二人はついに、目的地であるグランド学園のある街へと足を踏み入れた。
街には多くの人々が行き交い、商店や武器屋、魔道具店など、様々な店が立ち並んでいる。
遠くには巨大な学園の校舎が見え、その周囲には多くの学生らしき人影もあった。
「わあ……すごいわね!」
ミラは目を輝かせながら周囲を見渡す。
「ここがグランド学園のある街か……思っていたより大きいな」
ゼロも感心したように街を見渡した。
「よし! 早速学園に行きましょう!」
そう言って歩き出そうとするミラ。
「ちょっと待って」
ゼロが慌てて呼び止めた。
「何よ?」
「まだ入学してないんだから、いきなり学園に入れるわけないだろ?」
「……あっ」
ミラは一瞬固まった。
「そ、そうだったわね!」
「まずは入学試験を受けないとね。それに、今の装備で合格できるかどうかも分からないし」
ゼロは自分の剣や防具を見下ろす。
「そこは努力するしかないんじゃないかな」
「そうね! なら、早速行きましょう!」
「とりあえず、町の人たちに場所を聞いて情報を集めよう」
「分かったわ!」
二人は近くにあった店の店員に声をかけ、学園への道を尋ねた。
親切な店員に道を教えてもらい、しばらく歩くと、立派な門が見えてきた。
そこには大きく、
【グランド学園】
と刻まれた看板が掲げられていた。
「ここが……」
「そうよ! ここが私たちの通う学園になるのね!」
ミラは嬉しそうに門を見上げる。
すると、門の前に立っていた大柄な門番が二人に声をかけてきた。
「おう、ちびども。ここに何か用か?」
「そうよ。私たち、ここに入学したいんだけど、どうすればいいの?」
「入学希望者か。だったら、そこの列に並ぶといい。受付はあっちだ」
門番は少し離れた場所を指差した。
「ありがとうございます」
ゼロが礼を言う。
「おう、頑張れよ」
子供相手だからか、門番は気さくに答えてくれた。
「ゼロ、行くわよ!」
「ああ、今行くよ」
受付には、入学希望者と思われる子供たちが列を作っていた。
しばらく待っていると、ようやく二人の番がやってきた。
受付には若い女性職員が座っていた。
「こんにちは。入学希望者ね?」
「はい!」
ミラが元気よく答える。
女性職員は二人を見比べてから尋ねた。
「それじゃあ、まず身分証明書を見せてもらえるかしら?」
「えっと……」
ゼロとミラは顔を見合わせた。
「僕たちは村を出てきたばかりで、この町のこともよく分からないんです」
「なるほど。つまり、身分証は持っていないのね?」
「はい」
女性職員は少し考え込んだ。
「本当なら身分証が必要なんだけど……今回は特別に作ってあげるわ。あなたたち、文字は書ける?」
「簡単な文字であれば書けます」
「それなら、この用紙に必要事項を記入してちょうだい」
そう言って二人に記入用紙を渡した。
ゼロは自分とミラの分を記入していく。
名前、年齢、出身地、スキルなど。
そして、職員が内容を確認し始めた。
「えーと、男の子の方がゼロ君ね。スキルは……ハッカー?」
「はい。正式にはハッキングです」
「ハッキング……聞いたことがないわね。ちなみに、どんなことができるの?」
「色々なことができる可能性のあるスキルです。僕もまだ調べている最中なので、詳しくは分かりません」
「そう。珍しいスキルなのね」
職員は不思議そうに用紙を見つめたが、それ以上は深く追及しなかった。
「次はミラちゃんね。スキルは魔法使い。これは一般的なスキルね。魔力も多いみたいだし、将来が楽しみね」
「ありがとうございます!」
「それで、あなたは何を目指しているの?」
「私が目指すのは大賢者! つまり、賢者よ!」
ミラは自信満々に答えた。
「ふふっ、いい夢ね。頑張ってね」
「はい!」
女性職員は二人の書類を受け取り、奥にある魔道具へと手をかざした。
すると、二枚のカードが作られていく。
「はい、これで二人の身分証ができたわ。なくさないように気をつけてね」
受け取ったカードには、それぞれの名前と基本情報、スキル、魔力量などが記載されていた。
ゼロ
【魔力量:極少】
【スキル:HACKING】
ミラ
【魔力量:高】
【スキル:魔法使い】
「ありがとうございます」
二人は身分証を受け取り、大切に鞄へしまった。
「それと、もし入学できたら、これとは別に学生証が発行されるからね」
「分かりました!」
「それでは、入学試験頑張ってね」
「はい!」
受付を終えた二人は、試験会場へと向かった。
そこには大勢の入学希望者が集まっていた。
「ゼロ、いよいよね」
「ああ。お互い頑張ろう」
「もちろんよ! 二人で入学するんだからね!」
「うん。約束だ」
二人は拳を軽く合わせた。
やがて、試験官らしき人物が前に出てくる。
スキンへッドで、かなり体格の良い男だった。
その男が大きな声で説明を始める。
「いいか! これより入学試験を開始する!」
試験会場が静まり返る。
「まず最初に行うのは魔力量の測定だ! 次に攻撃威力の測定! 最後に試験官との模擬戦を行う!」
男は一度言葉を切る。
「模擬戦では、戦闘能力だけでなく判断力も確認する! なお、試験結果によっては不合格となる者もいる。心してかかれ!」
「「はい!」」
受験生たちの声が響いた。
最初は魔力量の測定だった。
方法は簡単で、光る水晶に手を触れ、どの程度の光を放つかで魔力量を測定する。
さらに、光の色によって適性属性も確認できる仕組みらしい。
受験生たちは順番に水晶へ手をかざしていく。
中には強く輝く者もいれば、弱い光しか出ない者もいた。
そして、ミラの番がやってきた。
「次、ミラ!」
「はい!」
ミラが水晶に手を触れる。
すると、水晶が赤、青、白の三色に輝いた。
「おおっ!」
試験官が目を見開く。
「これはなかなかの魔力量だな! しかも複数の属性適性があるのか!」
周囲の受験生たちも驚いた様子でミラを見ていた。
ミラは少し照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます!」
そして、次はゼロの番だった。
「次、ゼロ!」
「はい」
ゼロが水晶に手を触れる。
しかし――
水晶は光らなかった。
「……ふむ。0か」
周囲から笑い声が漏れる。
「なんだよ、あれ」
「魔力がないじゃないか」
「本当に受験するつもりなのか?」
ゼロは気にする様子もなく、水晶から手を離した。
すると、ミラがそっと近づいてくる。
「大丈夫よ、ゼロ。あなたの強みはそのスキルなんだから」
「ありがとう、ミラ」
ゼロは小さく笑った。
次は攻撃威力の測定だった。
会場には魔力に反応する的が設置されており、そこに攻撃を当てて威力を測る仕組みになっている。
「次、ミラ!」
ミラは杖を構えた。
「ファイヤーボール!」
放たれた火球が的に直撃する。
ドンッ!
的が大きく揺れ、表面に焦げ跡が残った。
「よし! 合格だ!」
ミラは満足そうに頷く。
そして、ゼロの番になる。
「次、ゼロ!」
「はい」
ゼロは的の前に立った。
魔法が使えない自分にとって、これは難しい試験になる。
しかし、方法がないわけではない。
(やってみるか……)
「ハッキング」
目の前に画面が現れる。
ゼロは自分の状態を確認し、攻撃力に関する項目を探した。
【対象:ゼロ】
【攻撃力:低】
(ここを変更すれば……)
ゼロは慎重に操作する。
しかし、画面には警告のような表示が現れた。
【警告:負荷が発生します】
「……やっぱり簡単にはいかないか」
それでもゼロは操作を続けた。
しばらくすると、攻撃力の数値が変化する。
「よし……」
だが、ゼロはそのまま魔法を放つことはしなかった。
代わりに、試験会場の端に置かれていた模擬剣を手に取る。
「おい、何をするつもりだ?」
試験官が不思議そうに尋ねた。
「これを使います」
ゼロは剣を構えた。
そして、的に向かって踏み込む。
「はああっ!」
ザンッ!!
剣が的を切り裂いた。
切り口は決して綺麗とは言えなかったが、的は確かに破壊されていた。
「……ほう」
試験官は少し驚いた様子だった。
「魔法を使わず、剣で破壊したか。なるほどな」
ゼロは剣を戻し、息を整える。
(やっぱり、かなり疲れるな……)
ミラが遠くから親指を立ててくれた。
ゼロも小さく頷き返した。
そして、最後の試験。
試験官との模擬戦だった。