コードゼロ   作:アホアホマン

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第5話 新しい友達

「……それにしても、広いわね」

 

隣を歩くミラが、校舎を見回しながら呟いた。

 

「そうだね。教室に着く前に迷子になりそうだよ」

 

「あなた、方向音痴だったかしら?」

 

「単純に広すぎるんだよだよ」

 

「言い訳に聞こえるわね」

 

「君は相変わらず容赦がないね」

 

ミラは小さく笑う。

 

「とりあえず、教室に向かいましょう。初日から遅刻なんて嫌よ」

 

「分かってるよ」

 

僕たちは校舎の廊下を進んでいく。

廊下の壁には魔法で動く案内板が設置され、天井には淡い光を放つ魔導灯が浮かんでいた。窓の外には、空中に架けられた渡り廊下や、魔法で浮遊する小さな庭園まで見える。

さすがは魔法学園。

何もかもが魔法尽くしだ。

 

……魔力のない僕には、少々居心地が悪いけど。

 

そんなことを考えていた、そのときだった。

 

「だから、何度言えば分かるんだ! お前のような奴が、俺の前を歩くなと言っているだろう!」

 

廊下の先から、怒鳴り声が響いてきた。

俺とミラは同時に足を止める。

 

「……何かしら?」

 

「さあね。朝から元気な奴がいるみたいだよ」

 

声のする方向へ視線を向けると、数人の生徒が集まっていた。

その中心にいたのは、金髪の少年と、茶色がかった髪の少年だった。

金髪の少年は、いかにも育ちのよさそうな整った身なりをしている。制服にも乱れはなく、その態度からは自信と傲慢さがにじみ出ていた。

一方、怒鳴られている茶髪の少年は、どこか気の抜けた表情を浮かべている。

 

「いやぁ、そう言われても困るんだけどなぁ。廊下はみんなのものだろ?」

 

「口答えするな!」

 

「はいはい、分かった分かった。そんなに怒ると眉間にシワができるぞ?」

 

「貴様……!」

 

金髪の少年が一歩踏み出す。

 

周囲の生徒たちは止める様子もなく、面白がるように二人を眺めていた。

 

「お前のような魔法もまともに扱えない落ちこぼれが、どうしてこの学園にいる? 空間魔法が使えるからといって、何でも許されると思うなよ!」

 

「いや、俺だってちゃんと反省してるって。ちょっと転移先を間違えただけじゃないか」

 

「ちょっとだと?」

 

「うん。ほんの三階分くらい?」

 

「それをちょっととは言わない!」

 

……どうやら、何か失敗したらしい。

 

僕は隣のミラに目を向け方をすくめながら聞く。

 

「どうする?」

 

「どうするって?」

 

「助けるかどうか」

 

ミラは少しだけ考え、目の前の光景を見つめた。

 

「別に、私たちには関係ない話でしょう?」

 

「まあね」

 

「でも……」

 

彼女は小さく息を吐く。

 

「見ていて気分のいいものではないわね」

 

「そうだね」

 

ゼロが歩き出し声を掛ける。

 

(魔力がないというだけで、何度も馬鹿にされてきた。だからといって、近くで誰かが同じように見下されている光景を見過ごせるほど、僕は器用じゃない。)

 

「おい、そこの二人!」

 

金髪の少年がゼロとミラに気づいた。

 

「何だ? 見世物じゃないぞ!」

 

「いや、十分見世物になってるよねぇミラ」

 

「私に聞かないでよ」

 

僕の言葉に、少年の眉が動く。

 

「貴様、誰に向かって口を利いている?」

 

「通りすがりの学生だよ。ところで、その人が何かしたのか?」

 

「お前には関係ない!」

 

「だったら、その人を解放すればいい。話はそれからだろ?」

 

「ふん。魔力のない人間が、偉そうに口を挟むな!」

 

……なるほど。

 

僕に魔力がないことに気づいたらしい。

 

「そうか。じゃあ、魔力があれば口を挟んでもいいのか?」

 

「当然だ!」

 

「ずいぶん都合のいいルールだね」

 

背後からミラが一歩前に出た。

 

「そもそも、彼の転移魔法の失敗と、あなたが彼を怒鳴りつけることに何の関係があるのかしら?」

 

「なっ……!」

 

「注意するなら、失敗した部分だけを指摘すればいいでしょう。周囲の人間まで巻き込んで侮辱する必要はないわ」

 

金髪の少年は言葉に詰まる。

 

僕はその隙に、茶髪の少年へ手を差し出した。

 

「立てるか?」

 

「あ、ああ。ありがとう!」

 

少年は僕の手を取って立ち上がる。

 

「助かったよ! いやー、まさか初対面の人に助けられるとは思わなかった!」

 

「そうじゃないよ。見ていて気分が悪かっただけだよ」

 

「それでも十分ありがたいって!」

 

少年は人懐っこい笑顔を浮かべた。

 

その様子に、僕は少しだけ呆れる。

 

「君、ずいぶん元気だね」

 

「元気だけが取り柄だからな!」

 

そのとき、金髪の少年が不満そうに口を開いた。

 

「覚えていろよ。俺はレオン・ヴァルシュタインだ。次に会ったときは、こんな態度では済まさないからな!」

 

そう言い残し、レオンは取り巻きとともに去っていった。

 

「……随分と偉そうな奴だったね」

 

「貴族の子供かしら」

 

ミラが呟く。

 

「かもしれないね」

 

すると、助けた少年が勢いよく俺たちの前に立った。

 

「いやー、本当にありがとう! 俺はワープライト! ライトって呼んでくれ!」

 

「ゼロだ」

 

「私はミラよ」

 

「ゼロとミラか! よし、覚えた!」

 

ワープライトは満面の笑みで頷く。

 

「ところで二人とも、もしかして新入生?」

 

「ああ。これから教室に向かうところだよ」

 

「おおっ! それならちょうどいい! 俺が案内してやるよ!」

 

「……君が?」

 

「おう! こう見えても、この学園のことなら任せとけ!」

 

ミラが足元に散らばった荷物を見た。

 

「さっき転移魔法を失敗していたようだけど?」

 

「……あれはちょっとした事故だ!」

 

「三階分?」

 

「聞いてたの!?」

 

ゼロは思わずため息をつき付いていく。

 

(なんだか前途多難だね)

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