トランパー本部、四人専用訓練施設。
この日は、赫刀化の発動時間について、少し本格的な測定が行われていた。
測定方法は単純。
各自100回ずつ赫刀化を行い、発動までにかかった時間を記録する。
測定担当はオウル。ストップウォッチと記録用紙を手に、三人の結果を集計していた。
「……よし。全員分、集計が終わった」
「どうでした?」
セナが身を乗り出す。
オウルは記録用紙を見ながら答えた。
「結論から言う。全員、ほぼ同じところに落ち着いた」
「といいますと?」
ローズが尋ねる。
「1人100回の平均で、10.2秒から10.3秒だ」
「…………」
一瞬、沈黙が流れた。
「えっ、全員ですか?」
セナが確認する。
「ああ。多少の個人差はあるが、ほとんど差がない」
「100回ずつやって、ですの?」
「そうだ」
ミヤビは記録用紙を覗き込む。
「……随分と綺麗に揃いましたわね」
「偶然にしては揃いすぎている気もするな」
オウルは腕を組んだ。
「少なくとも、現時点では10.2秒前後が、俺たちの安定した発動時間らしい」
「ちなみに、最速は?」
ローズが尋ねる。
「そこも確認した。全員、最速記録は平均よりかなり短い。ただし、再現性がない」
「つまり、たまたま早く発動できたことはあるけれど、狙って出せるわけではない、ということですわね」
「そういうことだ」
セナは柳葉刀を眺めた。
「うーん……。100回やっても、結局ここに落ち着くんですねぇ」
「むしろ、100回やってこの数字なら、現状の発動速度としては信頼できる数値だろう」
オウルの言葉に、ローズも頷いた。
「確かに。数回だけ早くできた、という話とは違いますものね」
ミヤビは少し考えてから口を開いた。
「では、今後は平均10秒前後を基準にして、安定性を崩さずに短縮できるかを見ていくのがよろしいですわね」
「そうですね!」
セナも同意した。
その日の夕方、測定結果はJOKER様両名にも報告された。
白のJOKER様は資料を見て、少し感心したように言う。
「100回ずつ測定して、全員10.2秒から10.3秒か。これはなかなか興味深いな」
黒のJOKER様は、資料を閉じる。
「つまり、今のところ四人の赫刀化は、平均10.2秒前後で安定しているということだな」
「はい」
「よし。では、今後の訓練ではその数値を基準にしろ。無理な短縮はするな」
「承知しました」
四人が揃って返事をする。
……が。
「ただし、セナ」
「はい?」
「100回測定したからといって、次は1000回やろうなどと思うなよ」
「…………」
セナは一瞬だけ目を逸らした。
「……思ってませんよ?」
「今、考えただろう」
「ちょっとだけ……」
「やはりか!!」
ローズがとうとう吹き出した。
「ふふっ、セナ。顔に出ていますわよ(笑)」
「ええっ!?」
オウルは記録用紙の最後に、追記を残した。
『赫刀化の平均発動時間:10.2〜10.3秒。測定回数100回。なお、セナの追加測定意欲については別途管理を要する。』
ミヤビはそれを覗き込み、上品に笑った。
「オウルさん、最後の一文は必要ですわね」
「必要だ」
セナだけが、少し不服そうだった。