんなことはありませんよ?」
・・・いや、そもそももっとおかしい部分がある。封筒の口に封がされていない。厳密にいえば、テープで雑に止められているだけだ。
「あなた・・・、誰ですか?」
そう問いかける。
「魔法教会の者です。」
「お名前は?」
「・・・」
何も答えない。名前を聞かれるとまずいのだろうか。
「この封筒は受け取れません。」
明らかに扱いが軽い。正式な書類ならば、もっと厳封するはずだ。いや、しなければならない。
「あなた、誰ですか?」
問いかける。
何も答えない。
「チッ、勘のいい奴だ。」
ついに正体を現した。黒い霧を身にまとい、姿を少しずつ変えていく。そんなのを待つはずもなく、右足を半歩引いて、そのまま前蹴りを鳩尾に叩き込んだ。相手は倒れこむ。拳銃を抜き、14発すべてを撃ち尽くす。そのまま通りに出て、愛銃を取り出した。薬室隔壁を開放して弾倉を差し込む。だが、巨大な口径故に入りづらく、そして、ただでさえ巨大な銃で、前の世界で男だった時からさらに小さくなったからだで銃を支えるのも大変であるため、今まで淀みなくスムーズに行えていた装填に手間取ってしまった。
焦っているうちに相手は体勢を立て直し、霧の中から何かを飛ばしてきた。からだをひねって回避し、走り出す。愛銃を収納してMk99小銃を取り出す。クリップを押し込んで装填し、振り返って構える。一発、二発と打ち込む。正面に防御魔法を展開されて防がれる。
「どうしたものか。」
Mk99が通用しないとなると、愛銃を使わなければならないが、いかんせん動きながらでは撃ちづらい。何とか隙を作れないかなと考えていると、相手が攻撃を溜める。
「死んだかもね。あれは。」
すると、目の前に光が流れてきた。
そして、攻撃を防ぐ。
「遅くなったわね!」
振り返ると、たくさんの魔法少女がいた。
「今度は私たちが助ける番よ!」
一人が叫ぶ。
別に、助けなんていらないのにな。
「なぜお前たちがここにいる⁉」
「あなた達の計画は杜撰、それだけよ。」
「私の命の恩人を・・・、許しません!」
本来ならここで形勢逆転、のはずなんだろう。だが、そう簡単に許すほどやわな相手ではなかった。
「フフフ、いいだろう。ここでは見せるつもりはなかったが、お前らがそんなに戦いたいというなら見せてやる。いでよ!ファーストーズゴーレム!」
その声に合わせて、周囲が揺れる。まだ何か隠し持っているのか。だが、こんな時にこそ落ち着いて、射撃開始。
「いたっ!いたたっ!おい!このタイミングで攻撃はしないお約束だろうが!」
「そんなものは知らない。絶好の機会に撃ったまでだ。そんなに文句を言うんだったら反撃して来いよ。」
「ああもう!お前は私を怒らせた!生きて帰れるとは思うなよ!」
巨大な影が迫りくる。見上げると、8m程はありそうな巨大な、えーと、ゴーレム?って言ってたっけ?まぁ、そいつが姿を表した。
「どうだ!私の最新作だ!おびえながら死ぬがいい!」
発言がいちいち小物にしか聞こえないのはなぜだろうか。
そんなことは気にせず、冷静に射撃を続ける。こういうのはだいたい関節部と目が弱点なんだろうな。だが、いくら撃っても弾かれる。射撃の腕も落ちてるし、そもそもあんまり撃ったことのない銃だから当たらないのは当たり前だが。
「死ね!」
「危ない!」
振り下ろされる腕をのんきに眺めながら死ぬのを待っていると、誰かが斬りかかった。
「離れましょう!ここは危険です!」
「うわ!ちょっと!放しなさい!」
別の誰かが私を持ち上げ、距離を離す。
「逃げられると思うな!」
「結界!これは厄介なことになりました・・・。これでは逃げられません。」
「仕方ない、私たちで守るぞ!」
「はい!」
「感謝するわ。ありがとう。」
一応、命を助けてもらったことにはなるから、礼は言っておく。
「助けられて何よりです。」
さて、ここからはどうするんだろうか。少し離れた場所では、ゴーレムと魔法少女が死闘を繰り広げている。周囲の建物の壁が崩れ始め、ガラスが粉々になり、車も吹き飛ばされている。
「まったく通用しているようには見えないけど。」
「そうなんだよ。あいつは魔法がほとんど通用しなくて。物理の方がダメージが入るんだけど、それを届かせることができない。」
「それに、今までに見たことのないゴーレムです。姿が似ているのはいますが、あれは明らかに改良されているようですね。」
戦闘が激しくなり、火災が発生する。・・・これ以上付き合う必要はないかな。
「後どれくらいで倒せるの?」
「うーん、分かりませんわ。」
「って、え?なにそれ!」
その答えを聞いて取り出したのは、愛銃のうちの一つ、バーレードフィールドM120-B1M2半自動対物狙撃ライフル。近距離まで接近した先頭車両の処理に重宝していた。滑空砲遠距離での精度はあまり良くないし、射程も短いが、中近距離では、圧倒的な初速と威力を誇る。口径15mm、銃身長は1420mm、全長1640mm。今の私の身長を越えている。そして、重量は12.3kg。かなりのバケモノだ。初速は1,4737mで、距離100mで80mmの装甲を貫通する。
今度こそ弾倉を差し込み、薬室隔壁を閉鎖。ハンドルを引いて装填し、立ったまま構える。周りが驚いている。弾種はAPFSDS弾。照準を頭部に合わせ、引き金を強く引いた。
この時はまだ舐めていた。
M120-B1M2半自動対物狙撃ライフルの反動を。
小さくなり、弱くなった私の筋力を。
引き金を引いた瞬間、視界が暗くなった。続いて、頭部に衝撃が伝わり、一瞬で意識を失った。
気絶ドンマイ