トランパー本部の敷地内にある喫煙所。
任務も訓練もひと段落した午後、例の規格外の一般党員「2」四人が、珍しく揃って休憩していた。
オウル・ドロウは壁際に寄りかかり、煙草を一本くわえる。
ミヤビ・ヒメハナはいつもの余裕たっぷりな姿勢で、セナ・シウンはベンチに腰掛け、ローズ・スノウは灰皿のそばに立っていた。
しばらく、それぞれが静かに煙を楽しんでいたが――。
オウル「……やっぱり、Forteはいいな」
セナ「あ、オウルってForte派だったっけ」
オウル「派というか、好きなんだよ。Forteシリーズ。自分にはあの感じが一番しっくりくる」
ローズ「へえ。ずっと同じ銘柄なの?」
オウル「基本的にはな。他のを吸わないわけじゃないが、結局戻ってくる」
ミヤビ「ふふっ。なるほど。お気に入りというものですわね」
ミヤビは煙草を指先で軽く挟み、満足げに笑う。
ミヤビ「わたくしは、やはりセブンスターこそ至高ですわ」
セナ「おっ、ミヤビはセッターか!」
ミヤビ「ええ。あの味わいがよろしいのです。わたくしには、これが一番合っておりますわ」
オウル「セブンスターか。ミヤビらしい気もするな」
ミヤビ「あら、どういう意味ですの?」
オウル「いや、なんとなく」
ミヤビ「ふふ。褒め言葉として受け取っておきますわ」
セナは煙を吐き出しながら、楽しそうに手を挙げた。
セナ「私はキャメル! マジで好きなんだよね、キャメル」
ローズ「あら、キャメルなのね」
セナ「そうそう。なんかこう……自分の中でしっくりくるんだよ。別の銘柄を吸うこともあるけど、買うときは結局キャメル選んじゃう」
オウル「わかる。そういうのあるよな」
セナ「でしょ? 別に他のが嫌いとかじゃないんだけどさ」
ミヤビ「自分の好みというものは、そういうものですわね」
ローズは三人の話を聞きながら、煙草をくゆらせていた。
そして、少し間を置いてから口を開く。
ローズ「……ホープっていいよねェ」
セナ「おっ、ローズはホープ!」
ローズ「ええ。なんだか好きなのよね。あの感じが。吸っていて落ち着くというか……」
ミヤビ「ローズらしい選択ですわね」
ローズ「そう? ふふ、ありがとう」
オウル「これで全員、見事に好みが分かれたな」
セナ「Forte、セブンスター、キャメル、ホープ。バラバラだねえ」
ミヤビ「実に平和なことでございますわ」
ローズ「別に、誰かの銘柄が一番だって競う必要もないものねェ」
オウル「自分が好きなものを吸えばいい。それだけだ」
セナ「うんうん。みんな違って、みんないいってやつ!」
ミヤビ「あら、セナさん。なかなか良いことをおっしゃいますわね」
セナ「でしょ?」
四人はそれぞれ、手元の煙草に視線を落とす。
しばしの沈黙。
やがてローズが、ふと思い出したように尋ねた。
ローズ「そういえば、皆さんって他の銘柄を勧められたらどうする?」
オウル「試すことはある。気に入れば吸うし、そうでなければ戻る」
セナ「私もそんな感じかな。勧められたら一回くらいは試すよ」
ミヤビ「わたくしも、頂いたものを無下には致しませんわ。ただ、最終的にはセブンスターに戻りますけれど」
ローズ「ふふっ。私も同じねェ」
セナ「結局みんな、自分の銘柄が好きなんだ」
オウル「そういうことだな」
そのとき、喫煙所の入口から通りかかったジャックの一人が顔を覗かせた。
ジャック「お前ら、何の話をしてるんだ?」
セナ「煙草の銘柄! 私はキャメル!」
オウル「俺はForte」
ミヤビ「セブンスターですわ」
ローズ「ホープよォ」
ジャック「……ああ、そうか」
四人の顔を順番に見て、ジャックは少し考え込む。
ジャック「……お前ら、戦闘スタイルだけじゃなくて、煙草の好みまで見事にバラバラなんだな」
オウル「別に合わせる理由もないだろ」
セナ「そりゃそうだ!」
ミヤビ「好みまで統一する必要はございませんもの」
ローズ「ふふ。トランパーの規律にも、銘柄を統一しろなんて書いてないでしょう?」
ジャック「書いてねえよ!」
喫煙所に笑い声が響く。
そして四人は、再びそれぞれの煙草を楽しみ始めた。
誰がどの銘柄を吸っているかなど、些細なこと。
ただ、自分の好きなものを、自分の好きなように楽しむ。
この四人にしては、ずいぶんと穏やかな休憩時間だった。