チャッピーに考えてもらった架空組織   作:缶コーヒー好き

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始まるよ、泣かないでbyローズ

トランパー本部、専用訓練施設。

 

この日、普段は4人だけで使用している訓練区域に、かなりの人数が集まっていた。

 

参加者は一般党員から幹部級まで。さらには白と黒、両方のJOKER様まで揃っている。

 

目的はただ一つ。

 

赫刀化の習得。

 

セナが柳葉刀で発見し、ローズがカードへ応用し、ミヤビがドスへ、そしてオウルも習得したあの現象。

 

当然、他の構成員たちも興味を持たないわけがなかった。

 

白のJOKER「ふむ。これだけ集まるとは、随分と盛況だな」

 

黒のJOKER「実際に習得できるかどうかは別だがな」

 

オウル「まあ、やり方自体は難しくありませんよ」

 

ローズ「ええ。とっても簡単ですわ」

 

セナ「うん。やることは単純だよ」

 

ミヤビ「ただし、簡単とは申しませんわ」

 

参加者たち「……?」

 

4人の言葉に、早くも不穏な空気が漂い始める。

 

まずは説明

 

セナが柳葉刀を持って前に出た。

 

セナ「まず、対象をしっかり持つこと。刀なら柄、カードならカード。そこから――」

 

セナは柄を握り直す。

 

セナ「『自分は万力である……!』って、強く思い込むの」

 

参加者A「……万力?」

 

セナ「そう。手だけじゃないよ。腕だけでもない。肩、背中、腹、脚……全身を使うの」

 

オウル「全身の力を、握り込むという一点に集中させるんです」

 

ミヤビ「言葉にすれば、それだけですわね」

 

ローズ「そして、死ぬほど力一杯握り込む。以上ですわ」

 

参加者B「えっ、それだけですか?」

 

ローズ「はい」

 

参加者B「もっとこう……特殊な呼吸法とか、決まった動作とか……」

 

セナ「ないよ」

 

参加者C「精神統一は?」

 

オウル「必要以上に意識しなくていいと思います」

 

参加者D「特別な技術は?」

 

ミヤビ「握ることですわ」

 

参加者たち「…………」

 

白のJOKER「実に簡潔だな」

 

黒のJOKER「簡潔すぎて逆に説明になっていない気もするが」

 

ローズの恒例行事

 

ローズは参加者たちの前に立ち、柔らかく微笑んだ。

 

ローズ「それでは、まずは一度やってみましょうか」

 

そして、必ず言う。

 

ローズ「始まるよ、泣かないで」

 

参加者A「えっ?」

 

参加者B「泣く……?」

 

ローズ「ふふ。大丈夫ですわ。最初は皆さん、似たような反応をなさいますから」

 

オウル「ローズ、その言い方だと余計に不安を煽るぞ」

 

ローズ「そうかしら?」

 

セナ「でも、ローズは毎回それ言うよね」

 

ローズ「ええ。訓練開始の合図ですもの」

 

ミヤビ「もはや儀式ですわね」

 

白のJOKER「……何が始まるんだ?」

 

黒のJOKER「本人たちに聞いてみろ」

 

訓練開始

 

参加者たちはそれぞれ手に持った訓練用の対象物を握る。

 

セナ「じゃあ、全身で。自分の身体が万力だと思って」

 

参加者A「自分は……万力……!」

 

参加者B「全身を……握る……!」

 

参加者C「ぬぅぅぅ……!」

 

参加者D「ぬおおおおおおおお!!」

 

オウル「力の入れ方が腕に偏っていますね」

 

ミヤビ「肩だけで頑張っても駄目ですわ」

 

セナ「足元から力を伝えるイメージ。全身で締め上げる感じ」

 

ローズ「焦らず、続けてくださいね」

 

参加者たちの顔が徐々に赤くなる。

 

しかし、赫刀化は起こらない。

 

一分。

 

二分。

 

三分。

 

参加者A「ぐっ……!」

 

参加者B「これ……本当に合っているのか……!?」

 

参加者C「そもそも、万力になったことがないんだが……!」

 

オウル「万力になったことがある人間はいないでしょうね」

 

ミヤビ「そこを強く思い込むのですわ」

 

参加者D「思い込みでどうにかなるものなのか!?」

 

セナ「うん。少なくとも私はそれでできたよ」

 

参加者D「説得力があるような、ないような……!」

 

幹部級も苦戦

 

少し離れた場所では、幹部たちも挑戦していた。

 

スペードのエース「む……!」

 

ハートのクイーン「これは……思った以上に難しいわね」

 

クローバーのキング「握力だけなら自信があるんだが……」

 

ダイヤのジャック「全身を使う、という感覚が掴めませんわね」

 

白のJOKERも訓練用の対象物を握っている。

 

白のJOKER「……自分は万力。自分は万力……」

 

黒のJOKER「白いの、お前は何をそんなに真剣にやっている」

 

白のJOKER「いや、せっかく参加したのだからな」

 

黒のJOKER「そうか。ならば私もやるか」

 

黒のJOKERも無言で握り込む。

 

しかし、二人とも変化は起こらない。

 

黒のJOKER「……」

 

白のJOKER「……」

 

黒のJOKER「これ、思った以上に難しくないか?」

 

白のJOKER「同感だ」

 

そして、オウルの助言

 

しばらくして、オウルが参加者たちの様子を観察して口を開いた。

 

オウル「皆さん、力を入れようとすることばかり意識していますね」

 

参加者A「違うんですか?」

 

オウル「力を入れるのではなく、全身で握り込むんです。手が全身の中心になるような感覚、とでも言いましょうか」

 

セナ「そうそう。私も最初はそれを何度も意識したよ」

 

ミヤビ「自分の身体を一つの器具として捉えるのですわ」

 

ローズ「そして、焦らないこと。力任せに長時間続ければいいというものでもありませんからね」

 

参加者B「……なるほど」

 

参加者C「言っていることは分かるんだが……」

 

参加者D「できる気がしない……!」

 

ローズ「ふふ。泣かないで」

 

参加者D「まだ泣いてません!!」

 

訓練終了後

 

結局、この日の訓練で赫刀化に成功した一般党員はごく少数だった。

 

幹部級にも成功者は出たものの、全員がすぐに習得できたわけではない。

 

白のJOKER「なるほどな。理屈は単純だが、実践するとなると話が違う」

 

黒のJOKER「これを最初に発見したセナも、よく再現できたものだ」

 

セナ「えへへ。まあ、何度も試したからね」

 

オウル「ただ、無理は禁物です。筋肉に負担が掛かりますから」

 

ミヤビ「特に最初から限界まで挑むのはお勧めしませんわ」

 

ローズ「そうですわね。焦らず、少しずつです」

 

参加者A「……ところで、ローズさん」

 

ローズ「はい?」

 

参加者A「どうして訓練開始時に、毎回『始まるよ、泣かないで』と言うんですか?」

 

ローズ「え?」

 

ローズは一瞬だけ目を丸くし、それから微笑んだ。

 

ローズ「だって……皆さん、最後には大抵、泣きそうなお顔になりますもの」

 

参加者たち「…………」

 

オウル「否定できないな」

 

セナ「ふふっ」

 

ミヤビ「確かに、今日も何人かいらっしゃいましたわね」

 

黒のJOKER「……次回から私も言おうか」

 

白のJOKER「やめておけ。参加者が減るぞ」

 

ローズ「では、次回も開始時には一度だけ申し上げますわね」

 

参加者たち「もう少し優しい言葉にしてくれませんか!?」

 

ローズ「始まるよ、泣かないで」

 

参加者たち「まだ始まってないです!!」

 

こうしてトランパーでは、赫刀化の訓練そのものと同じくらい、ローズの開始時の一言が有名になった。

 

そして、いつしか構成員たちの間で、こんな噂が流れるようになる。

 

「赫刀化の訓練は難しい。だが、ローズさんの『泣かないで』を聞いたら、もう逃げられない」

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