光堕ちしないラスボス系生徒 作:あいら
放課後のトリニティは、平和だった。
校舎を離れた中庭には柔らかな日差しが落ち、白い石畳の隙間から伸びた草が風に揺れている。遠くで生徒たちの笑い声がした。歴史ある総合学園の午後としては、少々出来すぎているほど穏やかな光景だ。
私は日陰のベンチに腰掛け、腕時計に目を落とした。約束の時刻を七分過ぎている。遅刻されるのは構わないが、お腹が空いているときに待たされるのは、あまり気分ではない。
「ユラ様っ! 申し訳ありません、お待たせいたしました!」
息を切らして駆け込んできた少女が、大きな紙袋を差し出した。パテル分派に所属する一年生で、祝祭教会にも籍を置いている子だ。名前は、確か……。
まあ、思い出せないものは仕方がない。
「お疲れ様です。随分と急いできたのですね」
「はい! ユラ様のお食事ですから!」
「まあ。ふふっ、ありがとうございます。よかったら、一緒に食べますか?」
「そ、そのような! 私がユラ様とご一緒するなど……!」
少女の頬が赤く染まった。名前すら覚えられていないというのに、これほど感激するものなのだろうか。信仰とは本当に便利な仕組みだと、改めて感心する。
ベンチから少し離れた場所で、二人の生徒がこちらを見ていた。私が目を向けると、彼女たちは慌てて胸元の銀色の徽章に手を添える。祝祭教会の信徒にだけ通じる挨拶だ。会釈を返すと、片方が感激したようにもう一人の手を握った。ただ目が合っただけなのだが、なんとも安上がりな幸福だ。
しかし、その安上がりな幸福にも効能はある。彼女たちは私のためなら喜んで時間を使い、財布を開き、時には銃まで持つ。しかも、私から強制されたと思っていないのだから大したものだ。先月はゲヘナから来た信徒が保護寮に新しい寝具を寄付し、ミレニアムの信徒は診療所の端末を無償で更新してくれた。どちらの学校の生徒も、私が頼んだわけではない。
あの子たちの言葉を借りるなら、すべては『救ってくださったユラ様への恩返し』らしい。実に美しい友情である。私の知らないところで勝手に育ってくれるのだから、これほど便利な庭はそうない。
紙袋を受け取り、中身を取り出した。アップルジュースにポテト、それから箱入りのバーガーが一つ。
朝食でもあるまいし、どうしてアップルジュースなのだろう。炭酸が飲みたかったのですが。
ストローを挿して一口飲む。悪くはない。悪くはないけれど、今の気分とは違う。続いて箱を開いたところで、私は手を止めた。
「……ん?」
「ど、どうかなさいましたか?」
「私、チーズバーガーをお願いしたつもりなのですが」
箱の中に収まっていたのは、立派な目玉焼きの挟まった月見バーガーだった。期間限定なのは結構なことだが、私が頼んだものではない。
「これ、違いますよね」
「え……?」
少女の顔から血の気が引く。視線が箱と私の顔の間を往復し、唇が小刻みに震え始めた。
「も、申し訳ありません! 私、てっきり、月見の方だと……!」
「ふふっ。そんなに慌てなくても結構ですよ。人は誰だって間違えるものですから」
優しく告げると、少女はかすかに安堵した。もう許されたと思ったのだろう。実に素直な子である。
「ですが、反省は必要でしょう?」
「……はい?」
「お仕置きです。少しばかり、あちらで反省してきてください」
私は中庭の端、植え込みに囲まれた通路へ目を向けた。そこに控えていた三人の信徒が、すぐさま歩み寄ってくる。誰も私の指示を疑わない。私が人を救えと言えば救い、罰せよと言えば罰する。その単純さが、なかなか使い勝手がいい。
「ユ、ユラ様……? お願いです、どうか……!」
「大袈裟ですね。少し間違えただけなのでしょう? 少し反省すればいいんです」
少女が膝を折った。涙を零し、両手を合わせて何度も謝る。さっきまであんなに嬉しそうだったのに、今は世界の終わりを迎えたような顔だ。些細な言葉でこうも変わるのだから、見ていて飽きない。
「……ごめんなさい……私、ユラ様に嫌われたくなくて……!」
「私がいつ嫌いになったと言いましたか?」
私は少女の頬に指先を添えた。冷たい。すっかり怯えてしまっている。
「安心してください。私はあなたを見捨てたりなんかしませんよ」
「……っ、ありがとうございます……!」
「ええ。ですから、行ってらっしゃい」
三人の信徒が少女を連れていく。そのうち一人は、彼女と同じ保護寮で寝起きする少女だった。昨日まで並んで勉強をしていた相手を、何の躊躇もなく通路へ連れていく。私が「仲のよいお友達なのでしょう?」と尋ねると、少女は驚いたように振り返った。
「はい! だからこそ、ちゃんと反省してもらわないと。エマはユラ様のご注文を間違えたのですから、罰を受けて当然です!」
ああ、エマ。そういう名前でしたか。
「私、エマがユラ様に嫌われるなんて耐えられません。友達だからこそ、ちゃんと分かってほしいんです!」
「……ふふっ。そうですね。よいお友達をお持ちで、エマも幸せでしょう」
「ありがとうございます!」
友達だから罰を与える。彼女たちの間では、そこに何の矛盾もないらしい。ああ、まったくもう面白くてたまらない。
ほどなくして、押し殺した悲鳴と、何かが硬い地面にぶつかる音が響き始めた。私はベンチに座り直し、ポテトを一本つまむ。
さて、どうしましょう。これでは昼食にならない。買い直しを頼むにしても、あの子はしばらく使いものになりそうにないし、別の子を呼ぶべきだろうか。
通路の方から謝罪の声が聞こえる。よく声が出る子だ。こうして聞いている限りでは、反省しているように思える。
……それにしても、チーズバーガーと月見バーガー。どう聞き間違えればそうなるのだろうか。まったく、困ったものである。
スマートフォンを取り出し、連絡先を開いた、そのときだった。
「――君たち、そこで何をしているのかな」
穏やかな、しかし奇妙によく通る声だった。
通路の入口に一人の大人が立っている。身なりはごく普通で、トリニティの生徒でも教員でもない。けれど、私はその顔に見覚えがあった。教団の情報担当から何度も送られてきた写真だ。
シャーレの先生。
ああ、なるほど。これが噂の。
「もう一度聞くよ。何をしているの?」
三人の信徒が硬直した。先生は通路へ進み、地面に倒れた少女を見つけると、表情を変えた。
「やめるんだ。今すぐ」
怒鳴ったわけではない。それでも、逆らう余地のない声だった。面白い。噂にあった柔和な大人とは、少々印象が違う。
私は携帯の画面を二度叩き、信徒たちへ短い命令を送った。
『退きなさい。余計なことは話さないように』
信徒たちは一斉に通路を離れ、異なる出口へ散っていった。先生は追いかけなかった。倒れた少女のもとに膝をつき、意識を確かめる方を選んだのだ。
「聞こえる? 大丈夫、もう殴られないからね。今、救護騎士団を呼ぶよ」
少女が何かを言う。声が小さくて聞き取れない。先生は腰を屈め、耳を近づけた。
「……ちが……私が、間違えたから……」
「間違えた?」
「私が悪いんです……ユラ様の注文を間違えたんです……罰を受けて当然なんです。だから、あの方を怒らないで……」
ふっ。
思わず口元が緩んだ。
殴られたことより、私の機嫌を心配するとはなかなか殊勝ではないか。あの子はもっと大切に使ってもいいかもしれない。
「誰に、何をされたのか、話せるかな」
「……だめ……言えません……」
「今は無理に話さなくていい。先に手当てをしよう」
先生は携帯で救護騎士団へ連絡を入れた。それから上着を脱ぎ、震える少女の肩に掛ける。乱暴に扱われないよう、一つ一つ動作を確かめながら。
随分と丁寧なことをする人だ。
彼女が震えているのは寒さのせいではない。先生だって、それくらい分かっているだろう。それでも上着を貸す。身体を温めるより先に、安心させたいらしい。
まあ、無駄ではないのだろう。虫も環境を整えてやれば落ち着くものですし。
そう観察を続けていると、先生が顔を上げた。こちらを見ている。
「……君。ずっとそこにいたの?」
「ええ。お邪魔でしたか?」
「今のこと、見ていたよね」
「ええ、見ていましたよ」
隠すほどのことでもない。私はジュースを置き、柔らかく微笑んだ。
「大変な騒ぎでしたね。先生こそ、お怪我はありませんか?」
「……私のことはいい。君は、あの子たちを知っているのかな」
「同じ学園の生徒ですもの。顔くらいは存じていますよ」
「じゃあ、誰が命令したのかも知ってる?」
あら。
意外と鋭い。もっと情に流される人なのかと思っていたが、悪いことは悪いとちゃんと叱れる人物だったようだ。
「さあ。どうでしょう」
とりあえず、とぼけておくことにする。わざわざ自分がやったと告げる理由などないし、説教を聞くつもりもない。
先生は何か言いかけたが、エマが袖を引いた。彼女は必死に首を振り、私が座っているベンチの方へ何度も視線を送っている。
そうですね。今ここで私を問い詰めたところで、あの子が喜ぶわけではありません。先生も板挟みというわけだ。
ああ、なかなか愉快である。
ほどなくして、救護騎士団の生徒たちが駆けつけた。エマは担架に乗せられ、先生が搬送先を確かめる間も、何度も私の方を見ていた。手を振ってあげようかと思ったが、先生がこちらを見ていたのでやめておいた。
先生が私の前に戻ってきたのは、中庭がようやく静けさを取り戻してからだった。
「少し、いいかな」
「ええ。私でよろしければ」
私はスマートフォンを伏せ、座り直した。早く話を終えてもらえば、今度こそまともな食事にありつけるのですが。
「名前を聞いてもいい?」
「御影ユラと申します。トリニティの二年生です」
「……ユラ」
先生はその名前を確かめるように繰り返した。
「さっきの子が何度も呼んでいた名前と、同じだね」
「そうですね。そのように呼んでくださる方は少なくありませんから」
「知り合いなんだ?」
「ええ。教会の活動を通してお会いしたことがあります」
先生の視線が私の手元へ落ちる。アップルジュース、ポテト、閉じられたバーガーの箱。食事の品評でもなさるおつもりでしょうか。
「君は、あの子が殴られている間、ずっとここにいたんだよね」
「はい」
「どうして止めなかったのかな」
……はぁ。
なぜ私が
もっとも、ここで本音を話す必要もない。
「……怖かったんです」
声を小さくし、膝の上で指を握り合わせる。視線を落としたまま一度だけ先生の顔を窺う。これで立派な、暴力を目撃して怯える無力な女子生徒の完成だ。
我ながら大した演技力ですね。賞の一つでもいただきたいものです。
「私まで巻き込まれたらと思うと、身体が動かなくて……」
「……怖かったんだね」
「ええ。お恥ずかしい限りです」
「だったら、無理に止めに入らなくてもいい。でも、誰かを呼ぶことはできたと思う」
そう言って、先生は少しだけ間を置いた。
「それと、もう一つ気になっていることがあるんだ」
「何でしょう?」
「さっき、あの子たちが急にいなくなる前に、君は携帯を触っていたよね」
……ほう。
思っていたより、周囲を見ていらしたらしい。
「まあ。私の携帯が気になりますか?」
「画面は見ていないよ。ただ、あの子たちが同じタイミングで動いたから」
「偶然ではありませんか? 私も友人と連絡を取っていただけですし」
「……そうかもしれないね」
あっさりと引いた。疑いを捨てたのではなく、証拠のない話をここで押し通すつもりがないのだろう。やれやれ。柔和なだけの大人と聞いていたのに、案外面倒な方だ。
「それより先生。こちらからも、一つ伺ってよろしいですか?」
「……何かな」
「先ほどの子は、罰を受けて当然だとおっしゃっていましたね。本当に本人が望んでいたのなら、先生はどうなさるのでしょう?」
「暴力的なものは止めるよ」
迷いのない返事だった。
「本人が望んでいたとしても?」
「うん。どうしてそう思ったのかは、ちゃんと聞く。でも、誰かに殴られていいという話にはならないから」
「ふふっ。本人の意思を尊重するといいながら、結局は先生の価値観を優先するのですね」
「……そう言われても仕方ないかもしれない」
思わず目を瞬かせた。この手の人間は、自分が絶対に正しいと力説するものだと思っていたのだが。
「でも、あの子はずっと、自分が悪いって言っていた。まずは落ち着いて、自分の気持ちを話せるようにしたいんだ」
「それでも、教会に戻りたいと言ったら?」
「理由を聞くよ。戻りたいという気持ちも、怖くて戻らずにいられない気持ちも、同じ言葉になることがあるから」
……なるほど。
少々、厄介ですね。罰は当然だと信じている子を、頭ごなしに否定してはくれないらしい。暴行を咎めて満足して帰る大人なら、扱いやすかったのに。
「先生は、お優しいのですね」
「そうかな」
「ええ。見ず知らずの生徒のためにそこまでなさるなんて。私には到底できません」
「君に同じことをしてほしいとは言わないよ」
先生の声が少し和らいだ。
「ただ、あの子が助けを求められるようにしたい。それくらいは、できると思うんだ」
……ふむ。
私はカップを持ち上げた。すっかり温くなってしまっている。せっかくの午後なのだから、もっとおもしろい話題にしてほしいものだが、これはこれで悪くない。
「では、先生。あなたが助けようとした生徒が、他の生徒を傷つける側だったら?」
「まず、止めるよ」
「それでも、助けるのですか?」
「したことの責任は取ってもらう。でも、その子に話を聞くことまでやめるつもりはない」
先生は当然のように言った。傷つけられた子も、傷つけた子も。止めて、叱って、それから話を聞く。どこまでも欲張りな方らしい。腕は二本しかないというのに、いったい何人分の問題を抱えるつもりなのだろう。
「……ふっ」
「どうかした?」
「いえ。先生は、随分と欲張りでいらっしゃると思いまして」
「……そうかもしれないね」
また、認めた。この人は自分の限界も承知のうえで、生徒に手を伸ばすという。そんな無駄なことに熱心になれる神経が、私にはどうにも理解できない。では、両手を塞がれてしまったら? どちらか一人を選ばなければならなくなったら? そのときも、今のような顔をしていられるのだろうか。
……ああ。
これは少し、見てみたい。
「ユラ」
不意に名前を呼ばれた。
「君はさっき、あの子のことをどう思った?」
「……どう、とは?」
「君を見ていたんだ。救護騎士団が来るまで、何度も」
私はカップを置いた。それは知っている。あんなに一生懸命こちらを見ていたのだから、気づかない方が難しい。
「……
「そう」
「ええ。あれほど怯えて、泣いて。見ているこちらが辛くなるくらいでした」
先生は何も言わなかった。肯定も否定もせず、ただ私の顔を見ている。先ほどまでより、ほんの少し長い沈黙だった。
「……君とも、もう一度話がしたいな」
「まあ。お誘いでしょうか?」
「うん。今日のことも、君のことも、まだよく分からないから」
……ふふっ。
分からない、か。結構なことだ。
「構いませんよ。機会があれば、ぜひ」
先生はシャーレへの連絡方法を教えようとしたが、私は丁重に断った。必要になればこちらから調べられる。わざわざ相手に主導権を渡すこともない。
立ち去る
予想していたよりも、ずっとおもしろそうな大人に出会えたのだから。
「……ユラ様」
背後から聞き慣れた声がした。見上げなくても分かる。長い黒髪、軍服めいた制服、それから人目を引く百八十五センチの長身。私の腹心、白鷺シオンだ。
「遅かったですね、シオン」
「申し訳ありません。先ほど救護騎士団の方々とすれ違いました。何かあったのですか?」
「躾を少々。……そんなことより、昼食を買い直してください」
シオンは私の足元の紙袋を見た。手つかずのバーガーと、食べかけのポテト。それから、さっきまで騒がしかった通路へ視線を移した。
「……また、ですか」
「何か問題でも?」
「いえ。ですが、このような場所で騒ぎを起こせば、ユラ様にも――」
「シオン」
「……はい」
「今は説教を聞く気分ではありません」
彼女はすぐに口をつぐんだ。何もないわけがないだろうに。本当に分かりやすい子だ。まあ、そこが面白いのですが。
「それより、焼き鳥はいかがでしょう。せっかくです、一緒に買いに行きましょうか」
「……承知しました」
歩き出したシオンの首元には、黒いチョーカーがついていた。私が贈った品だ。少し視線を向けただけで、彼女の手が無意識に首へ伸びる。
「そうそう、シオン」
「はい」
「面白い方にお会いしました」
「……まさか、シャーレの先生ですか」
「ご存じでしたか。ふふっ、話が早くて助かります」
先生という言葉を聞いた途端、妙な懐かしさが胸の奥をかすめた。前にもこんなことがあった気がする。画面の向こう。知らない誰かが遊んでいた、名前も忘れてしまったゲーム。確か、先生と呼ばれる人物がいた。
昔の私は、こことは違う世界で生活していた。そのことだけは覚えている。どうしてここに生まれたのか、前の人生がどう終わったのかは曖昧だ。だが、そんなことはどうでもいい。今の人生の方が、ずっと楽しいのだから。
「……シオン。あの方について、詳しく調べておいてください」
「何か懸念が?」
「いいえ。単なる興味ですよ」
私は空になった紙カップをゴミ箱へ放った。縁に当たり、軽い音を立てて落ちる。入った。なかなか運がいい。
「生徒のために怒り、生徒のために駆け回る。あんな大人が本当にいるのですね」
「……先生は、そのような方だと聞いています」
「ふふっ。そうですか」
生徒のことだけを思う大人。そんな人が救いようのない生徒を前にしたとき、どんな顔をするのか。想像すると、口元が緩む。久しぶりに見つけた面白い相手だ。大事にしなくては。
「……しばらく退屈せずに済みそうですね」
***
救護騎士団から届いた経過報告を読み、先生は端末を置いた。エマと名乗った少女の命に別状はない。ただ、診察の間も自分が罰を受けるのは当然だったと繰り返し、暴行を加えた友人たちを庇っていたという。
『搬送中、御影ユラの許しを得られないことへの強い不安を訴えていました。現在も教会への帰還を希望しています。退院後の生活環境について、慎重な確認が必要と思われます。』
丁寧な文面だった。だが、書かれている内容は穏やかではない。先生は中庭でエマが何度もユラを見ていたことを思い出した。御影ユラは怖くて動けなかったと言っていた。先生にはまだ、その言葉が本当かどうか判断できない。
ただ一つ、確かなことがある。エマは傷つけられた相手を庇い、罰を与えた者のもとへ帰ることを望んでいた。その理由を、本人にさえきちんと説明できるのだろうか。
先生は端末を開き、二つの名前を書き留めた。
『祝祭教会』
『御影ユラ』
それから、救護騎士団へ返信する。
『手伝ってくれてありがとう。エマの退院後のことは、本人の希望を聞きながら、考えていくよ』
送信ボタンを押すと、先生はしばらく画面を見つめていた。中庭で出会ったユラの微笑みが、どうしても頭から離れなかった。