チャッピーに考えてもらった架空組織   作:缶コーヒー好き

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オウル・ドロウ、ようやく間違いに気づく

トランパー本部、四人専用訓練区域。

 

ローズが二十枚のカードを安定して赫刀化できるようになってから、数日後。

 

オウル・ドロウは、訓練場の隅で一人、投げナイフを手にしていた。

 

「…………」

 

ナイフを握る。

 

力を込める。

 

全身に意識を向ける。

 

そして、しばらく待つ。

 

……何も起きない。

 

「…………」

 

オウルはナイフを見つめた。

 

「……なぜだ」

 

もう一度試す。

 

今度はさらに強く握り込む。

 

「……っ!」

 

それでも、変化はない。

 

「なぜ俺だけ赫刀化ができん!?」

 

もちろん、声には出していない。

 

本人としては、かなり密かに慌てていた。

 

セナは柳葉刀で一ヶ月ほど訓練して習得した。ミヤビもドスで成功。ローズに至っては、二十枚ものカードをまとめて赫刀化できるようになった。

 

そして自分はというと、投げナイフの赫刀化に挑戦して筋肉痛になり、ペットボトルを歯で開ける羽目になった挙げ句、いまだに成功していない。

 

「……何かがおかしい」

 

オウルは冷静に考えようとした。

 

しかし、そもそも彼には一つ大きな問題があった。

 

赫刀化の具体的な手順を、きちんと教わっていなかったのである。

 

セナが最初に再現したときの話を聞き、ミヤビやローズの成功を見て、見よう見まねで試していた。

 

つまり、本人は自分なりに正しくやっているつもりだった。

 

そこへ、セナがやってきた。

 

「オウル、何してるの?」

 

「赫刀化の練習です」

 

「おお! どう? できそう?」

 

「……いえ。どうにも成功しません」

 

セナはオウルの手元を覗き込んだ。

 

「ちょっと見せてくれる?」

 

「構いませんが」

 

オウルは投げナイフを持ち直し、いつものように握り込んだ。

 

セナはその様子をじっと見ていた。

 

そして。

 

「……オウル」

 

「はい?」

 

「それ、やり方が違うよ」

 

「…………え?」

 

根本的な勘違い

 

セナはオウルの手元を見ながら、ゆっくり説明を始めた。

 

「私が柳葉刀で赫刀化したときはね、ただ手だけで強く握ったんじゃないんだよ」

 

「はい」

 

「全身全霊で柄を握り込むの。腕だけじゃなくて、全身の力を込める感じ」

 

「……全身の力を」

 

「うん。オウルは今、腕と手だけでナイフを握ってるよね?」

 

オウルは自分の手元を見た。

 

「……そうですね」

 

「それだと、私がやったときとは違うんだ」

 

「なるほど……」

 

セナは実際に柳葉刀を手に取った。

 

「こんな感じ。まず、構えを整えて、全身の力を使って柄を握り込む」

 

彼女が握り込むと、柳葉刀の刃が赤く染まり、峰が黒く変化した。

 

熱気と、独特の臭いが漂う。

 

「これが私のやり方だよ」

 

オウルはじっと観察した。

 

「……つまり、私は握るという動作そのものに意識を向けすぎていたのですね」

 

「そうかもしれないね!」

 

「それで腕に過剰な負担が掛かり、あの筋肉痛に……」

 

「うん。たぶんね」

 

オウルはしばらく黙り込んだ。

 

そして、ぽつり。

 

「……最初から教わっておけばよかった」

 

セナは少し困ったように笑った。

 

「ごめんね。私も、みんなが同じようにできると思ってたわけじゃないんだけど……」

 

「いえ。私が勝手に見よう見まねで始めたのが原因です」

 

改めて挑戦

 

セナの説明を受け、オウルは投げナイフを手に取った。

 

今度は手先だけでなく、姿勢や身体全体の力の使い方を意識する。

 

「……こうでしょうか」

 

「うん。そんな感じ!」

 

オウルは慎重に力を込めた。

 

しばらくして。

 

ナイフに、わずかな変化が現れた。

 

「…………!」

 

赤みが浮かぶ。

 

しかし、まだ不安定だ。

 

数秒後、変化は消えてしまった。

 

「おおっ! 今の、ちょっとできてたよ!」

 

「……なるほど」

 

オウルはナイフを見つめた。

 

今までとは違う手応えがあった。

 

「これなら、可能性がありますね」

 

「うん! あとは練習だね!」

 

オウルは静かに頷いた。

 

そして、少しだけ苦笑した。

 

「しかし……一ヶ月近く、私は何をしていたのでしょうね」

 

「え?」

 

「間違った方法で、ひたすら握り込んでいたわけですから」

 

「……あはは」

 

セナは笑った。

 

その日の夕方・JOKER様両名への報告

 

白のJOKER様は、オウルからの報告を聞いていた。

 

「つまり、今まで赫刀化の手順を勘違いしていたのか?」

 

「はい。セナに教わって、ようやく発覚しました」

 

黒のJOKER様が尋ねる。

 

「それで、今はどうなのだ?」

 

「不安定ながら、わずかに変化が現れるところまでは確認できました」

 

「そうか。進展があって何よりだ」

 

白のJOKER様は安心したように頷いた。

 

しかし、ふと何かに気づいたように首を傾げる。

 

「……待てよ」

 

「どうした、白いの」

 

「オウルは、正しい手順を知らずに練習していたんだよな?」

 

「そうです」

 

「それで全身筋肉痛になって、ペットボトルを歯で開けることになったんだよな?」

 

「……はい」

 

白のJOKER様は、机に片手をついた。

 

「なんで最初にセナに聞かなかったんだよ!!」

 

オウルは少しだけ目を伏せた。

 

「……自力で再現できると考えておりました」

 

黒のJOKER様は静かに言った。

 

「オウル。君の観察力と分析力は高く評価している。だが、今回の件については、まず本人に手順を確認するべきだったな」

 

「仰る通りです」

 

「次からはそうしてくれ」

 

「承知しました」

 

白のJOKER様は苦笑した。

 

「まあ、これでようやくスタートラインだな」

 

オウルは投げナイフを見つめた。

 

「ええ。今度こそ、正しい方法で習得してみせます」

 

その背中には、いつもの落ち着きが戻っていた。

 

ただし、彼の頭の片隅には、まだ一つの記憶が残っていた。

 

ペットボトルのキャップに齧り付いていた、あの三日間の初日。

 

「……二度とあんなことにはなりたくありませんね」

 

そう呟くオウルに、セナが笑顔で返した。

 

「じゃあ、無理しないで練習しようね!」

 

「はい。今度はそうします」

 

どうやらオウルは、ようやく赫刀化への正しい第一歩を踏み出したようだった。

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