チャッピーに考えてもらった架空組織   作:缶コーヒー好き

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ローズ、カードの赫刀化を考える

トランパー本部、四人専用訓練区域。

 

オウルが筋肉痛から復帰して数日後。

 

ローズ・スノウは、訓練の合間にカードを指先で弄びながら、少し考え込んでいた。

 

「……赫刀化、ですか」

 

セナが柳葉刀の手入れをしながら顔を上げる。

 

「うん? どうしたの、ローズ?」

 

「いえ、オウルさんが投げナイフの赫刀化を試していたでしょう?」

 

「ああ、そうだったね!」

 

「私は投げナイフについては、別にいいかなと思っておりますの」

 

ローズは手元のカードを一枚、ひらりと回した。

 

「もともと私の主力はカードですもの。投げナイフにまで新しい技術を取り入れる必要性は、今のところ感じておりませんわ」

 

「なるほどね」

 

「ただ……」

 

ローズの指が、カードの縁をなぞる。

 

「普段使っているカードなら、やってみても面白いかもしれないわね」

 

セナが興味深そうに身を乗り出した。

 

「おお! ローズも赫刀化に挑戦するの?」

 

「ええ。カード投擲の威力や性質に何らかの変化が生じるなら、試してみる価値はあるでしょう?」

 

「確かに!」

 

ローズはカードを一枚、指先で挟んで見せた。

 

「ただ、一つ問題がありますの」

 

「問題?」

 

「一枚ずつ個別に赫刀化させるのは、手間が掛かりすぎますわ」

 

セナは少し考える。

 

「うん、まあ……そうだね」

 

「私、普段からかなりの枚数を扱いますでしょう? それなら、何十枚かまとめて持って、一度に赫刀化できないかと思いまして」

 

「何十枚も?」

 

「ええ。例えば、二十枚や三十枚ほどをまとめて握り込む、といった具合ですわね」

 

セナは目を輝かせた。

 

「それ、面白そう!」

 

ローズは微笑んだ。

 

「ですから、セナさん。少し教えていただけませんこと?」

 

「もちろん!」

 

赫刀化の教え

 

セナはローズの前に座り、まず自分が柳葉刀の柄を握るときの感覚を説明した。

 

「私の場合はね、ただ手に力を入れるだけじゃなくて、全身の力を握っているところに集めるような感じなんだ」

 

「全身の力を……」

 

「うん。でも、無理やり力を込めればいいってわけでもないよ。最初から全力でやると、オウルみたいに筋肉痛になっちゃうかもしれないし」

 

ローズは思わず笑った。

 

「ふふっ。オウルさんのペットボトル事件ですわね」

 

「そうそう! あれはびっくりしたよね!」

 

「ご本人は相当落ち込んでいらっしゃいましたけれど」

 

「最後は自分で笑ってたけどね!」

 

二人はしばらく笑い合った。

 

やがてローズは、カードの束を手に取る。

 

「では、まずは少ない枚数から試してみますわ」

 

「うん。焦らずにね!」

 

ローズはカードを十枚ほど重ね、両手で包むように持った。

 

目を閉じ、セナの説明を思い返す。

 

全身の力を、手元へ。

 

「…………」

 

数秒。

 

変化はない。

 

ローズは目を開けた。

 

「……そう簡単にはいきませんわね」

 

「最初はそんなものだよ!」

 

「では、もう一度」

 

今度は少し持ち方を変えた。

 

しかし、やはりカードに変化は現れない。

 

ローズはカードを見つめ、ふう、と息を吐く。

 

「なるほど。これはなかなか……」

 

セナは励ますように笑った。

 

「大丈夫! 私も最初からできたわけじゃないから!」

 

「ありがとうございます。もう少し試してみますわ」

 

その日の夕方

 

訓練を終えたローズは、セナに礼を述べた。

 

「今日はありがとうございました。おかげで、どう取り組めばいいか少し分かった気がしますわ」

 

「ううん! またいつでも聞いてね!」

 

「ええ。何十枚ものカードを一度に赫刀化できたら、かなり面白いことになりそうですもの」

 

その会話を少し離れた場所で聞いていたオウルが、ぽつりと言った。

 

「……ローズ」

 

「はい?」

 

「くれぐれも、私のように無理はしないように」

 

「あら。もちろんですわ」

 

「特に腕の筋肉には気を付けた方がいい。私は三日間、ペットボトルすら開けられなかった」

 

「存じておりますわ。歯で開けたのでしょう?」

 

「……ええ」

 

セナが吹き出す。

 

「オウル、またその話!」

 

ローズはカードの束を胸元に持ち上げ、にっこり笑った。

 

「ご安心くださいませ。私はオウルさんの失敗を教訓に、慎重に進めますわ」

 

「それならいい」

 

「まずは二十枚、三十枚……いえ、いずれは百枚単位でできるようになれば理想ですわね」

 

オウルの表情が固まった。

 

「……百枚?」

 

「ええ。せっかくですもの」

 

セナは目を輝かせる。

 

「百枚の赫刀化! できたらすごいね!」

 

オウルは静かに目を閉じた。

 

「……どうか、筋肉痛でドアが開けられなくなるようなことだけは避けてください」

 

ローズは上品に微笑んだ。

 

「ふふっ。努力いたしますわ」

 

その日、トランパーに新たな赫刀化の挑戦者が現れた。

 

ただし、ローズが目指しているのは投げナイフではない。

 

何十枚、あるいは何百枚ものカードを、一度に赫刀化させること。

 

そしてセナは、また一人、赫刀化の相談相手を抱えることになったのだった。

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