セナが柳葉刀を赫刀へ変化させられるようになってから、数日後。
四人専用訓練場では、ミヤビ・ヒメハナがセナのもとを訪れていた。
ミヤビ「セナさん。少々、お願いがございますの」
セナ「ん? どうしたの、ミヤビ?」
ミヤビ「先日の柳葉刀の件ですわ。あの赤い刃と黒い峰……わたくしのドスでも再現できるのではないかと思いまして」
セナ「ああ、赫刀のこと?」
ミヤビ「ええ。ぜひ、やり方をご教授いただきたいのですわ」
セナは少し驚いたあと、嬉しそうに笑った。
セナ「いいよ! 私もまだ詳しいことは分かってないけど、やってみよう!」
訓練場の中央。
ミヤビは愛用のドスを手にしていた。
セナは隣で、自分の柳葉刀を構えている。
セナ「私の場合は、柄を全身全霊で握り込んだら変化したんだよね」
ミヤビ「なるほど……。つまり、握力だけではなく、全身の力を込める感覚ですわね」
セナ「たぶん! ただ、力任せに握るだけじゃなくて、刀に力を伝える感じかな?」
ミヤビ「ふむ……」
ミヤビはドスの柄を握り直す。
普段から右手で特殊な赤黒いオーラを扱う彼女にとって、力を一点へ集中させる感覚そのものは馴染み深い。
しかし、今回はオーラを使うわけではない。
あくまで、ドスそのものに変化を起こす試みだ。
ミヤビ「では……」
ぎゅううううっ!!
ミヤビの顔に血管が浮かぶほど、全身の力を込める。
ミヤビ「ぬぅぅぅ……!」
セナが隣で見守る。
数秒後。
キィィィィン……!
ドスの刀身が、ゆっくりと赤く染まっていく。
そして峰が黒く変わった。
セナ「あっ!!」
ミヤビ「…………」
セナ「できた!!」
ミヤビ「……まあ!」
ミヤビは目を見開き、ドスを少し傾けて眺める。
赤い刃、黒い峰。
柳葉刀で起きた現象と、まったく同じ変化だった。
ミヤビ「これは……実に見事ですわね!」
セナ「やったね、ミヤビ!」
ミヤビ「ええ! ご教授いただき、ありがとうございますわ!」
二人は顔を見合わせて笑った。
ところが、さらに驚くべきことが分かった。
セナ「あれ? そういえば、私の刀って、もう一回握り込まなくても戻せるんだよね」
ミヤビ「……と、申しますと?」
セナは柳葉刀を構えたまま、意識を集中させる。
すると、赤かった刃が元の色へ戻り、黒かった峰も元通りになった。
セナ「ほらね」
ミヤビ「あら……!」
ミヤビも試してみる。
赫刀となったドスを見つめ、変化を解除するよう意識する。
すると――。
すっ。
ドスは通常の状態へ戻った。
ミヤビ「……わたくしのドスも、同じですわ!」
セナ「えっ、そっちも!?」
今度は二人同時に赫刀化させてみる。
キィィィィン……!
二振りの刃が赤く染まり、峰が黒く変化する。
そして、二人が解除を意識すると、ほぼ同時に元の姿へ戻った。
セナ「これ、任意で切り替えられるんだね!」
ミヤビ「ええ。発動も解除も、自在にできるようですわ」
セナ「最初にやったときは、そんなことまで分からなかったんだけどなぁ」
ミヤビ「ふふ。どうやら、わたくしたちの新しい共通技術になりそうですわね」
その日の午後。
幹部会議室には、またしても報告書が届いていた。
キング・スペード「……ミヤビも赫刀を再現したそうです」
クイーン・ハート「えっ?」
キング・スペード「セナの指導を受け、自分のドスを赫刀へ変化させたとのことです」
ジャック・ダイヤ「柳葉刀だけではなく、短刀でも可能だったのですか?」
キング・スペード「はい。さらに、両者とも任意で発動と解除を切り替えられるようです」
エース・クローバー「待て。最初は偶然の現象だったのではなかったか?」
キング・スペード「現在は意図的に切り替えられるそうです」
クイーン・ハート「……セナさんがミヤビさんに教えたんですよね?」
キング・スペード「はい」
ジャック・スペード「つまり、セナさんが自分で発見した現象を、ミヤビさんにも習得させた、と」
黒のJOKER様「……白いの」
白のJOKER様「言いたいことは分かる」
黒のJOKER様「また増えたぞ」
白のJOKER様「ああ。また増えたな」
その頃、四人専用訓練場。
オウルとローズは、赫刀を手にした二人を眺めていた。
オウル「刀身の変化は同じか。武器の種類が違っても再現できるらしいな」
ローズ「あら、二人とも格好いいじゃない」
セナ「でしょー?」
ミヤビ「ふふ。わたくしのドスも、なかなか様になっておりますわ」
オウル「発動と解除を任意で切り替えられるなら、実用性も高そうだ」
ローズ「でも、どうしてミヤビまでできるようになったの?」
セナ「私が教えた!」
ローズ「……あなたが?」
セナ「うん!」
オウル「一ヶ月で柳葉刀を使いこなして、赫刀まで再現して、さらに他人に教えられるようになったのか」
セナ「あはは……なんか、そうなっちゃった」
ミヤビ「セナさんの教え方がよろしかったのですわ」
ローズ「ふふっ。これはもう、赫刀の師範ねェ」
セナ「えっ、師範!?」
オウル「少なくとも、トランパー内で最初に確認された使い手だからな」
ミヤビ「では、わたくしは二人目の弟子ということになりますわね」
セナ「なんか急に大げさになってきた!」
四人の笑い声が訓練場に響く。
その日から、セナの訓練項目には新たに「赫刀の研究」が加わり、ミヤビもドスの赫刀化を独自に研究し始めた。
そして幹部たちは、ひとつの事実を理解した。
セナが何かを発見すると、ミヤビが興味を持つ可能性がある。
今後は、セナの新技術だけでなく、ミヤビの反応にも注意を払う必要がありそうだった。