轟音が鼓膜を貫通した直後、急に彼女が倒れた。名前も知らないが、ゴーレムにも全くおびえずに立ち向かった勇敢な彼女が。
「どうしたの⁉」
すぐに駆け寄り、状態を見る。額から出血している。
「ああー、多分、反動が制御できなくて頭を打ったな、こりゃ。」
いつの間にか、そばに男性が立っていた。
「え?いつの間に?結界があったはずでは?」
「この子がそれを撃って、ゴーレムが即死したんだ。そんで、操作してたやつが逃亡して結界の効力が切れた。幸運にも後頭部は打ってないようだ。すぐに処置が必要だが、命にはかかわらない。安心しろ。」
救急隊の人たちか。たくさんの警察や消防が入ってきて、事後処理を始めている。
「やっと倒せたよー。それにしても、急に頭が爆発したけど、なんだったんだろう?って、どうしたの⁉なにがあったの⁉」
「簡単に言えば、自爆だ。」
回復魔法をかけながら、救急隊のお兄さんが答える。
「さて、そろそろ動かしてもいいかな。病院に運ぶ。」
ストレッチャーに乗せられる彼女を見送る。
「これは・・・重!なにこれ!めっちゃ重い!よっこいせっと!」
別の男性が、巨大な銃を持ち上げる。人の背丈ほどはありそうな巨大な銃だ。これをあんな女の子が一人で持って構えていたなんて信じられない。
「一体、どんな人なのでしょうか。」
***
目が覚めると、横たわっていた。視界一杯に広がる天井は真っ白で、高さが測りづらい。ただし、寝かされているベッドはフカフカで、
「一体何年ぶりのまともなベッドなんだろう・・・。」
戦場で20年、この世界で、記憶が戻って12年。だいたい30年以上は劣悪なベッドで寝ていた。
寝てても暇なので、起き上がる。多少の痛みとめまいがしたが、気にせず立ち上がった。うん、動ける。
正直言って、舐めてた。
以前の感覚で撃ったらだめだ。反動が制御できない。もっと下に抑え込まなければ、今回の二の舞になる。収納に残っていたもう一つの愛銃、バーレードフィールドM115-A2-M1対物狙撃ライフルを取り出して構え、射撃姿勢を見直す。
「もっと足で地面をつかんで、腹に力を入れる、と。あと、親指は上にした方がいいな。」
色々試行錯誤していると、病室の扉が開かれ、誰かが入って来た。
「あら、もう起きていらしたのですね。頭部を強く打ったので、まだあまり歩きまわらない方がいいですよ。」
確かに、立ち上がる時に一瞬めまいがしたから、あんまり動き回るのは良くないか?
「今は?」
「あなたが倒れた次の日です。現在は午前9時です。」
ほぼ一日寝てたことになるのか。前の世界だったらとっくに叩き起こされているだろうな。
「やあ、一日ぶりだね。」
えっと確か、昨日のあの人か。
「昨日はすまなかった。調律協会が、君のことを狙っているという情報が入ってね、急遽作戦を立てたんだけど、君を囮にさせてもらった。」
「はぁ、やっぱり。」
「気付いていたのか?」
「当たり前ですよ。」
そもそも、あんなタイミングよく現れるなんて、準備しておかないとできないことだ。気付かない方が馬鹿というものである。
「さてと・・・、まずは、お風呂に入ってきてもらおうか。」
「・・・え?」
「あ、あの・・・、まだあまり動かない方がいいのでは?」
「魔法で治療は終わったし、骨折や脳震盪の類も見られない。医者も問題ないと言っていただろう。それに、彼女だってお風呂に入りたいんじゃないか?」
特にそうは思っていない。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は桐谷正二だ。よろしく。」
「私は、宇佐美陽向と申します。よろしくね。あなたは?」
「・・・涼風弥生。」
「弥生ちゃんね。じゃあ、お医者さんも大丈夫っていうなら、お風呂に入りましょ。」
やだなぁ・・・。
第六話にしてようやく名前が判明。こんなんでいいのか?