トランパー本部・幹部会議室。
その日の議題は、例の規格外の一般党員「2」四人についてだった。
オウルは投げナイフ。
ローズはカードと投げナイフ。
ミヤビはドス。
そして、セナだけが武器を持たない。
もちろん、武器がなくとも四人の中で実力が劣るわけではない。むしろ、我流のロシアンプロレスを主体とした戦闘能力に、空中制動や真空波まで加わっている。
しかし、ある日。
キング・スペード「……そういえば、セナは最近、何か武器を持ち始めたらしいな」
クイーン・ハート「あら。とうとう?」
ジャック・ダイヤ「今まで本人が武器を必要としていなかっただけだと思っていましたが」
エース・クローバー「何を選んだんだ?」
そこで、白のJOKER様が一枚の報告書を机に置いた。
白のJOKER様「中華刀だそうだ」
黒のJOKER様「ほう」
白のJOKER様「特に、柳葉刀と呼ばれる形状のものを手に入れたらしい」
キング・スペード「柳葉刀……あの、刀身が柳の葉のような形をしたものか」
白のJOKER様「そうだ」
クイーン・ダイヤ「セナさんが中華刀ですか。少し意外ですね」
黒のJOKER様「いや、案外似合うんじゃないか?」
一方、その頃。
四人専用訓練場。
セナは手にした柳葉刀を、じっと眺めていた。
刀身は緩やかな曲線を描き、先端へ向かって幅が広がる独特の形状。
セナはそれを軽く構え、ゆっくりと振ってみる。
ヒュッ。
風を切る音が鳴った。
セナ「……おお」
もう一度、今度は少し大きく振る。
ヒュンッ!
セナ「へえー……」
そこへ、訓練の様子を見に来たローズが声をかけた。
ローズ「あら、セナ。とうとう武器を持ったのねェ」
セナ「うん! ちょっと前から気になっててさ。柳葉刀っていうんだって」
ローズ「中華刀なのね。どうしてこれを?」
セナ「なんか、私の動きに合いそうだなって思ったんだよね」
ローズ「ふうん?」
セナは柳葉刀を構え直す。
セナ「今までの私は、投げたり、殴ったり、蹴ったり、空中で動きを変えたり、真空波を飛ばしたり……基本的に身体そのものを使って戦ってきたでしょ?」
ローズ「ええ」
セナ「でも、武器を使う戦い方はまた別の技術だと思うんだ。だから、今までの技に無理やり混ぜるんじゃなくて、まずは別枠で練習してみようかなって」
ローズ「なるほどねェ。今までの戦い方を捨てるつもりはないのね」
セナ「もちろん! ロシアンプロレスは私の基本だし!」
セナはニッと笑った。
セナ「これはこれで、別の引き出しにする感じ!」
ローズ「ふふっ。あなたらしいわね」
そこへ、オウルとミヤビもやってきた。
オウル「お、聞いたぞ。武器を手に入れたんだって?」
セナ「そう! 柳葉刀!」
オウル「中華刀か。なるほどな」
オウルは少し離れた場所から、セナの構えを観察する。
オウル「まだ持ち始めたばかりだな」
セナ「うん。これから!」
ミヤビ「あらあら。ついにセナさんも武器持ちですわね」
セナ「ミヤビのドスみたいに、私も自分に合うものを見つけたいなって」
ミヤビ「ふふ。良いことですわ。武器は持つだけで強くなるものではございませんもの。自分の身体と、武器の性質を理解してこそですわ」
セナ「だよね!」
ミヤビはセナの柳葉刀を眺める。
ミヤビ「それにしても……柳葉刀ですか。なかなか面白い選択ですわね」
オウル「セナの投げ技や空中制動と、どう組み合わせるかは気になるな」
ローズ「でも、今は別々に練習するんでしょう?」
セナ「そうそう! まずは刀そのものをちゃんと扱えるようにならないとね」
オウル「その方がいい。既存の技術に引っ張られすぎると、武器固有の動きを覚えにくい」
ミヤビ「焦らず、じっくりですわね」
セナは三人に向かって柳葉刀を軽く掲げた。
セナ「というわけで、しばらくはこっちの訓練もやってみるよ!」
数日後。
幹部会議室では、セナの新しい訓練について報告が上がっていた。
キング・クラブ「セナは柳葉刀を使った訓練を始めたそうです」
クイーン・ハート「既存の格闘技術とは分けているの?」
キング・クラブ「はい。まずは武器単独の扱いを習得する方針のようです」
ジャック・スペード「つまり、ロシアンプロレスに刀を持たせたわけではない、と」
白のJOKER様「そういうことだな」
黒のJOKER様「……しかし、これで四人全員が武器を持つことになったわけか」
白のJOKER様「ああ。オウルは投げナイフ、ローズはカードと投げナイフ、ミヤビはドス。そしてセナは柳葉刀」
少しの沈黙。
エース・ダイヤ「……これ以上、戦術の幅が広がる余地はあるのでしょうか」
黒のJOKER様「あるんじゃないか?」
白のJOKER様「あるだろうな」
キング・スペード「断言なさるんですね……」
白のJOKER様「あの四人だからな」
そして、黒のJOKER様がぽつりと付け加えた。
黒のJOKER様「……ところで、白いの」
白のJOKER様「なんだ、黒いの」
黒のJOKER様「そろそろ、あいつらの訓練場に武器庫を建てた方がいいんじゃないか?」
白のJOKER様「……検討しよう」
幹部一同は、誰も反対しなかった。
四人の訓練場に何が増えていくのか。
もはや、誰にも予測できなかった。