IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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セシリアとのバトル
は~じま~るよ~♪


第11話 エリート

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

 オルコットさんがふふんと鼻を鳴らす。また腰に手を当てたポーズを取っていた。

 けれど俺の関心はそんなところにはない。俺の目、ハイパーセンサーはオルコットさんの機体へと向いている。

 鮮やかな青色の機体『ブルー・ティアーズ』。その外見は、特徴的なフィン・アーマーを四枚背に従えている。

 さらに目を引くのはオルコットの手にある二メートルを超す長い銃器――検索によると、六七口径特殊レーザーライフル≪スターライトmkⅢ≫というらしい――が握られている。ISは元々宇宙空間での活動を前提に作られており、原則として空中に浮いている。それにより自分の背丈より大きな武器を使うのは大して珍しくない。

 アリーナ・ステージの直径は二〇〇メートル。オルコットさんのライフルは発射から目標到達までの予測時間は〇.四秒。すでに試合は始まっているので、いつ撃ってきてもおかしくない。

 

「あなたたちに最後のチャンスをあげますわ」

 

 腰に当てた手を俺たちの方にびっと人差し指を突き出した状態で向けてくる。左手に持っている銃は、余裕なのか砲口が下がったままである。

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

 そう言って目を笑みに細める。――警戒、敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行。セーフティのロック解除を確認。

 一夏も同じ情報が来ているのか、お互いに顔を見合わせる。あの顔はどうやら同じことを考えているらしい。

 

「そういうのはチャンスとは言わないな」

 

「そうだな。それに、俺たちは負けるつもりでここにいるわけじゃない」

 

「そう?残念ですわ。それなら――」

 

 ――警告!敵IS射撃移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填。

 

「お別れですわね!」

 

 キュインッ!キュインッ!

 耳をつんざくような独特な音。それと同時に走った閃光が刹那、咄嗟に動いた俺が一瞬前までいた空間を通り過ぎていく。

 

「うおっ!?」

 

 一夏も直撃は免れたものの左肩の装甲が一瞬で吹き飛ぶ。

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「ああ、平気だ」

 

 平気そうに返事しているが、少し顔をしかめている。恐らく左腕に受けたダメージが、神経情報としての痛みを走らせているんだろう。

 

「悪い。俺が白式の反応に追いつけてないみたいだ」

 

「まあ、その辺は仕方がない」

 

 そう会話する間も、オルコットさんからは意識を外せない。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!」

 

「一夏!散開!」

 

「おう!」

 

 オルコットさんが撃つ前に俺が叫んで動いたと同時に、オルコットさんが持つ銃から弾雨の如き攻撃が降り注ぐ。しかもそれらが的確に俺たちを狙ってくる。

 反撃しようにも、打鉄の装備は近接ブレードのみ。一夏の白式に期待するしかない。

 

「一夏!お前の装備は!?」

 

「えっと、ちょっと待ってくれ。………げっ!近接ブレード一本しかない!」

 

 おいおい、まじか。

 

「仕方ない!それで行くしかない!」

 

「おう!」

 

 そう言って、俺たちはほぼ同時に近接ブレードを呼び出し、展開する。

 キィィィン……。

 高周波の音とともに俺たちの右腕には片刃の近接ブレードが形作られる。

 

「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうだなんて……笑止ですわ!」

 

 すぐさまオルコットさんの射撃。

 

「とりあえず一夏!作戦通りに!」

 

「おう!」

 

 相変わらず、俺と一夏の周りには雨霰とライフルの攻撃が降ってくるが、よけてよけてよけまくる。

 

「逃げるだけでは勝てませんわよ!」

 

 挑発をしながら撃ち続けるオルコットさん。

 しかし、俺たちはただ逃げているだけというわけではない。これもすべて作戦のうちなのだ。俺たちの立てた作戦。それはとても単純なものだった。

 この試合では、俺とオルコットさんでは訓練機と専用機、一夏とオルコットさんでは素人と経験者、という大きな差がある。そこで、その差を少しでも埋めるためにこの戦いでのお互いの役目を決めておいたのだ。

 まず始めは、二人で延々と回避し続け、ISの反応速度や動きに慣れる。その間、おそらく専用機であるオルコットさんに勝つ見込みが高い方、つまり一夏を主力とし、俺は一夏が攻撃を受けそうになった時のサポートやオルコットさんの注意を引く。そして、十分にISに慣れたら反撃にうって出る、というものである。

 

(見てろ!その余裕の笑みを消してやる!)

 

 俺たちの激戦が始まった。

 

 

 ○

 

 

 

「――どうして反撃してこないんですの!?」

 

 いい加減しびれを切らせたのか、オルコットさんが叫んだ。試合開始からそろそろ二十七分が経つ。

 

「………一夏、そっちはどうだ?ISの操縦にはなれたか?」

 

「ああ、とりあえずは。シールドエネルギーにも余裕がある。そっちは?」

 

「俺の方も、問題ない。……そろそろ反撃するか?」

 

「おう!」

 

 俺は聞かれてはまずいのでプライベート・チャネルを使用していたのを、オープン・チャネルに切り替える。

 

「そんなこと言いながら初心者二人に随分と時間がかかってるんじゃないのか?代表候補生ってのはそんなもんなのか?程度が知れるな、ど三流!」

 

「三流ですって!?イギリス国家代表の候補生であるこのわたくしを、エリートであるこのわたくしを、言うにことかいて『ど三流』ですって!?」

 

 オルコットの顔が引きつる。俺の挑発に乗ってくれたらしい。

 

「だいたい、そのエリートってのが気に入らない。エリートってのは人より優れてるやつのことだろ?人より優れてるやつってのは他人を見下すのか?気に入らなければわめき散らすのか?」

 

「そ、それは……」

 

 俺の言葉にオルコットさんが口ごもる。軽く挑発するだけのつもりだったが俺も少しヒートアップしている。

 

「俺は強くなりたい!強くなって有名になって俺のことを知るやつを探す!あんたがエリートだって言うのなら、俺よりも強いって言うのなら、俺よりも優れているって言うのなら、そんな強さはいらない!俺はエリートなんかになりたくない!」

 

「………」

 

 俺の言葉をオルコットさんは黙って聞いている。

 

「ここからは俺たちの番だ!お高くとまったお前の鼻、俺たちがへし折ってやるよ!」

 

 俺の言葉に隣にいる一夏がうなずいている。

 

「……威勢だけはいいですわね。でも――」

 

 その言葉と同時にオルコットの周りに四つの自立起動兵器――ややこしいことに『ブルー・ティアーズ』というらしい――が動き始める。

 

「これで閉幕といたしましょう!」

 

 オルコットさんが右腕を横にかざす。すぐさま、命令を受けたブルー・ティアーズ――ややこしいので以下ビット――が四基、多角的な直線機動で接近してくる。

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

 掛け声とともにバラバラに動くと、二基づつが狙いをつけてきた。

 俺の左右に回ったビットの先端が発光、レーザーを放ってくる。それをかろうじてよけると、ビットがオルコットさんの元に戻って行ったかと思ったら、オルコットさんのライフルがくる。

 

「なあ、一夏!」

 

「ああ、思った通りだ!」

 

 さっきからオルコットさんはビットを展開してる最中には自分は一切攻撃せず、戻って来た後にライフルを使っている。

 

「「反撃の時間だ!」」

 

 声をそろえて叫ぶと同時に、俺たちはオルコットさんに接近する。一夏の方に二基のビットが飛んでいく。

 

「はああああ!」

 

 ガキンッ!

 俺の近接ブレードをオルコットさんとの間に飛んできたビットの先が発光する。

 

「なんの!」

 

 ビームが放たれる寸前に一閃。俺の手には重い金属を切り裂く感触が伝わってくる。

 真っ二つにされたビットが断面に青い稲妻を走らせ、一秒後に爆散する。

 

「なんですって!?」

 

 セシリアが驚愕しているところに、俺はそのまま速度を緩めず、さらに追撃をする。

 

「くっ!」

 

 俺が切りかかったところを、オルコットさんはよけ、俺にライフルの銃口を向ける。

 

「俺にばかり集中していていいのか?」

 

「っ!しまった!」

 

 急いで振り向いたそこには二基のビットを爆散していた。

 

「く~~っ!」

 

 悔しげに顔をしかめながら俺との距離をあけるオルコットさんと、それに合わせるようにオルコットさんのもとに向かう最後のビット。

 

「ナイス一夏」

 

「レーザーを避けている最中に突然動きが止まったんだ。セシリアの意識が航平に向いたときにな。なあ、セシリア。あの兵器は毎回お前が命令を送らないと動かないんだろ?」

 

「そして、その時、お前はそれ以外の攻撃ができない。制御に集中しているからだ。そうだろ?」

 

「………!」

 

 ひくくっとオルコットさんの右目尻が引きつった。

 

「航平、ここから一気に攻めるぞ!」

 

「おう!」

 

 俺たちは近接ブレードを握り直し突っ込む。

 

 

 ○

 

 

「はぁぁ……。すごいですねぇ、あの二人」

 

 ピットでリアルタイムモニターを見ていた山田麻耶がため息まじりにつぶやく。しかし、織斑千冬は対照的に忌々しげな顔をする。

 

「あの馬鹿者。浮かれているな。航平もそのことに気づいていない」

 

「え? どうして分かるんですか?」

 

「さっきから左手を閉じたり開いたりしているだろう。あれは、あいつの昔からのクセだ。あれが出るときは、大抵簡単なミスをする」

 

「へぇぇぇ……。さすがご姉弟ですねー。そんな細かいことまでわかるなんて」

 

 なんとなく言った麻耶の言葉に千冬はハッとする。

 

「ま、まあ、なんだ。あれでも一応私の弟だからな……」

 

「あー、照れてるんですかー? 照れてるんですねー?」

 

「…………………」

 

 ぎりりりりりっ!

 炸裂するヘッドロック。

 

「いたたたたたたたっっ!!」

 

「私はからかわれるのが嫌いだ」

 

「はっ、はいっ! わかりました! わかりましたから、離し――あうううっ!」

 

 ぎゃあぎゃあと騒いでいる真耶を余所に、箒はずっと無言でモニターを見つめていた。心なしか、その表情は硬い。

 

「…………………」

 

 両手を合わせて無事を祈るような真似はしない。しかしだからこそ、その表情にはいろいろなものが含まれていた。

 

(一夏……航平……)

 

 箒がほんの少しだけくちびるを噛んだとき、試合は大きく動いた。

 

 

 ○

 

 

 オルコットさんの間合いに入った一夏は、振り下ろした刀でもう最後のビットを撃墜する。

 

「これで、終わりだ!」

 

 そう叫びながら大きく振りかぶりながらオルコットさんに急接近する。

 

「――かかりましたわ」

 

 それを迎えるオルコットさんの顔に笑みが浮かぶ。

 ゾクリ。

 その笑顔を見た時、俺は嫌な予感がし、遅れて一夏を追いかける。

 オルコットさんの腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起が外れ、動いた。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機あってよ!」

 

 一夏は反応が遅れて回避が間に合わない。しかも、さっきまでのレーザー射撃のビットじゃない。これは『弾道型』だ。

 

「間に合えぇぇぇ!!!」

 

 俺はさらにそこから速度を上げ、一夏とオルコットさんの間に躍り出る。

 ドガァァァンッ!!

 

 俺が最後に見たのは正面から広がる爆発の光と、背後から広がる白い光だった。

 そこからやってきた衝撃で、俺の意識は深い闇の中に落ちていった。




バトル話でした~。
バトルの描写は原作を参考にしました。
次回もよろしくお願いします。
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