脱衣所を出て、歩き出す。渡り廊下を通って、別の建物に入った。
「ここが、私たちの通う学園よ。本来は、富裕層の子供たちに英才教育を受けさせる学校として建てられたの。今は、魔法少女の育成にも使われているわ。」
前の世界にもあったな。貴族用の学校が。縁のない世界だったが。
案内はまた二学期に、ということで、歩き回るのもそこそこに、夏休み中であるにも関わらず人が集まっている部屋に案内された。
扉を開けると、10人ほどが集まっているのが見えた。
「みんな、おはよう。」
「おはようにしてはちょっと遅いんじゃないかな?ん?その子は?」
全員の視線が一斉に私に向けられる。
「この子はね、二学期から編入されることになったの。ほら、自己紹介。」
子供扱いされてるんじゃないか?
「涼風弥生、よろしく。」
「弥生さんですね。こちらこそよろしくお願いします。」
次々と自己紹介をされる。覚えるのは諦めた。
「あら?この子って、昨日の?」
「あ、そうそう。えっと、銃だっけ?それで頭を打って病院に運ばれちゃった。」
本当に恥ずかしい話だ。
「あ、今朝、ここに運ばれてきたんです。まだ返却されていませんよね。」
「あれ重すぎて全然持ち上げられなくてさ。本当に持てるの?」
「あの程度、誰でも持ち上げられるでしょ。どこにあるの?」
「こっちよ。」
一度部屋を出て、玄関近くの部屋に入る。
「これよ。」
白い布がかけられていた。その布を取り払うと、私の愛銃の一つ、見慣れたバーレードフィールドM120-B1-M2半自動対物狙撃ライフルがあった。それを手に取って状態を確認する。
外見に異常は無し。チャージングハンドルの動作良好。薬室隔壁を開放して弾倉を取り出す。そして、眉を顰める。10発全弾装填。やはり使用した弾薬が元に戻っている。昨日は1発を使用した。
そして、そばで見ている宇佐美陽向達が驚いていることに気づいた。
「何か?」
「いや・・・、なんか簡単に持ち上げてるなって・・・。」
・・・確かに、この世界の基準で言うのならば、その反応は当然か。なにせ、12kg以上もする重量物を片手で持ち上げて、しかも楽々と操作しているのだから。
だが、一人だけ目を輝かせている人間がいた。えっと確か、白花華香だった気がする。
「あ、あの・・・、すごいですね!男性でも非常に重いとおっしゃられるものを、そんな簡単に持ち上げるなんて!」
脳金か?
「それで、その・・・、少し、待たせていただいてもよろしいでしょうか?」
「壊さなければ。」
「本当ですか?ありがとうございます!それでは早速・・・。」
「ちょっと待って。本当に落としたら大変だから、机の上で。」
「あ、そうですよね、すみません・・・。」
机にM120を置く。
「それでは、行きますね。・・・よいしょっと。」
彼女は、12.3kgのM120を軽々と持ち上げた。
「ちょ、ちょっと重いですね。ですが、持ち上げられないほどではありません!あの、片手で持ってみても?」
「それは不安すぎるからダメ。」
「そ、そうですか。でも、ありがとうございました!」
「銃の扱い方を勉強してから出直しなさい。そうすれば持たせてあげる。素人が持っていいものじゃないわ。」
「はい!分かりました!」
そういって、M120を収納した。
「え?今のは?」
「私の魔法よ。色々収納できるの。かなり便利よ。」
「どんなものが入るんですか?」
「本当に色々よ。人間が運べる現実的な範囲なら何でも入るわ。だから、車、なんてものは無理だけど、自転車とか。家電もだいたい入るわね。洗濯機とか冷蔵庫は、まぁ中を空っぽにすれば何とか入るわ。」
「一度にたくさんお買い物をしても、荷物には困らなさそうですね。」
「買い物はほとんどしたことが無いけど、まあそうなるわね。」
それからは、他愛のない雑談をしばらくした。
ちょうどいいタイミングだから、ここで私の、俺の、元居た世界について話そう。
次回、前世