トランパー本部、合同幹部会議室。
議題は、最近になって組織内で研究が進んでいる「赫刀化」についてだった。
白のJOKER様は、机の上に置かれた報告書を眺めている。
「……ところで、セナ。赫刀化した武器って、どの程度の熱を持つんだ?」
「そうですねぇ……。正確な温度は測れていませんけど」
セナは少し考え込んだ。
「対象を瞬時に炭化させる程度には、高いみたいです」
「…………は?」
会議室の空気が止まった。
黒のJOKER様が、ゆっくりと顔を上げる。
「待て。今、なんと言った?」
「対象を、瞬時に炭化させる程度には高いみたいです」
「二回言わなくていい」
白のJOKER様は報告書を机に置いた。
「具体的には?」
「訓練用の木材で試したんです。赫刀状態の柳葉刀を軽く触れさせたら、接触した部分が一瞬で黒くなりまして」
「焦げた、ではなく?」
「はい。炭化です。しかも、表面だけじゃなくて、触れた部分がかなり深く」
「……軽く?」
「軽くです」
黒のJOKER様は、しばらく沈黙した。
「白いの」
「なんだ、黒いの」
「我々は今まで、武器の切れ味や破壊力について話していたはずだ」
「そうだな」
「いつの間にか、武器に触れただけで対象を炭にする話になっている」
「そうだな……」
そこへ、ローズが手を挙げた。
「ちなみに、わたくしの赫刀化したカードも、投擲後に対象へ命中した際、変化は維持されていましたわ」
「つまり、飛んでいる間も熱を保っているのか?」
「ええ。命中した後も、しばらく熱を帯びておりました」
オウルが補足する。
「俺の投げナイフも同様だ。赫刀状態を維持したまま飛ばせる。もっとも、まだ熱の持続時間については測定中だが」
黒のJOKER様が額に手を当てた。
「……武器を振るうだけでなく、投げても危険なのか」
「はい」
「カードも?」
「はい」
「ナイフも?」
「はい」
「ドスも?」
ミヤビがにこやかに答えた。
「もちろんですわ。わたくしのドスも、赫刀状態ならば同様ですわよ?」
「……そうか」
白のJOKER様は、全員を見回した。
「確認する。赫刀化した武器は、通常の武器とは比較にならない熱を持ち、接触した対象を瞬時に炭化させる可能性がある。投擲物も例外ではない」
「その通りです」
「ならば、今後の訓練では耐熱性のある専用設備を使用すること。通常の訓練用具への使用は禁止。保管場所も分ける」
「承知しました」
四人が揃って返事をする。
……ただし。
「ところで、セナ」
「はい?」
「その柳葉刀、今は赫刀状態なのか?」
「いえ、解除していますよ」
「そうか。ならいい」
白のJOKER様は安心したように頷いた。
その直後、ミヤビが小さく手を挙げる。
「あのぉ……」
「なんだ、ミヤビ」
「先ほど、赫刀状態のドスを鞘に戻そうとしたら、鞘の方が先に焦げまして」
「…………」
「ですので、現在は鞘を別途製作していただいておりますわ」
黒のJOKER様が、ゆっくりと白のJOKER様の方を向いた。
「白いの」
「……なんだ」
「武器の熱で鞘が燃える組織というのは、いったい何なのだろうな」
「私も今、それを考えていたところだ」
会議室の隅で、オウルが静かにメモを取っている。
そのメモには、こう書かれていた。
『赫刀化した武器の取り扱いに関する注意事項』
* 接触対象は瞬時に炭化する可能性あり。
* 投擲後も赫刀状態を維持する場合あり。
* 通常の鞘・収納具は使用不可。
* 訓練時は専用設備を使用すること。
そして最後に、少し間を置いて付け加えた。
『熱い武器を持っていることを忘れて、うっかり触らないこと』
「……最後の項目、必要か?」
黒のJOKER様の問いに、オウルは真顔で答えた。
「必要です。俺が一度、解除したつもりで触れました」
「お前もか!!」
赫刀化の研究は、着実に進んでいた。
同時に、トランパーの安全管理規則も、着実に分厚くなっていた。